
元徴用工は韓国政府を提訴するなど、問題は複雑化するばかりで、日韓両政府とも解決の糸口を見いだせないままだ
過去の清算に目を閉ざす日本
請求権協定もだが、より広く見れば、「終戦」――韓国にとっては「光復」(解放)――後すでに3・四半世紀もの時が流れたというのに、100年以上前から韓国に加えた非人道的な政策に関して日本政府は本質的な謝罪も反省も補償も行わずにきたという事実が、最大の問題である。日韓条約締結(1965年)を含めて、この間、過去の清算を行いうるよい機会が何度もあったにもかかわらず、日本政府はその機会をついに生かさなかった。そして、韓国で独立運動が起きてから100年になる今年も、好機を生かす気配はない。
日本政府のかたくなな姿勢を思えば、私はやはりドイツの戦後補償の歴史を思わざるをえない。いかにドイツ(1989年までは「西ドイツ」)が、事実上ナチの所業だけに限定した部分があったとはいえ(木佐芳男『〈戦争責任〉とは何か――清算されなかったドイツの過去』中公新書、2001年)、国家主権継承者として、「第三帝国」が犯したかつての非人道的な罪をつぐなおうと努力してきたか。
しかも、ドイツにとって「補償」は、一面的な金銭・現物による補償=賠償に偏せず(もっとも賠償だけでおそらく10兆円を超える額に達している)、多面的なつぐないと理解されてきた。すなわちそれは、かつて自国が犯した加害行為・不正義を認め、その真実を明らかにして責任を明確にし、被害者の救済およびその名誉・尊厳の回復を通じて再発防止を確実にし、関係国との間に広範な正義・平和を確保することである(日弁連編『世界に問われる日本の戦後処理②――戦争と人権、その法的検討』1993年、東方出版、30-32頁)。
では日本は今いかなる措置をとるべきなのか。政権の現状を見るかぎりどんな提案もむなしく感じられるが、ここではドイツの経験に即しつつ原則的な提案を行う。