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大震災を描く小説と「想像する」ことのむずかしさ

丹野未雪 編集者、ライター

忘れられない人は、忘れる努力をして生きていく

 復旧・復興の一様でない風景は、わたしたちがかつての日常から切断されたという記憶を、どうしても呼び起こさせる。仙台在住の作家・佐伯一麦は、震災の風化を懸念する声に対し、「忘れてしまえることだから、忘れるな、というのであり、忘れられない人は、それを抱え込みながら、忘れる努力をして生きていくしかない」(「朝日新聞」2018年3月11日付)と書いた。胸が突かれる。その苦しさを思うと、おいそれと言葉を発することをためらう。

 佐伯は、震災というテーマについて、「文学として巧みに効果的に仕上げたら嘘になる、ということがあり、いっぽうで震災によって変化を余儀なくされた想像力を駆使した作品は、ともすれば被災地の人心とかけ離れてしまう、という問題がある。いまはまだ、小説よりも、後の世代の者が参照出来る記録としての言葉が求められるのではないだろうか」と語る。

想像ラジオ拡大いとうせいこう『想像ラジオ』(河出書房新社)
 非常時からあらたな日常へと変化するなかにあって、大震災を描く小説作品が、震災の「いつ」「どこ」を書こうとしたのかを見るのは、だから重要だ。

 前述した行方不明者のニュースを読んだとき、大震災から2年後に書かれたいとうせいこう『想像ラジオ』がすぐ思い浮かんだ。

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筆者

丹野未雪

丹野未雪(たんの・みゆき) 編集者、ライター

1975年、宮城県生まれ。ほとんど非正規雇用で出版業界を転々と渡り歩く。おもに文芸、音楽、社会の分野で、雑誌や書籍の編集、執筆、構成にたずさわる。著書に『あたらしい無職』(タバブックス)、編集した主な書籍に、小林カツ代著『小林カツ代の日常茶飯 食の思想』(河出書房新社)、高橋純子著『仕方ない帝国』(河出書房新社)など。趣味は音楽家のツアーについていくこと。