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笑いと涙の人情喜劇『雪まろげ』待望の再演へ

湖月わたるが踊り子から芸者に変身!?

さかせがわ猫丸 フリーライター


拡大湖月わたる
 1980年に初演された『雪まろげ』は、故森光子さんが「ウソつき女を演じたい」と発したひと言から誕生した傑作喜劇で、以降、2007年まで上演され続けました。2016年、高畑淳子さん主演による9年ぶりの復活が大好評を博し、冷めやらぬラブコールに、この春、待望の再演が決定。大阪を皮切りに全国8カ所で笑いの花を咲かせます。初演以来500回を超える上演回数は面白さの証。時代を超えた人情喜劇の魅力は、お客様を決して裏切りません。

 昭和50年代半ばの青森・浅虫温泉。お人よしの芸者・夢子(高畑)がついた小さなウソが、次から次へとウソを呼び、やがて雪まろげのように大きくなっていき……。

 高畑さんを始め、榊原郁恵、的場浩司、柴田理恵、青木さやか、山崎静代ら、2016年から続く豪華なメンバーの中で、ひときわ輝いているのが元宝塚星組のトップスター湖月わたるさんです。華やかな芸者の世界で異彩を放つ(?)アンナを演じ、長身を生かしたセクシー美女役が、大きな話題を呼びました。

 今年で舞台生活30周年を迎える湖月さん。再演に喜びの声を弾ませながら、全国公演の皮切りとなる大阪で意気込みを語ってくれました。

すごい方とご一緒させてもらっている

記者:再演への出演が決まった時はどんなお気持ちでしたか?

湖月:『雪まろげ』は高畑さんを中心に団結し、お客様に大変喜んでいただけた本当にステキな作品だったんです。出演者がほぼ変わらないと聞いて、ますますうれしかったですね。

記者:前回の公演では、どんな印象が残りましたか?

湖月:やはり高畑さんの演技です。一つひとつの芸やお芝居に対するストイックさに触れるたび、すごい方とご一緒させていただいていると感じていました。素晴らしい役者のみなさんにも囲まれ、とにかく勉強になりましたね。脚本もそれぞれのキャラクターを活かして描かれているので、一人ひとりが浮かび上がる作品になっているんです。

拡大舞台『雪まろげ』アンナ役/湖月わたる
記者:湖月さんは芸者にもなりますね。

湖月:私が演じるアンナは流れ者の踊り子で、高畑さん演じる夢子を姉のように慕いながら、自らも芸者を目指していきます。もちろん右も左もわからないので、前回は新橋の芸者さんに着物の着こなしや所作を習いに行くことから始めました。扇子の入れ方や帯の位置、決まり事がたくさんあって難しいんです!

記者:アンナはどんなところが魅力だと思いますか?

湖月:アンナは人懐っこくて、思ったことは何でも正直に口にしてしまいます。でも、夢子さんと同じ人を好きになると、自分は身を引いて2人の恋を実らせようとしたり、いじらしい一面もあるんです。

記者:特に印象に残ったシーンはどこでしょう。

湖月:最後に高畑さんと2人で向かい合うシーンです。お稽古場で高畑さんの本気のお芝居に、私自身、立っているのが精いっぱいだったほど圧倒されました。本番ではどんどん引き込まれていく感覚になって、とても貴重な経験をさせてもらいましたね。

記者:再演にあたり、心がけたいことはありますか?

湖月:とにかく台本をまっさらな気持ちで読もうと思っています。『ベルサイユのばら45』でフェルゼンを演じましたが、牢獄のシーンで新たな感情の発見があったんです。相手役のセリフにこめられた想いに、13年経って気づくこともある。前回は自分の役のことで必死でしたが、周りからの気づきや台本の中に隠れているものが、まだまだいっぱいあると思うんです。もう一度アンナとしっかり向き合いたいですね。

記者:ここは見てほしい、という場面を教えてください

湖月:アンナの人となりが出るのが1幕のラストシーンです。今、思えばもっと違うアプローチが出来たのではないかなあ……。前回よりも、アンナの生きざまが見えるように演じたいなと思っています。ぜひ、ご注目ください!

“いい声”を出すクセをなくす?

拡大舞台『雪まろげ』2016年公演から=東宝演劇部 提供

記者:和物人情劇は、ミュージカルとは違った面白さがあるでしょうね。

湖月:舞台に立った時の一体感が独特ですね。お客様が笑顔で楽しそうに見てくださってる様子から、最後はすすり泣きの声が響く、あの客席との一体感は人情劇ならではの良さだと思います。

記者:最初にお話をもらった時は驚かれたんじゃないでしょうか。

湖月:まず思ったのは「ミュージカルじゃない…」でした(笑)。でも、共演者の方たちのお名前を拝見して、これはすごい勉強になるぞと思いました。ミュージカルは振付や歌稽古もあるので、どうしてもお芝居に費やす時間が短くなってしまいますが、このような作品は、1カ月間、お芝居だけにがっつり集中できます。

記者:勉強にならないわけがない!ですね。しかし、宝塚のお芝居とは違う部分も多かったでしょう。

湖月:長年のくせで、つい“いい声を響かせるように”せりふを言ってしまうんです。高畑さんから「こういうお芝居は、もっととんでもないところから声を出していいんだよ。ダミ声でもアンナちゃんなんだから」と、教えていただきました。

記者:ほめていただくこともありましたか?

湖月:その声のことですね。お芝居の途中で、「実はうそだったんだ」と言われて「えーっ!」と驚くシーンがあるのですが、「今のは、良い『えーっ』だった! 作ってない、本当の『えーっ』だった」と言っていただいて、とてもうれしかったです。

大阪が背中を押してくれる

記者:地方公演では作品の舞台にもなっている青森にも行かれますね。

湖月:初演の時から「青森に行きたいよね」とみなさんと話していたので、念願がかないました。今回は大阪が皮切りになるのも楽しみです。

記者:やはり大阪のお客様の反応は違いますか?

湖月:そうですね。やはり笑いのツボをわかってるんじゃないでしょうか。ちゃんと受け取って反応してくださる。それだけに怖い部分もありますが、勇気もたくさんいただけるので、大阪から始まるのはすごくうれしいです。

記者:スタートから背中を押してもらえそうですね。

湖月:大阪に来るとお客様の熱が違うのを毎回、肌で感じています。笑えて泣ける人情喜劇ですので、大阪のみなさんにはきっと楽しんでいただけると確信しています。

いつまでも“らしくありたい”

記者:宝塚時代からカッコよさが全く変わりません。

湖月:そうですか!?(笑)。『ベルサイユのばら45』で大先輩方とご一緒しましたが、みなさんお変わりなくて、本当にステキなんですよ。私も卒業生として“らしくありたい”と、いつも思っています。記念公演に出ると、自分は宝塚に育ててもらったことを改めて実感します。

記者:OG公演はやはり刺激になるんでしょうね。

湖月:私は男役要素を求められることが多いのですが、そういう時は自分の髪、自分の肉体で表現したいので、バシッとショートヘアに伸びかけていても切ってしまいます。ロングヘアはウィッグで変身できますしね。私らしく、いつまでもパンツスタイルが似合うプロポーションでいたいと思います。

拡大舞台『雪まろげ』2016年公演から=東宝演劇部 提供

記者:アンナは思い切り女っぽい役ですが。

湖月:アンナちゃんは仕事柄常に男性を意識して生きてきたので、それは歩き方や立ち方、体の使い方にも表れてくるでしょう。私はふだんから準備に入るタイプですので、家でもお稽古場でも短いスカートを履こうと思っています。すべて変わりますよね、バックから靴から。アザを作っちゃいけないとか(笑)、そういうところから気にしないといけません。ベルばらに浸っていたので、切り替えなきゃいけませんね。

記者:芸者の着物も着られますしね。

湖月:公演では、袖丈の長いのを用意してくださったんですよ。しずちゃん(山崎静代)と2人だけ、どうしても袖が短いので、上手に足してわからないようにしてありました(笑)。

舞台生活30周年を迎えて

記者:今年で舞台生活30周年を迎えられます。

湖月:そうなんです。7月には30周年記念公演として、バウホールでドキュメンタリー・ミュージカルを行うことになりました。バウホールには退団後初めて立たせていただきますので、感謝の思いを込めて取り組みたいと思っています。

記者:また思い切り踊られるんでしょうね。

湖月:お芝居も歌も好きですが、やはりダンスが自分の中に大きくあります。踊ることは演じることだと思っているので、経験を積んで表現など変わってくるのが楽しいんです。ダンス公演は可能な限り続けていきたいですね。

記者:長いようであっという間だったのではないでしょうか。

湖月:宝塚で18年、退団して12年。こんなにいろんな舞台に立ち続けていられるなんて、退団時は想像もできませんでした。これも、素晴らしい方たちに出会い、多くの作品に巡り合え、いつも変わらず応援してくださるみなさんのおかげだと感謝しています。女優として挑戦しつづける姿をぜひ、みなさんに見ていただきたいです。そして、これからもいい役者になれるよう精進していきたいと思っています。

記者:それでは最後に「雪まろげ」への意気込みをお聞かせください

湖月:出演者一丸となって、みなさまに笑いと涙の人情喜劇の世界にいざないたいと思います。ぜひ、楽しみに劇場に足をお運びください。お待ちしています。

◆公演情報◆
2019年4月5日(金)~4月18日(木) 大阪・新歌舞伎座
2019年4月24日(水)~4月29日(月・祝) 福岡・博多座
2019年5月9日(木)~5月14日(火) 名古屋・御園座
2019年5月18日(土)~5月19日(日) 秋田・秋田市文化会館
2019年5月22日(水) 福島・とうほう・みんなの文化センター大ホール(福島県文化センター)
2019年5月25日(土) 山形・やまぎんホール
2019年5月29日(水) 岩手・岩手県民会館大ホール
2019年6月1日(土) 青森・リンクステーションホール青森(青森市文化会館)
新歌舞伎座ホームページ
[スタッフ]
作:小野田勇
監修:小野田正
脚本・演出:田村孝裕
[出演]
高畑淳子、榊原郁恵、柴田理恵、青木さやか、山崎静代(南海キャンディーズ)、湖月わたる、的場浩司 ほか

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筆者

さかせがわ猫丸

さかせがわ猫丸(さかせがわ・ねこまる) フリーライター

大阪府出身、兵庫県在住。全国紙の広告局に勤めた後、出産を機に退社。フリーランスとなり、ラジオ番組台本や、芸能・教育関係の新聞広告記事を担当。2009年4月からアサヒ・コム(朝日新聞デジタル)に「猫丸」名で宝塚歌劇の記事を執筆。ペンネームは、猫をこよなく愛することから。

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