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戦争加害の資料館・記念館建設と共同教科書作成を

杉田聡 帯広畜産大学名誉教授(哲学・思想史)

1933年につくられたダッハウ強制収容所跡では、国内の中高生たちが「負の歴史」を学ぶため、毎日のようにやってくる拡大1933年に造られたダッハウ強制収容所の跡地は、国内の中高生たちが毎日のように訪れる

各種の記念館・資料館が建てられている

 ドイツが長い時間をかけて行ってきたのは、賠償の支払いだけではない。それも重要だが、「金銭の支払いによらない補償」の範囲はさらに広いのである。歴史修正主義との闘いの意義も大きいが、ここでは目に見える形での、したがってドイツ市民の意識形成に多かれ少なかれ影響をもちうる試みをあげよう。

 それは第1に、ドイツの政府・財団・市民が一体となって取り組んだ、非人道的な国家犯罪――ホロコーストの、ポライモス(ロマに対する絶滅政策)の、T4作戦(障がい者に対する安楽死政策)の等々――に関わる博物館・記念館等を建設・維持する努力である。

 アウシュヴィッツ絶滅収容所跡(ポーランド)ほど十分な管理・教育体制がとられているとは言えないかもしれないが、それでもザクセンハウゼン(ベルリン郊外)やブーヘンヴァルト(ヴァイマール郊外)の追悼記念館を始めとするドイツ各地の収容所跡は、ホロコースト、ポライモスの歴史を学ぶのに恰好の「教材」である。ここは、多くの青少年が訪れて、非人道的な歴史の事実を学ぶ場となっている。私がザクセンハウゼン追悼記念館を訪れたとき、たくさんの子どもたちが、記念館職員の話に耳を傾けていた。

 またラーウェンスブリュック追悼記念館は、ナチ時代は女性を対象とした収容所であり、ここでの収容者が「慰安婦」とされたのである(菅原秀『ドイツはなぜ和解を求めるのか――謝罪と戦後補償の歩み』同友館、2008年、207、212頁)。これは、日本と同様につくられた「慰安婦」制度の事実を後世に伝える、貴重な記念館である。ベルリンにある独露博物館(同98頁)は、ソ連に対するドイツの降伏文書調印式が行われた場だというが、2700万人におよぶ戦死者を生んだ、ドイツによるソ連侵攻の事実を伝えている。そしてヴァンゼー会議記念館(同140頁)は、上記T4作戦を策した本部がおかれた場所として、そのおぞましい歴史を学ぶ場となっている。

 数ある記念館の中でも特に印象深いのは、 ・・・ログインして読む
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筆者

杉田聡

杉田聡(すぎた・さとし) 帯広畜産大学名誉教授(哲学・思想史)

1953年生まれ。帯広畜産大学名誉教授(哲学・思想史)。著書に、『福沢諭吉と帝国主義イデオロギー』(花伝社)、『逃げられない性犯罪被害者——無謀な最高裁判決』(編著、青弓社)、『レイプの政治学——レイプ神話と「性=人格原則」』(明石書店)、『AV神話——アダルトビデオをまねてはいけない』(大月書店)、『男権主義的セクシュアリティ——ポルノ・買売春擁護論批判』(青木書店)、『天は人の下に人を造る——「福沢諭吉神話」を超えて』(インパクト出版会)、『カント哲学と現代——疎外・啓蒙・正義・環境・ジェンダー』(行路社)、『「3・11」後の技術と人間——技術的理性への問い』(世界思想社)、『「買い物難民」をなくせ!——消える商店街、孤立する高齢者』(中公新書ラクレ)、など。

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