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「盆唄」より、横山久勝さんが双葉町の自宅を訪れるシーン〓2018テレコムスタッフ拡大『盆唄』で、横山久勝さんが双葉町の自宅を訪れるシーン=2018テレコムスタッフ

避難生活者の望郷の念と、盆唄の過去・現在・未来

 ……こうして『盆唄』は、双葉盆唄のルーツを探る“考古学的快楽”とともに<双葉→ハワイ→富山>という行程をたどったのち、最後の大舞台を、福島県いわき市の仮設住宅の広場に設定する。横山さんらは、いわき市の避難先で双葉の盆踊りをいち早く復活させていた若い町民たちの協力を得て、双葉町各地区の合同盆踊り大会、「やぐらの共演」の震災後初めての開催に向け、準備を始めるのである。

 そして、2017年夏の当日、仮設住宅前の広場に組み上げられた<やぐら>の上で、演者らによる唄、太鼓、笛が響き渡り、その周りでは人びとが輪になって踊る。喜びと哀切さが混然一体となった盆唄が沸き立つ、まさしく鳥肌の立つような絶景だ(このシーンが佳境に入ったところで、やぐらの上の横山さんが告げる、「ご先祖様、震災で亡くなられた皆様、一緒に踊ってください」、という言葉が胸を打つが、その直後、やぐらの背景が漆黒の闇になり、盆唄は過去・現在・未来を幻想的に通奏してゆく……)。なお、大会が「やぐらの<共演>」と呼ばれるのは、双葉盆唄といっても地区ごとに異なる盆踊りがあるからだ。

 もちろん、私たちの多くが忘れかけていた盆踊りという芸能の魅力を存分に堪能させてくれる『盆唄』は、たんに楽天的な音楽映画ではない。

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筆者

藤崎康

藤崎康(ふじさき・こう) 映画評論家、文芸評論家、慶応義塾大学、学習院大学講師

東京都生まれ。映画評論家、文芸評論家。1983年、慶応義塾大学フランス文学科大学院博士課程修了。著書に『戦争の映画史――恐怖と快楽のフィルム学』(朝日選書)など。現在『クロード・シャブロル論』(仮題)を準備中。熱狂的なスロージョガ―、かつ草テニスプレーヤー。わが人生のべスト3(順不同)は邦画が、山中貞雄『丹下左膳余話 百万両の壺』、江崎実生『逢いたくて逢いたくて』、黒沢清『叫』、洋画がジョン・フォード『長い灰色の線』、クロード・シャブロル『野獣死すべし』、シルベスター・スタローン『ランボー 最後の戦場』(いずれも順不同)

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