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吉原光夫インタビュー/下

ミュージカル『レ・ミゼラブル』、5度目の出演へ

真名子陽子 ライター、エディター


吉原光夫インタビュー/上

演じるのにどれを捨ててどれを拾うかを考える

拡大吉原光夫=水本克美〈桑島写真スタジオ〉撮影

――先ほどジャベールが合っているとおっしゃっていましたが、わかりやすく言うとどういった点でしょうか?

 誤解のないように言うと、今の観客は説明的な方が好きと言うか、わかりやすいというか、俺みたいな強面の“ザ・ジャベール”みたいな人がやった方がわかりやすいと思うし、あとはジャベールが持っているちょっと変質的なものというか、少し変わっている感じを出すのが得意なんだと思います、多分。

 『マリー・アントワネット』のオルレアン公もそうなんですけど、ジャベールも決して悪者として捉えていないんです。ジャン・バルジャンに対してどうこうではなく、あくまで任務を遂行する。赤い炎ではなく青い炎で演じている感じかな。熱さで演じる方が演じがいはあるし、陶酔できる役ではあるんだけど僕はそれを一切しないんです。そういう意味で異質感は出ているんだろうと思うし、そこが得意とするところかなと思います。

――確かにジャベールの方がわかりやすいですね。

 役者といったクリエイターや取材する方もそうだと思いますが、バランスの取り合いで、お客さまの需要と離れないようにしないといけないですよね。取材する方も誰が読むかを考えて質問するじゃないですか。でも、例えばレミゼが好きすぎて、そんなマニアックな質問しても誰も興味ないんじゃない?みたいなことがあるんですよ。ちゃんと答えますけどね(笑)。

――(笑)

 僕たちも一緒で、どれを捨ててどれを拾うかは演技をするうえで考えます。本当はこうやりたいけど、やっても伝わらないだろうなとか。反対に今は観られていないからやってみようとか……。

――でもインタビューをしていて、読者の方は興味ないかもしれないけど私が聞いてみたいから聞こう!ということはあります。

 それはあります。ミュージカルはお客さまの間口が広いんですよね。ちょっと上から目線になりますけど、この言葉しか当てはまらないので言うと、観客も成長しなくちゃいけないよねと思っているんです。そのために違う球を投げるというのはありますね。そういう意味でジャベールはニーズに合っていたと思います。「吉原のジャベールは合ってるよね~」って思われている。でも反対に説明的じゃないものもあっていいんじゃないかなと考えると、ジャン・バルジャンで勝負したいと思いますね。

 ちょっと話は変わるけど、自分は演劇によって救われている人生なので、演劇界をなんとかしなくちゃいけないということを、なんとなく使命として考えるんです。今30代や40代の演出家で次の演劇界を考えて動いている人達が多いんですね。海外ミュージカルも良いけれど、ちゃんと先の事を考えながらやるということを、当たり前にしなきゃいけないんじゃないかと思っています、それこそバランスを取りながらね。

◆公演情報◆
ミュージカル『レ・ミゼラブル』
東京:2019年4月19日(金)~5月28日(火) 帝国劇場
※プレビュー公演:2019年4月15日(月)~4月18日(木)
名古屋:2019年6月7日(金)~6月25日(火) 御園座
大阪:2019年7月3日(水)~7月20日(土) 梅田芸術劇場メインホール
福岡:2019年7月29日(月)~8月26日(月) 博多座
北海道:2019年9月10日(火)~9月17日(火) 札幌文化芸術劇場hitaru
公式ホームページ
[クリエイティヴ]
作:アラン・ブーブリル クロード=ミッシェル・シェーンベルク
原作:ヴィクトル・ユゴー
作詞:ハーバート・クレッツマー
オリジナル・プロダクション製作:キャメロン・マッキントッシュ
演出:ローレンス・コナー、ジェームズ・パウエル
翻訳:酒井洋子
訳詞:岩谷時子
[キャスト]
ジャン・バルジャン:福井晶一、吉原光夫、佐藤隆紀
ジャベール:川口竜也、上原理生、伊礼彼方
ファンテーヌ:知念里奈、濱田めぐみ、二宮愛
エポニーヌ:昆夏美、唯月ふうか、屋比久知奈
マリウス:海宝直人、内藤大希、三浦宏規
コゼット:生田絵梨花、小南満佑子、熊谷彩春
テナルディエ:駒田一、橋本じゅん、KENTARO、斎藤司
マダム・テナルディエ:森公美子、鈴木ほのか、朴璐美
アンジョルラス:相葉裕樹、上山竜治、小野田龍之介
ほか
〈吉原光夫プロフィル〉
1999年、日本工学院専門学校演劇科を卒業し、劇団四季研究所に入所。『ライオンキング』や『ジーザス・クライスト=スーパースター』『美女と野獣』など多くの作品に出演するも2007年に退団。2009年にArtist Campany響人を立ち上げ、出演、演出を手がける。最近の主な出演作は、『マリー・アントワネット』『ファンホーム』『The Beauty Queen of Leenane』『手紙』など。演出作品は、響人以外で『DAY ZERO』がある。また映画『未来のミライ』では声優を務めた。
吉原光夫公式ホームページ
公式ツイッター

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筆者

真名子陽子

真名子陽子(まなご・ようこ) ライター、エディター

大阪生まれ。ファッションデザインの専門学校を卒業後、デザイナーやファッションショーの制作などを経て、好奇心の赴くままに職歴を重ね、現在の仕事に落ち着く。レシピ本や観光情報誌、学校案内パンフレットなどの編集に携わる一方、再びめぐりあった舞台のおもしろさを広く伝えるべく、文化・エンタメジャンルのスターファイルで、役者インタビューなどを執筆している。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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