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AKB総選挙中止でしみじみ思った指原莉乃の凄さ

青木るえか エッセイスト

1位が松井珠理奈さんと発表され、ナゴヤドームに集まっ松井珠理奈さんが1位になった2018年のAKB選抜総選挙=ナゴヤドーム

 何かこう、じんわりといやーな気持ちになる「AKB選抜総選挙、今年は中止」の報。

 お茶の間の皆さんがニヤニヤ笑いながら、「あーもうAKBもオワコンだねえ」と言って次の瞬間にはもう忘れている、ようなニュースだ。オワコンという言葉の、いかにも見下したような響きにぴったり。

 「バカなオタクファン(イメージは太って汗かいたオヤジ)が秋元康のカネ儲けの手段に踊らされて、投票のために大量のCDを買わされる自業自得のバカイベント。AKBなんて歌も歌えないダンスもへなちょこでブスばっか、そんな連中まとめてみんなお気の毒さま(上から)、総選挙も打ち切りでご愁傷さま〜」

 と、あとからあとからAKB総選挙中止について「AKBに興味もない人」が「思うであろうこと」が思い浮かぶのである。ああツライ。でも皆さんもそう思ったりしてるんでしょ? ちがいますか?

「AKB総選挙の中にいる人」は「ほっとしている」

 自分はこのニュースはツイッターで誰かがつぶやいているのを見て知って思わず声が出た。「えーっ」。

 自分としてはニュース速報でピロピロ音とともにテレビ画面に出てもいいようなバリューがあったのだが、こんなものがニュース速報で出たりしたらますますAKBに対する風当たりが強くなっただろうからやらなくてよかった。

 一般の人ではなく「AKB総選挙の中にいる人=踊らされてる(と思われている)ファン」が、このニュースをどう思ったかというと、

 「ほっとしている」

 というのがまずある。

AKB総選挙の投票用紙(画像の一部を加工しています)AKB総選挙の投票用紙(画像の一部を加工しています)

 このニュースのあと、ツイッターで「よし浮いたお金でマンション買おう」というつぶやきがあって笑った。もちろん冗談で言ってるわけだけど、その人はウワサによれば相当いっぱい投票券買っていて、メンバーから握手会の時にじきじきに投票について相談を受けるぐらいの、いわゆる太客だ。それぐらいの人となれば、毎回中古車1台(いや、新車か)ぐらいの金をつぎ込んでいたとしても恨みつらみをこぼすようなことはなく、もちろん恩着せがましいことも言わず、態度は清々しい(内心は知りませんが)(でも醜い内心をお漏らししてしまうような人は、このタイプにはほんとうに少ない)。

 たぶん、私みたいな底辺の、毎回20枚から100枚ぐらい「投票券入りCD」を買うという層がいちばん「身を削った(削らされた)」感が強く、いろいろなことを思い出して悲しみが湧いたり怒りを抑えがたくなったりしているのではないか。投票したメンバーが27位とか53位とか41位とかそのへんの結果だったりすると、その時は「やったぞ! 入ったぞ!」という喜びも達成感も幸せもあるが、そういう順位がその後の発展のキッカケとしてどうにかなるかというとあまり何もなく、あとは虚しさばかりがつのることになる。これは実は、上位16位までの選抜メンバーになったとしても、あまり状況は変わらなかったりするのだが。

握手会の会場にはAKB総選挙に立候補したメンバーの「選挙ポスター」が貼られていた(指原会提供)握手会の会場に貼られたAKB総選挙の「選挙ポスター」=2017年6月、「指原会」提供

選抜総選挙というシステムが煮詰まりすぎだった

 AKBというのは、総選挙の他にも「課金イベント」はいっぱいあって、公式のものだとリクエストアワーという「AKB曲の人気投票」があり、メンバーから「私が歌ってるあの曲に投票して」って言われたら投票しないわけにいかない。

 他にもスマホゲームとか、SHOWROOMとか、金かけようとしたらナンボでもかけられるのがAKB。まあAKBに限らずそういう商法が大流行であるが、とかく目立ちますからねAKBは。乃木坂だって同じような握手会商法なのにAKBほど悪し様に言われない気がする。やっぱりあの「選抜総選挙」というのは相当印象深い残酷ショーだった。

 その疲弊を表面化させないために、

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