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成河が自らの代表作で新役に挑む/上

第18回読売演劇大賞優秀男優賞受賞、『BLUE/ORANGE』を新配役で上演

大原薫 演劇ライター


拡大成河=柴 仁人撮影

 2010年の初演および『春琴』の演技により成河が第18回読売演劇大賞優秀男優賞を受賞した『BLUE/ORANGE』。初演とは配役を変えて上演が決定した。

 精神病院での、ある24時間を描き、1人の精神病患者と2人の医師が織り成す手に汗にぎる会話劇が権力、エゴ、人種の偏見をめぐる現代の人間の戦いを抉り出す。

 初演では患者のクリストファーを成河、研修医ブルースを千葉哲也、ブルースの上司で医師ロバートを中嶋しゅうが演じたが、今回の公演では成河がブルースを、千葉がロバートを演じ、クリストファーには新たに章平が起用された。演出は初演と同様、千葉が手がける。

 成河へのインタビューは稽古場にて行われた。近年は劇団☆新感線『髑髏城の七人 Season花』の天魔王役、『子午線の祀り』源義経役、ミュージカル『スリル・ミー』「私」役など多彩な役柄を演じ、どの役にも人物の生きた息吹を吹き込む稀有な俳優である。成河の本作にかける意気込み、そして「普段演劇を見慣れないひとにも劇場に足を運んで欲しい」という思いから始まった成河個人の取り組みについても伺った。

今の自分が思っていることと役がリンクする

拡大成河=柴 仁人撮影
――昨日から稽古が始まったとのことですが、どんな取り組みをなさっているのでしょうか。

 小川絵梨子さんの新たな翻訳がとてもしゃべりやすい言葉だったので、変な気負いもなく関係性を稽古で作れるなと思って。この作品では「誰が誰をどう思ってどういう距離感で」というのが一番大事だと思うんです。役の性格付けは相手によって変わってくると思うので、少しずつ少しずつ積み上げていっていますね。

――2010年の初演ではクリストファーの役を演じましたが、今回はブルースを演じます。「あっ、どっちを演じるんだっけ?」と混乱することはないですか?

 いや、それはないですね(笑)。翻訳が変わるということはすごいことなんですよ。英語で書かれた戯曲を日本語に訳した場合、翻訳家さんの色が出るので、作品ががらっと変わるんです。だから、作品の構造が同じでも、新鮮な感覚で演じられます。ブルースという役はお客様に一番近い立場の役。「それは常識から考えておかしいんじゃないか」と常識的なことを発言して正義を語っていくんですけれど、話が進むとそれが反転していく。そんなブルースが僕にはピッタリなんじゃないかと思って(笑)。

――どういうところがピッタリなんでしょう?

 ちょっと議論を急いでしまいますけれども、この作品ではアフリカ系の人が出てきますが、僕たち日本人が必ずしも「社会におけるアフリカ系人種とは?」と具体的にイメージできなくてもいいんじゃないかと思うんです。この作品で描かれているのは人種間の問題というよりは、多様性の象徴だと理解できるはずなんですね。「多様性が大事だ、まじわらなきゃダメだ」と言っている人間が、心の中で決してまじわれないものを抱えていたりするんじゃないか。正義って口当たりがいいから、どんどん論理に自分が支配されてしまう。今、SNSで問題になっていることもそうだと思うんですよ。文字数の中で評価をして正義の鉄槌をくだすことは気持ちのいいことかもしれない。でも、それがあまりに簡単に出来てしまうと、本来の目的を見失うというか。今の自分が思っていることとブルースはリンクする。逆に今はクリストファー役の方が難しいですよ。「なんだろう、その純粋さは」みたいに思いますね(笑)。

――今回はクリストファー役に章平さんが起用されましたね。

 初演以来ずっと、中嶋しゅうさんと千葉哲也さんとで「またやろう」と話していたので、役を入れ替えるなんて想像もしていなかったです。でも、しゅうさんが亡くなって再演の話が一度宙に浮いてしまったときに、『テイク・ミー・アウト2018』で章平くんを見て、その佇まいがとてもいいんじゃないかと思ったんです。

◆公演情報◆
2019年3月29日(金)~4月28日(日) 東京・DDD青山クロスシアター
公式ホームページ
公式ツイッター
[スタッフ]
作:Joe Penhall
翻訳:小川絵梨子
演出:千葉哲也
[出演]
成河 千葉哲也 章平
〈成河プロフィル〉
東京都出身。大学時代より演劇を始める。近年の主な舞台出演作品は、『スリル・ミー』『Fully Committed』『黒蜥蜴』『人間風車』『子午線の祀り』『髑髏城の七人Season花』『わたしは真悟』『エリザベート』『グランドホテル』『スポケーンの左手』など。6月からは、『エリザベート』への出演が決まっている。2008(平成20)年度文化庁芸術祭演劇部門新人賞受賞、第18回読売演劇大賞 優秀男優賞受賞。
公式ブログ
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筆者

大原薫

大原薫(おおはら・かおる) 演劇ライター

演劇ライターとして雑誌やWEB、公演パンフレットなどで執筆する。心を震わせる作品との出会いを多くの方と共有できることが、何よりの喜び。ブロードウェー・ミュージカルに惹かれて毎年ニューヨークを訪れ、現地の熱気を日本に伝えている。

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