勝部元気(かつべ・げんき) コラムニスト・社会起業家
1983年、東京都生まれ。民間企業の経営企画部門や経理財務部門等で部門トップを歴任した後に現職。現代の新しい社会問題を「言語化」することを得意とし、ジェンダー、働き方、少子非婚化、教育、ネット心理等の分野を主に扱う。著書に『恋愛氷河期』(扶桑社)。株式会社リプロエージェント代表取締役、市民団体パリテコミュニティーズ代表理事。所有する資格数は71個。公式サイトはこちら
TV離れが進む背景にある国民生活の二極化
久しくTV離れが叫ばれています。実際、テレビを見る機会が少ない人は、若者を中心に全世代で増加傾向にあるようで、TV離れが進んでいることは間違いありません(参照:サイバーエージェント『テレビ接触頻度調査』)。
その理由として、「インターネットの普及により、YouTube等、TV以外のコンテンツが充実した」「趣味自体が多様化してTVに割く時間が減った」と指摘されることが多いのですが、しばしば「TV自体が面白くなくなった」と言われることも少なくありません。「相対的な面白さ」が低下したばかりではなく、「絶対的な面白さ」も低下したという意見です。果たしてTV番組は本当に面白くなくなったのでしょうか?
コラムニストの木村隆志氏が行った東洋経済オンラインのアンケートでは、「CM前後で同じ映像を見せられる」「番組のスタート時間がバラバラで分かりにくい」「特番のような長時間番組ばかり」「出演者がおかしい」「芸能事務所によって扱いが違う」等、番組の作り方に対する不満の声が多かったようですが、ここでは視聴者側の意識にスポットを当て、それが二極化している問題を考えてみたいと思います。
まず、何を面白いと感じるかの基準は人それぞれ異なるので、TV番組が過去と比べてどれほど面白くなくなったのかを数値で比較することは非常に困難です。
たとえば、ダウンタウンの松本人志氏は、「スピード違反を犯さないような番組ばっかり」など、TV局の自主規制やポリティカルコレクトネスが原因であるかのような趣旨の発言を繰り返しています。確かにそれに同調する人も少なくないようです。しかし、その一方で、彼らのお笑いスタイルが「面白くない」と感じる人がTV離れを起こしている側面もあると思われます。
たとえば、アイドルグループ・NGT48のメンバーである山口真帆さんが暴行を受けたことを運営側が隠蔽したニュースで、松本氏は2019年1月13日放送の「ワイドナショー」(フジテレビ系)で、同席にしていた指原莉乃さんに対してセクハラコメントをしたことが大きな批判を呼びました。
また、2017年12月31日に放送された「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!」では、タイ式キックボクサーがタレントのベッキー氏の腰を強く蹴る企画や、松本氏の相方の浜田雅功氏が肌の色を黒くしたブラックフェイスをしたことが炎上しましたが、「彼らの笑いは面白くない!」「老害」というコメントとともに彼らが批判されることは昨今少なくありません。
もちろん、全てではありませんが、彼らのお笑いの中に人権や尊厳を傷付けて笑いを得る「お笑イジメ」が混じっているから不快に思うのでしょう。ここから、松本氏が感じる「つまらない」とは真逆の感性を有している人が数多くいることが分かりますし、そのような声は数年前よりも多くなっているのではないでしょうか。
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