TV離れが進む背景にある国民生活の二極化
2019年03月20日
久しくTV離れが叫ばれています。実際、テレビを見る機会が少ない人は、若者を中心に全世代で増加傾向にあるようで、TV離れが進んでいることは間違いありません(参照:サイバーエージェント『テレビ接触頻度調査』)。
その理由として、「インターネットの普及により、YouTube等、TV以外のコンテンツが充実した」「趣味自体が多様化してTVに割く時間が減った」と指摘されることが多いのですが、しばしば「TV自体が面白くなくなった」と言われることも少なくありません。「相対的な面白さ」が低下したばかりではなく、「絶対的な面白さ」も低下したという意見です。果たしてTV番組は本当に面白くなくなったのでしょうか?
コラムニストの木村隆志氏が行った東洋経済オンラインのアンケートでは、「CM前後で同じ映像を見せられる」「番組のスタート時間がバラバラで分かりにくい」「特番のような長時間番組ばかり」「出演者がおかしい」「芸能事務所によって扱いが違う」等、番組の作り方に対する不満の声が多かったようですが、ここでは視聴者側の意識にスポットを当て、それが二極化している問題を考えてみたいと思います。
まず、何を面白いと感じるかの基準は人それぞれ異なるので、TV番組が過去と比べてどれほど面白くなくなったのかを数値で比較することは非常に困難です。
たとえば、ダウンタウンの松本人志氏は、「スピード違反を犯さないような番組ばっかり」など、TV局の自主規制やポリティカルコレクトネスが原因であるかのような趣旨の発言を繰り返しています。確かにそれに同調する人も少なくないようです。しかし、その一方で、彼らのお笑いスタイルが「面白くない」と感じる人がTV離れを起こしている側面もあると思われます。
たとえば、アイドルグループ・NGT48のメンバーである山口真帆さんが暴行を受けたことを運営側が隠蔽したニュースで、松本氏は2019年1月13日放送の「ワイドナショー」(フジテレビ系)で、同席にしていた指原莉乃さんに対してセクハラコメントをしたことが大きな批判を呼びました。
また、2017年12月31日に放送された「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!」では、タイ式キックボクサーがタレントのベッキー氏の腰を強く蹴る企画や、松本氏の相方の浜田雅功氏が肌の色を黒くしたブラックフェイスをしたことが炎上しましたが、「彼らの笑いは面白くない!」「老害」というコメントとともに彼らが批判されることは昨今少なくありません。
もちろん、全てではありませんが、彼らのお笑いの中に人権や尊厳を傷付けて笑いを得る「お笑イジメ」が混じっているから不快に思うのでしょう。ここから、松本氏が感じる「つまらない」とは真逆の感性を有している人が数多くいることが分かりますし、そのような声は数年前よりも多くなっているのではないでしょうか。
また、「お笑イジメ」の話をする上で触れておかなければならない事件があります。2019年2月に開催されたイベント「ホリエモン万博」で、YouTuberカジサック氏こと、お笑い芸人・キングコングの梶原雄太氏が、共演した評論家の宇野常寛氏に対して、運動神経が良くない点を執拗に揶揄し、宇野氏が怒って会場から帰った件がインターネット上で大きな話題になりました。
この時、若手のお笑い芸人たちは「イジメとイジリの境界線」について、「信頼関係の構築出来ていない相手にやってはいけない」という見解を述べたのに対して、梶原氏を批判している人々の中には、そもそもイジリ芸そのものが嫌いだという人が少なくありませんでした。
実際、脳科学者の茂木健一郎氏が、日本のお笑い文化の「いじり」について好きか嫌いかを問うアンケートを自身のTwitterで行ったところ、「好き」と答えた人は17%に対して、「嫌い」と答えた人は3倍以上の55%になったとのことです。Twitterのアンケートは正確な調査ツールではありませんが、やはり「フツウからズレていることを嘲笑する」イジリ芸自体が嫌いだという層が一定数いることは間違いないことが分かります。
なぜこのようなイジリを嫌いと感じる人が増えたのか
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