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「準強かん」事件、福岡地裁・無罪判決の非常識

男性社会に流布した女性観の妄信

杉田聡 帯広畜産大学名誉教授(哲学・思想史)

女性に対する性犯罪では、裁判官の女性観が問われている(写真はイメージ)拡大女性に対する性犯罪では、裁判官の女性観が問われている(写真はイメージ)

被告・裁判官が妄信する女性観

 経験則は、裁判官が信じている人間・人間社会の真実(法則)のことである。本来それは、判決の根拠として使われる以上、多くの人の経験から慎重に帰納されなければならない。総じて、そうした帰納を行うのは一般に研究者であるのが普通である。そして経験則の元とされるべき経験のうちには、当然、一般の女性が性や性行為についてもつ経験が含まれなければならない。

 しかし、しばしば裁判官は、研究者の研究結果を用いることもなく、自分自身の狭い経験にもとづいて真実(法則)を詐称する。そしてその実、世間のモラルに無自覚であれば、男権制社会が流布する女性観を――「経験則」の名の下に合理化しながら――知らず知らずに受け入れてしまうのである。

 ここで問われるべきは、上記のように、女性は男性の性交の求めに気安く応じるという、男性集団において見られる女性観である。だがこの女性観は真実なのか。

 総じて、本質主義的にとらえられかねない言い方――「女とはこういうものである」、「男とはこういうものである」等――には慎重であるべきだが、性犯罪がからむ場面では、むしろあえてこう言わなければならない。

 男性はごく早いうちから女性の身体に関心をもつよう条件づけられて育つ。長じては、性的交渉の相手は、女性身体をもつかぎり誰でもよいと往々にして感じやすい。

 だが、女性はそうではない。 ・・・ログインして読む
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筆者

杉田聡

杉田聡(すぎた・さとし) 帯広畜産大学名誉教授(哲学・思想史)

1953年生まれ。帯広畜産大学名誉教授(哲学・思想史)。著書に、『福沢諭吉と帝国主義イデオロギー』(花伝社)、『逃げられない性犯罪被害者——無謀な最高裁判決』(編著、青弓社)、『レイプの政治学——レイプ神話と「性=人格原則」』(明石書店)、『AV神話——アダルトビデオをまねてはいけない』(大月書店)、『男権主義的セクシュアリティ——ポルノ・買売春擁護論批判』(青木書店)、『天は人の下に人を造る——「福沢諭吉神話」を超えて』(インパクト出版会)、『カント哲学と現代——疎外・啓蒙・正義・環境・ジェンダー』(行路社)、『「3・11」後の技術と人間——技術的理性への問い』(世界思想社)、『「買い物難民」をなくせ!——消える商店街、孤立する高齢者』(中公新書ラクレ)、など。

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