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ものものしい中継映像の特番

 特番を見ていると、自然と「諒闇(りょうあん)」という言葉が浮かぶ。先帝崩御から新帝即位の慌ただしさと緊張感の中で、儀礼が粛々と進められていく、と言うのなら、全ての番組を特別番組に切り替えるという態度も分からないではないが、この度の改元は譲位であり、実際の新帝即位までにまだ1カ月がある。にもかかわらず、このものものしい中継を含んだ映像は何事であろうかと、やや、あきれ気味でテレビを見ていた。通常の番組に新元号制定手続きの進み具合をテロップで流す程度で十分なのではないかと思われた。

 それにしてもなぜ4月1日発表なのだろうか。いや、よりによってエイプリール・フールを選ばなくともよいのにと、嘆息したくなる心持ちがあった。新元号には安倍晋三首相の「安」もしくは「晋」の文字が使われるのではないかと、取り沙汰され始めたのは、2月のうちだった。SNSでそんな憶測が出回るのを見ながら「まさか」と当初は悪い冗談と受け止めていた。が、韓国の3・1独立宣言祝賀節に、日本の外務省HPに「渡航危険情報」などが出されるに及び、度を越えた政府の態度に不安を覚えた頃から、首相の元号私物化もあり得るのではないかと、気がもめた。3月の末に近づくほど、安倍晋三氏の名の一文字が元号に採用されるのではないかと言う憶測は現実味を帯び始める。一方で、安倍首相は「国書」を元号の出典とすることを求めていた。韓国を敵視、「地球儀外交」と称して中国包囲網を唱えていた首相の提案である。

「安」や「晋」の文字がなかったことの安堵感がツイッターに

 いざ新元号が発表になると懸念された「安」や「晋」の文字はない。当然と言えば当然だが、これに安堵した人はけっこういるはずだ。新元号は「令和」で、出典は「万葉集」で梅の歌を歌った歌の詞書からだと言う。双子のおもりをしながら、万葉集の梅の歌の詞書であれば、何か中国と関連を持っているだろうと、菅官房長官が額を掲げる映像を見ていた。官房長官の新元号発表に続き、安倍首相が記者会見。新聞各誌は菅官房長官が新元号を墨書した額を掲げた写真を一面に使ったが、読売新聞は1日夕刊、2日朝刊ともに安倍首相の記者会見の写真を用いていた。皇室の政治利用の非難があがるかと、ツイッターの投稿を覗いてみたが、多くは「安」や「晋」の文字がなかったことの安堵が先に走り、首相による皇室の政治利用だと非難するまでには ・・・ログインして読む
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筆者

中沢けい

中沢けい(なかざわ・けい) 小説家、法政大学文学部日本文学科教授

1959年神奈川県横浜市生まれ。明治大学政治経済学部政治学科卒業。1978年「海を感じる時」で第21回群像新人賞を受賞。1985年「水平線上にて」で第7回野間文芸新人賞を受賞。代表作に「女ともだち」「楽隊のうさぎ」などがある。近著は「麹町二婆二娘孫一人」(新潮社刊)、対談集「アンチ・ヘイトダイアローグ」(人文書院)など。2006年より法政大学文学部日本文学科教授。文芸創作を担当。

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