青木るえか(あおき・るえか) エッセイスト
1962年、東京生まれ東京育ち。エッセイスト。女子美術大学卒業。25歳から2年に1回引っ越しをする人生となる。現在は福岡在住。広島で出会ったホルモン天ぷらに耽溺中。とくに血肝のファン。著書に『定年がやってくる――妻の本音と夫の心得』(ちくま新書)、『主婦でスミマセン』(角川文庫)、『猫の品格』(文春新書)、『OSKを見にいけ!』(青弓社)など。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
『まんぷく』がついに終わってしまいました。
最近の朝ドラの中では熱心に見たせいで、いろいろと思うところの多い番組だった。語りたいことがいっぱいある!
まず、「これ、途中からずいぶん話が変わっちゃったな」。
この番組の最初の頃って、よくできた人間ドラマだと思ってたんです。日常をコミカルに描くことによって、登場人物の喜びや哀しみを浮き彫りにさせていくような。わりとよくある手法だけど、そういうドラマって最近あんまりなかった気がする。それも連続ドラマで。
安藤サクラの芝居に慣れてなかったので、「まーんぺーいさーん!」と叫ぶたびにいちいちびっくりして引きそうになったが、あの演技は「汁粉の甘さを際立たせるための塩ひとつまみ」のようなもの(=思わず感涙するようなイイお話を描こうとする時の照れ隠しの演出の一種)だと理解してからは気にならなくなった。
始まって2週間ぐらいか、咲姉ちゃんと真一さんの結婚式があったのは。あの結婚式の福子の活躍にはじーんときてしまったし、福子の横顔をぼんやりと見つめる萬平さんの澄んだ目は、「この人はすばらしいひとだ……」と、恋したこと(に気づいていない感情)を語らずに描いていて素晴らしかった。私は「みんなが感動するいい話」というのには拒否反応があって「まーたイイお話かよ。ケッ」となり、羽生結弦も浅田真央も応援したことがないしサッカーのワールドカップや五輪では日本の対戦相手をいつも応援するような人間ですが、この『まんぷく』における最初のほうのストーリーにはすっかり感動しちゃっていた。
ネットで見ると、この結婚の場面はすごく評判が高くてみんな感動していて、いつもなら横を向くところなのに私も一緒に感動するという異常事態。それぐらいよくできてるんだと思ってたんです。咲姉ちゃんが死ぬところの、真一さんが咲姉ちゃんの手を握って、目に涙をいっぱいためているところももらい泣き。どうしたんだ私。
福子と萬平、そして福子の家族はもちろん、静かな真一さんも、売れない画家の忠彦さんも、ホテルの同僚の野呂さんも、悪いヤツの加地谷圭介も、白馬に乗った牧善之介も、みんなおかしくてマジメで哀しい。