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『まんぷく』は泣き笑いできるドラマだったのに…

青木るえか エッセイスト

途中から「即席ラーメン開発あれこれ」に

 私はずっと、『まんぷく』に出てくる食べ物が、食べることが大好きな福子、という設定なのにもかかわらずどちらかといえば味気ない、質素なものばかりだったことにひっかかりがあって、連載「テレビめし」でそのことを追求してきた。自分も食べ物好きだから、なんであんなに味気ないんだ?って気になって。そこで出た結論は「このドラマは、食べ物を描写する気はない。食べ物を食べた喜び悲しみの感情を描写したいのだ」だった。

 「美味しいもの」「たべもの」「即席ラーメン」はただの手段で、登場人物たちの喜びや悲しみ(そしてそこに至るまでの流れ)の描写をするためのドラマ。その描写が丁寧で、しかもちょっとひねってあって、しゃれていた。だからなおさら泣き笑いできた、そういうドラマだったのだ。幸せは哀しみの積み重ねの上にある。彼らの明るい笑顔には、深い哀しみが隠されているというような……。

 が。途中から様相が変わる。いつ頃だったろう……萬平印のダネイホンが出来たあと、二度目に逮捕されてからのゴタゴタがあり、若き東弁護士が登場し退場したあと……池田信用組合から即席ラーメン開発にかかろうかというあたり。

日清食品創業者の安藤百福の像の手にはカップヌードルが握られていた=横浜市中区拡大カップヌードルミュージアムにある日清食品創業者・安藤百福の像=横浜市中区

 なんかこのへんで、登場人物の感情の動きよりも、

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筆者

青木るえか

青木るえか(あおき・るえか) エッセイスト

1962年、東京生まれ東京育ち。エッセイスト。女子美術大学卒業。25歳から2年に1回引っ越しをする人生となる。現在は福岡在住。広島で出会ったホルモン天ぷらに耽溺中。とくに血肝のファン。著書に『定年がやってくる――妻の本音と夫の心得』(ちくま新書)、『主婦でスミマセン』(角川文庫)、『猫の品格』(文春新書)、『OSKを見にいけ!』(青弓社)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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