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「まんぷく」は、安藤サクラの「出落ち」だった

矢部万紀子 コラムニスト

「まんぷく」の安藤サクラさん(右)が、「なつぞら」の広瀬すずさんにバトン拡大「まんぷく」の安藤サクラさん(右)から、朝ドラ100作目「なつぞら」の主役・広瀬すずさんにバトンタッチ

鈴・松坂慶子の効果的な仕掛け

 ダメな作品ではなかった。伏線はちゃんと回収し、矛盾は残さない。さらには「夫を支える妻」路線でありながら、今日的なメッセージも打ち出す。練られた脚本だったと思う。

 メッセージ性を担っていたのは、安藤演じる福子の母・鈴(松坂慶子)だった。彼女は「心配性」だという設定で、最終回で「まんぷくヌードル」が大ヒットしても、「ダメよ、有頂天になったら。ええことがあったら、悪いことが起こるんだから」と萬平(長谷川博己)・福子夫婦に言っていた。

 だがこの心配性、鈴という人に「本音」を語らせるための仕掛けだと私は理解した。女性に本音を語らせるには、「理由」が必要な時代だったということだろう。

 福子は「萬平さん」一点張りで、現代の視聴者(中でも女性)からすれば、物足りないというかちょっとストレスというか、そんな存在だと思う。その不満を、明治生まれの鈴(自ら「私は武士の娘です」と折に触れて語る)が発する「本音」によって、少しでも下げてもらう。意外感があって効果的な仕掛けな上に、松坂慶子だからこそホンワリした楽しい場面になる。

 戦後すぐに萬平が始めた塩づくりで、できた塩を見て「茶色い、茶色い」と繰り返す鈴。「まんぷくラーメン」が完成、福子が宣伝ポスターやCMに出るのだが、渋る福子の横で出たい気持ちがダダ漏れの鈴。他にも「鈴さん名場面」はたくさんあった。それを見るたび私はクスッと笑い、「専業主婦もの」という大きな構図への不満を解消させてもらった。

 戦前戦後を生きて最終的には成功者となる人の妻だとしても、安藤演じる福子の「萬平さんファースト」は、 ・・・ログインして読む
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筆者

矢部万紀子

矢部万紀子(やべ・まきこ) コラムニスト

1961年生まれ。83年、朝日新聞社に入社。宇都宮支局、学芸部を経て、週刊誌「アエラ」の創刊メンバーに。その後、経済部、「週刊朝日」などで記者をし、「週刊朝日」副編集長、「アエラ」編集長代理、書籍編集部長などをつとめる。「週刊朝日」時代に担当したコラムが松本人志著『遺書』『松本』となり、ミリオンセラーになる。2011年4月、いきいき株式会社(現「株式会社ハルメク」)に入社、同年6月から2017年7月まで、50代からの女性のための月刊生活情報誌「いきいき」(現「ハルメク」)編集長をつとめた後、退社、フリーランスに。著書に『美智子さまという奇跡』(幻冬舎新書)、『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』(ちくま新書)。

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