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石丸幹二、チャップリンが演じた老芸人役を再び

チャップリン生誕130年の年に、音楽劇『ライムライト』再演へ

真名子陽子 ライター、エディター


拡大石丸幹二=岸隆子撮影

 4月9日からシアタークリエで音楽劇『ライムライト』が上演されます(大阪、福岡、愛知公演あり)。喜劇王チャールズ・チャップリンが創った同名映画を原作に、2015年に初演された作品で、チャップリン生誕130年の記念すべき年に、アカデミー作曲賞を受賞した名曲“エターナリー”にのせて再び上演されます。

 チャップリンが演じた老芸人カルヴェロを初演に続いて石丸幹二さんが演じます。吉野圭吾さん、植本純米さん、保坂知寿さんは初演から続投、カルヴェロを献身的に支えるバレリーナ・テリー役の実咲凜音さんと、テリーに想いを寄せる作曲家・ネヴィル役の矢崎広さんが新たに加わります。

 「チャップリン映画の"マイ・ベストワン”」と語る石丸幹二さんの取材会が行われ、初演で苦労したところや役についてなど、チャップリンへの想いと共に語ってくれました。

あなたのカルヴェロを創ってほしい

拡大石丸幹二=岸隆子撮影

記者:初演の手応えはいかがでしたか。

石丸:毎公演、カーテンコールで拍手をいただく度にほっとしていました。やはりチャップリンという偉大な方が創り上げた作品を、ちゃんとお客さまへお届けできているのかという責任を感じていました。毎公演、必死に演じておりました。

記者:初演時に一番苦労した点は何でしょう。

石丸:稽古を始めた時に、映画でチャップリンが演じていたカルヴェロを踏襲して演じるべきなのか?そうではないのか?その壁にぶつかりました。でも、チャップリンのご遺族が来日されたときに、決しておじいさまの真似をするのではなく、あなたのカルヴェロを創ってほしいと言ってくださいました。カルヴェロの心を自分らしくのびのびと演じればいいんだと思えました。とはいえ、あまりにも有名な作品ですから、あの世界観を出すことに重圧を感じながらお稽古をしていました。

記者:映画のチャップリンが演じるカルヴェロについてどのような印象をお持ちでしょうか。

石丸:いつもの山高帽を被ってブカブカのズボンを履いて杖をついてというイメージとは違って、ご本人そのものの姿をカルヴェロという役に映していらっしゃいました。役というより、彼そのものだったんじゃないか……そこに俳優チャップリンを見たという気がしました。私は到底及びませんので、私の年齢にあったカルヴェロを、歳を重ねた老芸人の心に添うように演じました。

記者:その上でどういうカルヴェロ像を創られたのでしょうか。

石丸:自分の限界を受け入れずに、まだ現役であるということを支えにして生きてきたが、厳しい現実に直面し自己崩壊します。けれど唯一の救いの光は、後の俳優たちを育てチャンスを与え、そこに自分の生きる道を見つけたこと。そして、彼自身がそのことについて納得をした。そういうカルヴェロ像を創りました。

舞台を通して見えないバトンを渡していく

拡大石丸幹二=岸隆子撮影

記者:音楽劇になることで、どういう世界観が創られたと思いますか。

石丸:映画でも音楽は流れていますが、演劇ではそこに歌詞が入ります。それによってイメージの世界が広がっていきます。かつ、チャップリンが次の映画作品のために書いていた未発表の曲を入れているんです。その曲にも詞が付いて、後の芸術を支える人たちへのメッセージが入っています。

 チャップリンが編集して創りあげた『ライムライト』の世界は、無駄が一切ないんですよね。チャップリンが残したものは完璧なんです。だから、映画版をそのままコピーするのではなく、音楽劇という違うアングルから光を当てると、この『ライムライト』はどう浮かび上がるのか、そこに舞台にする意味があると思いました。映画とは違う色付けができたのではないかと思います。

記者:この作品の魅力は何でしょうか。

石丸:芽吹いてくるスターの卵たちにチャンスを渡すこと。それはポジションを渡すということではなく、彼らに光を当てていくことなんですね。私も29年俳優をしてきたからこそ、すごく共感しました。俳優にとって大事な作業のひとつだと思います。この作品ですと、テリー役の実咲凜音さんやネヴィル役の矢崎広くんに、舞台を通して見えないバトンを渡していくんだということをこの作品から学びました。同じ舞台に立つ以上、ある意味ライバルではあるんだけれど、焚き付けながらライバルに輝いてもらう。まさにカルヴェロは映画の中でそういう生き方をしていますね。

記者:それは石丸さんの思いと重なるんですね。

石丸:そうですね。でも、まだまだチャップリンが演じるカルヴェロには到底及びません。だからこそ、いつまでも追いかけたい作品です。

世の中と向き合って映画を創っていた人

拡大石丸幹二=岸隆子撮影

記者:チャップリンとの出会いはいつでしょう?

石丸:子どもの頃にテレビでチャップリンの映画を見ていましたが、出会いというならば、劇団四季にいた頃に読んだチャップリンの自伝です。どういう思いで映画と向き合っていたのかを知りましたし、何より、彼のハングリー精神に強烈に惹かれました。俳優というのはこういうものを根底に持っていないといけないんだ、と。

記者:チャップリンの作品は喜劇でありながら哀愁が入っているように感じます。自伝を読まれて、それはどういうところから来ていると思いますか。

石丸:どうでしょうか……。当時、自伝から私が感じたのは、先ほど申し上げたハングリー精神。今、自分が置かれた環境から1歩でものし上がろうとする精神力だったんですね。つまり、彼は貧困という弱者であった。弱者である自分と一緒にいる人たちがどれほど善人であるか、目の見えない少女はどれほど美しい心の持ち主であるかが分かっていた。反面、上の社会に対して、鋭い批判精神が培われていった。だから後々、映画という媒体を通じて社会に問題提起をしていった。弱者と強者という世の中と向き合って映画を創っていた人なんだと感じます。もしかすると、哀愁というのはそういう映画作りの姿勢からにじみ出ていたのかもしれないですね。

記者:日本チャップリン協会会長で上演台本を書かれた大野裕之さんから、作品に対する解説などはあったのでしょうか。

石丸:前回、大いに語っておられました(笑)。チャップリンをこよなく愛し、『ライムライト』のことを知り尽くしています。彼が訳している言葉一つひとつに愛を感じますね。とても言葉を吟味して日本語に移し替えていらっしゃいます。

記者:「エターナリー」の歌詞に“ライムライトは魔法の光”とありますが、石丸さんにとってライムライトとは何でしょう。

石丸:大野さんによると、ライムライトって昔の照明のことなんだそうです。ほのかな灯りらしく……。この舞台で歌うときに、スモークの中でフットライトがすっと点くのですが、朧げな光なんですね。こういうことをライムライトというのかなと思いながらいつも歌っています。役者を導き、そっと照らす、それこそがライムライトなんでしょうね。

◆公演情報◆
音楽劇『ライムライト』
東京:2019年4月9日(火)~4月24日(水) シアタークリエ
大阪:2019年4月27日(土)~4月29日(月) 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
福岡:2019年5月2日(木)~5月3日(金) 久留米シティプラザ ザ・グランドホール
愛知:2019年5月5日(日)~5月6日(月・休) 日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール
公式ホームページ
[スタッフ]
原作・音楽:チャールズ・チャップリン
上演台本:大野裕之
音楽・編曲:荻野清子
演出:荻田浩一
[出演]
石丸幹二、実咲凜音、矢崎広、吉野圭吾、植本純米、保坂知寿 ほか

筆者

真名子陽子

真名子陽子(まなご・ようこ) ライター、エディター

大阪生まれ。ファッションデザインの専門学校を卒業後、デザイナーやファッションショーの制作などを経て、好奇心の赴くままに職歴を重ね、現在の仕事に落ち着く。レシピ本や観光情報誌、学校案内パンフレットなどの編集に携わる一方、再びめぐりあった舞台のおもしろさを広く伝えるべく、文化・エンタメジャンルのスターファイルで、役者インタビューなどを執筆している。

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