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青野紗穂×石丸さち子インタビュー(上)

『Color of Life』、これまでとまったく違う作品に

真名子陽子 ライター、エディター


拡大青野紗穂(右)と石丸さち子=岩田えり撮影

 New Musical『Color of Life』が5月1日からDDD青山クロスシアターで上演されます(27日まで。4月26日プレビュー公演)。『Color of Life』は、ニューヨークで開催されるオフ・オフ・ブロードウェイ演劇祭、Midtown International Theatre Festivalで最優秀ミュージカル作品賞など4つの部門で受賞した作品で、脚本・作詞・演出は石丸さち子さん、作曲・編曲は伊藤靖浩さんが務めています。

 そして出演者は二人。大震災を機に画題を見失った画家、和也役を東啓介さん、心から愛した同性の恋人と死に別れたばかりの女優、レイチェル役を青野紗穂さんが演じます。これまで2度上演されている作品ですが、今回初めて対面客席にて上演されます。よりリアルな芝居が求められると話す石丸さんに、新しく生まれ変わる『Color of Life』の魅力を力強く、そしてワンフレーズ聞いただけで引き込まれる歌声を持つ青野さんには、役に対する向き合い方や歌うことについて聡明に語っていただきました。

 撮影では実際に舞台で使用する彩られたキャンバスと、あえて真っ白のキャンバスも使わせてもらいました。「誰かと一緒ならいろんな色が生まれる」という石丸さんの言葉を引用しておきます。

紗穂はレイチェルにぴったりな女優

拡大石丸さち子=岩田えり撮影

――まずは今回の上演に対しての思いを聞かせてください。

石丸:何もない正方形の真っ黒な舞台で、小道具も少なく限られた状況の中、本当にミニマムな演出をしたニューヨークの初演から、シアターイーストという大きな空間で日本初演を成立させるために、2人が暮らす場所=舞台自体を白いキャンパスという設定にしました。そこに7つの色が生まれていくという演出を美術の伊藤保恵さんと生み出し、ご好評いただいて再演までさせていただくことができました。そして今回は対面客席にしまして、キャストも東啓介くんと青野紗穂さんというこれまでのキャストよりもずっと若い、台本の設定よりも若いキャストを得て稽古を進めているのですが、これまでとはまったく違う作品になっています。『Color of Life』が『Color of Life』であるという点については何も変わっていないのですが、ビジュアルや彼らの精神のあり方、発見の仕方や出会い方までまったく新しいものになっていて、それをこの本が困らずにその2人を受け入れてくれています。その中で彼らが生き生きしていて、私自身がこんなにも新しくなるんだということにとても驚いています。

――これまでとは何が違って新しくなっているのでしょうか?

石丸:そうですね……、役作りにはいろんなパターンがあると思いますが、やはりその役になろうとしますよね。この作品は出会いの芝居なんですが、東くんと青野さんの出会いの芝居でもあり、和也とレイチェルの出会いの芝居でもあります。その自分の中に役を留めて演じるという行為の中に、ものすごく本人たちの生き様が入るんです。これは初演バージョンよりもその割合が大きくなっているような気がします。そして、対面客席にすることで初演よりも虚構性や抽象性がぐっと下がっていて、もっとリアルな演技が要求されていますね。そしてありがたいことに、要求されているレイチェルの要素を紗穂が持っているんです。だから今は紗穂を生かす演出をしています。ね?

青野:はい、していただいています!

拡大青野紗穂=岩田えり撮影

石丸:最初にあいさつに来てくれて、「青野紗穂です。よろしくお願いします」と言った時に、営業用の顔をしているなと思ったのですが(笑)、その姿とは違うすごく繊細なんだけどものすごく気丈で勝ち気。そして、“世の中に合わせていかない自分”で生きているタイプなんだろうということを、その営業スマイルの中に感じ取ったんです。

――一瞬で感じ取られたんですね。

石丸:そう、私は感じ取りました(笑)。彼女がニューヨークで歌っている姿を見ていましたし、ニューヨークで暮らしていたことも知っていました。レイチェルはミックスの役なんだけれども、英語でも日本語でも暮らすことができて、そのどちらにも足を踏み入れていることって、ずっと日本語で生活している人にはわかりにくいんですよね。その意味でも紗穂はレイチェルという人物を内に抱えることができるぴったりな女優さんだと思いました。そして、やっぱり歌声が素敵でした。

――本当に素敵な歌声です。

石丸:自分自身のハートに近い歌声を持っていました。そして、そのハートは世の中に合わせて生きている自分ではなく、私はこうでしか生きられないという自分。そのハートの声を持っている気がしました。それが私にはとても魅力的でしたね。

人生勉強をしているような現場

拡大青野紗穂=岩田えり撮影

――青野さん、この作品への出演が決まった時の思いを聞かせて下さい。

青野:マネージャーさんから電話で聞いたのですが、「私にできますか? 大丈夫でしょうか?」と最初に思いました。

――そう思われたのはなぜでしょうか?

青野:今まで出演させていただいたミュージカルは歌がメインの海外作品が多く、表面的にも内面的にもわかりやすい役柄が多かったんです。『Color of Life』のお話を聞いた時、自分の存在価値や出会うことの奇跡の大きさなどを、これまで本当の意味でちゃんと感じられていたのか? それが実体験としてわからなかったんです。それを演じながら見つけるにしても、自分の中で整理をつけることができるのかなと、後ろ向きになってしまったんです。けれど最初にお会いした時のさち子さんは……具体的に何?と聞かれてもわからないんだけれど、背中をポンと押してもらえるような雰囲気を纏(まと)っていらっしゃったんです。すごく不安でしたが、さち子さんに実際お会いして「この作品は私が人生を新しく踏み出すターニングポイントになるんじゃないかな」と感じました。それを実感するまでには少し時間が経ってからでしたが、最初はもうホントにホントにホントに不安でした。

――(笑)。そこまで考えてしまわれたんですね。

青野:そうですね。今までだったら「はい、やります。ありがとうございます」という感じでしたが、この作品はただ「やります」だけで向き合ってはダメなような気がしたんです。だからすごく考えましたね。

――実際にお稽古が始まって、今はどんなふうに思っていますか?

青野:今はこの作品に参加させていただけてすごくうれしいですし、自分のダメなところ、女優としてダメというより、人間としてダメなところをさち子さんからご指摘していただいたり、ここが素敵、ここはもう少し深く見たほうが良いよと、自分のチャームポイントや良いところも人として言って下さるので、人生勉強をさせていただいているような現場になっています。だから、レイチェルを演じていて、すごく苦しくなる時もありますし、すごく楽しくなる時もありますし、「あ!こういう感覚になったこともありました」って感じることがたくさんあります。もちろん大変ですし、「はあ……」って俯く時もあるんですが、そんな時でも家に帰って本を開いた時に、温かい何かを必ず感じるので、すごくありがたい現場です。

◆公演情報◆
New Musical『Color of Life』
東京:2019年5月1日(水・祝)~5月27日(月) DDD青山クロスシアター
※プレビュー公演:2019年4月26日(金) 相模女子大学グリーンホール 多目的ホール
★アフタートークの開催も決定!
詳しくは公式ホームページをチェックしてください。
[スタッフ]
脚本・作詞・演出:石丸さち子
作曲・編曲:伊藤靖浩
[キャスト]
東啓介 青野紗穂
〈青野紗穂プロフィル〉
エイベックス主催「キラット☆エンタメ・チャレンジコンテスト2007」に出場し、約2,000人の中からモデル部門の特別賞を受賞。2012年、N.Y.アポロ・シアターのアマチュアナイトのキッズ部門「Stars of Tomorrow」に出場し優勝。2015年7月5曲入り配信限定EP「INTRODUCTION」をリリース。主な舞台出演作品は、『ソーホー・シンダーズ』『オン・ユア・フィート!』「BKLYN-ブルックリン-」『RENT』『人魚姫』など。9月には『FACTORY GIRLS~私が描く物語~』への出演が決まっている。
青野紗穂OFFICIAL WEBSITE
〈石丸さち子プロフィル〉
早稲田大学を卒業後、「NINAGAWA SUDIO」に俳優として参加。1993年より、蜷川幸雄作品を中心に演出助手をつとめ、2009年、演出家として独立。現代作家から古典、ストレートプレーからオリジナルミュージカルまで、幅広く作品を創り出している。ミュージカル『マタ・ハリ』翻訳・訳詞・演出、Rock Musical『5DAYS 辺境のロミオとジュリエット』脚本・作詞・演出、GALAXY OPERA『銀河鉄道999』作詞などを手がける。4月開幕の舞台『銀河鉄道999』さよならメーテル~僕の永遠では脚本と作詞を、5月に開幕する『BACKBEAT』では翻訳と演出を担う。
石丸さち子オフィシャルブログ

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筆者

真名子陽子

真名子陽子(まなご・ようこ) ライター、エディター

大阪生まれ。ファッションデザインの専門学校を卒業後、デザイナーやファッションショーの制作などを経て、好奇心の赴くままに職歴を重ね、現在の仕事に落ち着く。レシピ本や観光情報誌、学校案内パンフレットなどの編集に携わる一方、再びめぐりあった舞台のおもしろさを広く伝えるべく、文化・エンタメジャンルのスターファイルで、役者インタビューなどを執筆している。

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