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ノートルダム大聖堂火災、市民の対照的な光景

林瑞絵 フリーライター、映画ジャーナリスト

パリ市民たちが拍手を送り、激励するなか通過する消防車=「ル・モンド」のサイトより拡大パリ市民たちが拍手を送るなか、消火活動から戻る消防車=「ル・モンド」のサイトより

消防隊員への拍手、ねぎらい、握手まで

 もうひとつの印象的な動画は、仕事を終えて戻る消防車を、市民が大きな拍手で迎えるシーンだ。消防士の証言によると、今回は特に厳しい消火活動になったという。すぐ隣を流れるセーヌ川の水を使えるという利点はあったが、そもそも大聖堂の背が高く、崩れ落ちた尖塔は96メートルもあり、出火の位置も屋根付近。屋根の柱や梁に多くの木材が使われていたことも、延焼を早めた原因のようだ。

 ノートルダムは単なる教会ではない。建物そのものがゴシック建築の傑作と言えるものである。「薔薇窓」と呼ばれるステンドグラスや、フランス最大級のパイプオルガンなども芸術的な価値が高い。内部には宗教関連の美術品や文化財を数多く抱え、ミュゼ(美術館・博物館)の役割を併せ持つ。単に水を大量にかけて消火をすればすむ話ではなく、建物の崩壊を避けるように注意しながら放水し、同時に聖遺物ら宝の数々も救い出さなければならなかった(トランプ大統領はそれを知らずに、ツイッターで上空からの放水を訴え、一部から嘲笑されていた)。

 そのような難儀な作業を、市民は日が落ちた後も遠巻きから不安そうに見守っていた。そして消火活動を終えた消防車が橋を渡って戻る際には、消防隊員に向けてねぎらいの拍手を送った。なかには隊員にコーヒーやパン、チョコレートを差し入れたり、花を渡したり、握手を求める人までいたという。

消防車を拍手で迎える人々と、賛美歌を捧げる人々の両方が見られる動画(ル・モンド)

 この2種の動画は、パリの直後の ・・・ログインして読む
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筆者

林瑞絵

林瑞絵(はやし・みずえ) フリーライター、映画ジャーナリスト

フリーライター、映画ジャーナリスト。1972年、札幌市生まれ。大学卒業後、映画宣伝業を経て渡仏。現在はパリに在住し、映画、子育て、旅行、フランスの文化・社会一般について執筆する。著書に『フランス映画どこへ行く――ヌーヴェル・ヴァーグから遠く離れて』(花伝社/「キネマ旬報映画本大賞2011」で第7位)、『パリの子育て・親育て』(花伝社)がある。

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