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ノートルダムが体現する遺産の奥深さと再建の今後

林瑞絵 フリーライター、映画ジャーナリスト

『ノートル=ダム・ド・パリ』が悲しみの解毒剤に

 また、芸術的な観点から忘れてはならないのが、文豪ヴィクトル・ユゴーの『ノートル=ダム・ド・パリ』だろう。この小説から派生し、オペラ、バレエ、ミュージカル、実写の映画、ディズニーのアニメなどが次々と誕生したため、ノートルダムは世界的に親しみをもって知られていると言える。たとえノートルダム大聖堂の形を知らぬ人でも、ヒロインの“エスメラルダ”やせむし男の“カジモド”の名は、どこかで聞いたことがあるのではないか。

火災後、トゥルネル橋からノートルダム 大聖堂をのぞむ。
撮影は4月21日
拡大火災後、トゥルネル橋からノートルダム大聖堂をのぞむ=2019年4月21日、撮影・筆者
 火災後はユゴーの『ノートル=ダム・ド・パリ』に大いに注目が集まった。フランスではネット上の本の売り上げで首位につけたほどである。2015年1月のシャルリ・エブド襲撃事件後は、宗教の不寛容さを批判したヴォルテールの『寛容論』が、2015年11月のパリ同時多発テロの後はヘミングウェイの『移動祝祭日』が急激に売り上げを伸ばしたが、どうやら国を揺るがすドラマの後には、市民は悲しみの解毒剤として本に癒しを求める傾向があるようだ。

 結局、ノートルダムが体現するのは、町や国、ひいては人類にとっての豊かな遺産・財産(パトリモワン)であると要約できそうだ。だからこそユネスコの世界文化遺産にも登録されているわけだが、ノートルダムの場合は宗教はもちろん、地理や歴史、文化・文明、芸術など、実に広い範囲で遺産であると言えるわけで、影響力が多面的で、かつそれぞれ奥が深くて濃い。

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筆者

林瑞絵

林瑞絵(はやし・みずえ) フリーライター、映画ジャーナリスト

フリーライター、映画ジャーナリスト。1972年、札幌市生まれ。大学卒業後、映画宣伝業を経て渡仏。現在はパリに在住し、映画、子育て、旅行、フランスの文化・社会一般について執筆する。著書に『フランス映画どこへ行く――ヌーヴェル・ヴァーグから遠く離れて』(花伝社/「キネマ旬報映画本大賞2011」で第7位)、『パリの子育て・親育て』(花伝社)がある。

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