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岡田将生、シェイクスピア劇『ハムレット』主演

英国人演出家と「役の可能性を探りたい」

石橋法子 フリーライター


拡大岡田将生

 シアターコクーンが海外の才能と出会い、新たな視点で挑む演劇シリーズ「DISCOVER WORLD THEATRE」の第6弾となる初のシェイクスピア作品『ハムレット』が、東京(5月9日~6月2日)と大阪(6月7日~6月11日)で上演される。岡田将生、黒木華、松雪泰子ら魅力的な日本人キャストと、日本初登場を飾るシェイクスピア劇の名手、英国人演出家サイモン・ゴドウィンとの刺激的なタッグが実現する。昨年参加した演出家主宰のワークショップが楽しすぎて、「明日にでも稽古に入りたいぐらい」と声を弾ませる主演の岡田将生。作品にかける思いを取材会で語ってくれた。

蜷川幸雄さんへの思いを胸に、シェイクスピア劇初挑戦

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記者:サイモン・ゴドウィンさんのワークショップに参加されたそうですね。具体的にはどのようなことをされたのですか?

岡田:例えば、ボールを上から投げるか下から投げるかでも、相手を思いやる気持ちに違いが出るといった、身体を使って人とコミュニケーションを取る方法について丁寧に学んだり、数人に分かれて『ハムレット』の短いシーンの動きを自分たちだけで考えてみたり。あまり経験がないことばかりだったので、すごく楽しかったです。サイモンさんの素敵な人柄や面白さ、想像力の豊かさが伝わってきて、「早く演出を受けたい!」と思いました。

記者:初舞台で演出を受けた蜷川幸雄さんからは、「いつか君とシェイクスピアをやりたい」とラブコールを受けていたそうですね。

岡田:最初に今回のお話をいただいた時に、頭の中で蜷川さんと「本当に僕でいいんでしょうか」と対峙しました。蜷川さんとは初舞台でお会いしたので、本当に立ち方から発声の仕方、動き方まで、ひとつずつ丁寧に教えていただきました。当然怒られもしましたが、その中でも優しい方という印象が強くて。今回も怒ってください、本番も見守ってくださいと、手を合わせるような思いでいます。

記者:蜷川さんからの教えで、印象に残っている言葉はありますか。

岡田:覚えているのは、「引きと寄りの芝居を考えるんだ」という言葉。相手を立たす場面で、自分はどういう引きの芝居をするのか。今でも舞台に立つときは意識しています。また、先日サイモンさんとお会いしてからは、日ごとに「僕とサイモンさんが作るハムレットを演じなくては」という思いが強くなっています。それだけは、忘れちゃいけないことだなと。

狂気にとらわれず、人としてのハムレットを表現

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記者:本格的な稽古はこれからですが、すでに8割方の台詞が入っているそうですね。

岡田:シェイクスピアの中でも台詞量が一番多い役と言われるのは、台本を見たら分かることですし、量にばかりとらわれるのも良くないなと思っています。今回挑戦したいのはそこではないので。ただ、覚えないと始まりませんが……(笑)。台本を読めば読むほど、台詞のリズムがすごく大切だなと感じます。ありがたいことに、周りにはシェイクスピアに詳しい先輩方がたくさんいます。吉田鋼太郎さんには「分からないことは、すぐに電話してこいよ」とおっしゃっていただき、読んでいて引っ掛かる部分は、何度か質問させていただきました。

記者:今の段階でハムレットはどういう人物だと?

岡田:読むほどにハムレットに対する気持ちが変わってくるんです。今日はこう感じても、数日後には「こういう読み方じゃない」と思ったり。有名な台詞もたくさんあって、ちゃんと言葉の意味を分かっているのか、岡田ならどう表現するんだと、先輩方も見守ってくださっている部分もあると思います。そこも大切にしながら、今はハムレットが自分のなかで変化することを楽しんでいます。それが正解か不正解かではなく、稽古や舞台の上で、その都度これだというものをつかめればいいのかなと。変化を楽しみながら、ちゃんと役と向き合えている気がします。

記者:作品の魅力についてはいかがでしょう。

岡田:単なる復讐劇と言えばそうですし、復讐が連なって物語が繋がっていく部分もありますし、人それぞれいろんな感じ方ができる作品だと思います。でも、ひとつ言えるのは、ハムレットという役に魅力を感じて、この作品に出たいと思ったので、役自体に宿る魂みたいなものにすごく魅力を感じています。

記者:役の魅力について、もう少しお話いただくと?

岡田:サイモンさんから「君にとってのハムレットはどういう人?」と問われたときに、僕は繊細な狂気についてお話したのですが、今思うと狂気にばかり縛られていたように思います。台本を読んでいると、ハムレットもひとりの人間で、弱い自分から奮起しようとする姿が描かれていたり、人とのコミュニケーションの取り方には、現代に通じるものがあったりするんです。ハムレットって、勝手に“凄いひと”と捉えていたけれど、ちゃんとひとりの人として生きないといけないなと思いました。共演者の方々とコミュニケーションを取りながら、そういう部分を表現できればと思います。

役を演じる上で、落語ドラマでの経験が生かせる

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記者:恋人オフィーリア役は、黒木華さんが演じられます。

岡田:ポスター撮りの現場で久しぶりにお会いしました。彼女とは同じ年なので気兼ねなくお話できます。初共演の時から本当に素敵な女優さんだなと思っていたので、今回映像ではなく、舞台でじっくりお芝居できることがすごく嬉しいです。やはりみなさん、今回の作品は大変な大作になると感じているようで、「助け合いましょう」という会話を確か交わしたように思います(笑)。

記者:映像にはない、舞台で演じることの難しさはありますか。

岡田:コントロールできないことをコントロールしている時かな。日によって芝居が変わるのも面白いんですけど、台本を離れて暴走されている方を見たことがあって、それが素敵な時と、座組によってはそぐわない場合があるんですよね。自分も同じような状況に陥るんじゃないかという恐怖と、あえて芝居に使うこともあったりするので、自分だけの芝居にならないように気を付けています。たまに自分を客観的に見られている瞬間があって、そういう時は演じていても面白いですし、自由に動けたりします。そういう日は、「この瞬間を忘れないようにしよう」と、カーテンコールの時に思っています(笑)。

記者:これまで20代では新しい挑戦を重ねていきたいと、様々なメディアで発言されていました。今年30歳を迎えます。20代を振り返り、成長を感じた瞬間はありましたか。

岡田:自分で成長や変化を感じることはないんですけど、舞台に対する捉え方は、どんどん変わってきています。台本の読み方もひとつではなく、自分の体調や機嫌によっても読み方が変わってくるし、人ってそういうものかなと思います。今回の舞台も物語としての大筋はありながらも、その他の部分は日々の変化を楽しもうと思えています。以前は共演者の方にご迷惑をお掛けしないようにとか、目の前のことで精一杯でした。それが、稽古前から作品について色々考えられるようになったのは変わってきた所かなと思います。

記者:今思えばターニングポイントだったと感じる作品は?

岡田:ターニングポイントとは違うのですが、『ハムレット』をやる上では、去年出演したドラマ『昭和元禄落語心中』です。落語もリズムがすごく必要で、相手に“聞かせる”ためには、自分の間でどんどんお客さんを引き込んだり、笑わせたりしないといけない。ハムレットも独白のシーンがすごく多いので、落語の師匠方からいろいろ教えていただけたことは、本当に良い経験をさせてもらったなと思います。

記者:公演に先駆け演出のサイモンは、「新しいハムレット」に期待して欲しいという趣旨のコメントを寄せています。

岡田:色んなことを発信して想像してもらえるような、面白くて楽しい稽古場になったら良いなと思います。そのなかで可能性を探りながら、サイモンさんと自分らしく新しいハムレットを見つけていきたいです。今日稽古場を見ていよいよ始まるんだなと、一段とギアが上がった感じです。

◆公演情報◆
Bunkamura30周年記念
シアターコクーン・オンレパートリー2019
DISCOVER WORLD THEATRE vol.6
『ハムレット』
東京:2019年5月9日(木)~6月2日(日) シアターコクーン
大阪:2019年6月7日(金)~6月11日(火) 森ノ宮ピロティホール
公式ホームページ
[スタッフ]
作:ウィリアム・シェイクスピア
翻訳:河合祥一郎
演出:サイモン・ゴドウィン
[出演]
岡田将生/黒木華/青柳翔/村上虹郎
竪山隼太/玉置孝匡/冨岡弘/町田マリー/ 薄平広樹/内田靖子
永島敬三/穴田有里/遠山悠介/渡辺隼斗/秋本奈緒美
福井貴一/山崎一/松雪泰子

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筆者

石橋法子

石橋法子(いしばし・のりこ) フリーライター

文化人へのインタビューを中心に新聞、雑誌、Web媒体にて原稿を執筆する。現在、古典芸能から現代美術まで、大阪文化の担い手に贈られる「咲くやこの花賞」受賞者インタビューを公式サイトにて、「宝塚すみれ色の未来へ」を創刊100年の雑誌『婦人公論』(中央公論新社)にて不定期連載中。

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