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男役、最終章へ 最後までぶれない情熱/紅ゆずる

【宝塚~朗らかに~】10月退団、「鎌足」で主演

日刊スポーツ新聞社・村上久美子


【日刊スポーツ・4月25日紙面(東京本社発行版)より】

拡大星組公演「鎌足-夢のまほろば、大和し美し-」に中臣鎌足役で出演する紅ゆずる(撮影・清水貴仁)
 10月退団を発表した星組トップ紅(くれない)ゆずるが、プレ・サヨナラ作「楽劇(ミュージカル) 鎌足-夢のまほろば、大和(やまと)し美(うるわ)し-」に主演する。演じるのは大化の改新の中心人物、中臣鎌足。日本を代表する“革命児”を演じ、サヨナラ公演を含めて残り2作となった男役17年の集大成へ向かう。公演は大阪市のシアター・ドラマシティで5月5~13日、東京・日本青年館ホールで同19~25日。

 「志」。色紙には、理想を貫き大化の改新を遂げた中臣鎌足を表現して書き込んだ。幼少時から思い焦がれた男役を、ぶれることなく突き詰めた自身の思いも集約された1文字だった。

 「今回の鎌足は、純粋で誠実な青年。神祇官の家に生まれたのがコンプレックス。中臣という名前が嫌いで、そこから脱出したい」

 汚れをはらう務めの家に生まれたがゆえ、転身を期して、死の直前に「藤原鎌足」と名前を得た。子供のころあこがれた宝塚へ入り、理想の男役像に猛進した紅自身の半生にも通じる。

 「名前、家柄に縛られて皆が生きていた時代に、学識と知識をため、発揮する機会をうかがっていた人」

 飛鳥地方へも行き、空気を感じてきた。10月13日に同時退団する綺咲愛里は朝廷に仕える少女役。ヒロインの存在が鎌足の心の支えになる。紅にとっての「支え」「希望」は「宝塚が好きって気持ち」だった。

 02年入団から17年。退団へ、心の中でカウントダウンは始まっている。

 「稽古場に入れるのも現役だけ。劇団スタッフなら入れるのかなって思ったりもして(笑い)。指導者? 無理です。恐れ多い」

 2月に行った退団会見では号泣。その心中は、虚実入りまじっていた。

 「白い服を着て、退団するんだと(実感)。よく『形から入れ』と言われますけど、確かに、あんな白い服を着たら退団って気持ちにもなるわって思った!」

 会見後は「携帯(の速報記事)で、ああ~退団すんねや~って。よくわからん感じ(笑い)。で、自分が携帯の中で泣いていた」。

 宝塚音楽学校へ入学する前、大阪から宝塚大劇場まで、入場券はなくても何度も通った。学校へ通うシミュレーションをしながら阪急電車に乗った。本拠地への愛着は人一倍強い。

 「初舞台で幕があがったときの(客席とは)逆から見るあの景色が忘れられない。今も毎回、大劇場はなんて広く、きれいなんだろうって思う。退団後はまず、寝させて(休ませて)もらおうとは思ってますけど、次の日から、宝塚見に行きたくなって、花の道とかウロウロしてるかも。暇なのかって思われそう」

 今年はバレンタインにも感慨が。毎年「段ボール何個分か分からない。すさまじい」量のチョコを、ファンから、組子からもらう。

 「来年のバレンタインデーはないんや…こんだけ、もらうのが恒例やったけど…。毎年『バレンタインはいいよ』と言いながら、実は楽しみで(笑い)。来年の2月14日も(稽古場に)段ボール箱、置かせてもらうって組子に言いました」

 トップ就任以来、組子には「個性を出せ」と繰り返してきた。入団以来、星組一筋。星組の個性は「ものすごい情熱的」と感じる。

 「稽古場で自分自身に格好つける必要はない。分からないことは分からないと言う。それもひとつの情熱やと思うんですよ」。星というより太陽のような熱さで、まだまだ、星組をけん引する。

◆楽劇(ミュージカル)「鎌足-夢のまほろば、大和(やまと)し美(うるわ)し-」(作・演出=生田大和) 舞台は飛鳥時代。僧旻(みん)の開いた学塾では、旻が唐から持ち帰った大陸文化・学問を、貴族の子弟が学んでいた。その中に、蘇我蝦夷の嫡子で後に大臣の位を継ぐ蘇我入鹿(華形ひかる)と、中臣鎌足(紅)がいた。鎌足はある日、朝廷に仕える与志古娘(よしこのいらつめ=綺咲愛里)と出会い、心を通わせる。だが、代々、神祇官を務める中臣氏では与志古と釣り合わないと突き放され、生まれに支配された人生を抜けだそうと闘う。中大兄皇子は瀬央ゆりあ。

☆紅(くれない)ゆずる 8月17日、大阪市生まれ。02年入団。星組一筋で、16年11月に同組トップ。17年1月「オーム・シャンティ・オーム」でトップ初主演。本拠地お披露目は「スカーレット・ピンパーネル」。昨春、落語「地獄八景亡者戯」題材の異色作に挑戦。同秋は第3回台湾公演に主演。身長173センチ。愛称「さゆみ」「さゆちゃん」「ゆずるん」「べに子」。

「宝塚~朗らかに~」はニッカンスポーツ・コムに連載中です。

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