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令和でも通用する藤田田氏の「ユダヤの商法」

孫正義氏、柳井正氏も読んだベストセラー『ユダヤの商法』が復刊。その中身とは。

山崎実 書籍編集者(ベストセラーズ書籍編集部)

2・読んだ後、「元気が出る」「ワクワクする」

拡大東京大学時代の田さん。この頃、ユダヤ人の下士官から「金儲けの商法」を学ぶ
 しかし、『ユダヤの商法』の最大の魅力は、やはり、その「中身」にあることは紛れもない事実だと思う。ただ、「ユダヤ」という「陰謀史観的なトンデモ商法」を期待した読者は裏切られるだろう。本書は、田さんが敗戦後、東大生の頃にバイトしたGHQで、進駐軍のユダヤ人下士官から「お金」に対する知恵を学んだ、どこまでも「藤田田の商売道」だからだ。

 まず、田さんの語り口は「大阪人」特有のリズムで面白い。ドライブ感が心地いい。

 次に、ネットでもいろいろ書かれているが、「商売人がやらなきゃならないことがすべて書いてある」という「商法」に対する評価と、読んだ後に「元気が出る」、「ワクワク」するなど、読者を「何らかの行動」に誘う内容になっていることが、受けている理由ではないかと思う。あの孫さん、柳井さんを「ワクワク」させた本だから、当然といえば当然ではあるが。

3・田さん商法の原理原則「仕事×時間=巨大な力」

 書籍編集者なら「誰でも知っている(あえて強調!)こと」ではあるが、逆説的に言えば、「経営者」の成功譚、自己啓発、情報商材のたぐいは、そもそも読者とは「生きる諸条件が異なる」ため、著者以外「応用できない」話がほとんどだ。つまり、出版社は巧妙に「無駄な読書」をさせているとも言える。

 わけても、人生経験が少なく、何の商売をしているのかわからない経営者の「金儲け本」は例外なくそう。はっきり言って、時間の無駄なのだ。

 これに対し、田さんの本は、3分の1は「時代錯誤」なものもある(認めます!)が、「3分の2」は今だに誰もが応用できるアイデアである。一言で言えば、「実行(仕事)し続ければいい」だ。別の言い方をすると、本人の努力次第、「継続する克己心」で何とかなるお話ばかり。で、それを「遵守」すれば、おおよそ成功できるような原理原則なのだ。

 田さんの「商法」の原理原則の第一は、たった一つの方程式(たぶん)。
「仕事×時間=巨大な力」
につきる。

 自身がなした40年間続けた10万円貯金(複利で2億円超!)も、1兆7千億円の資産も、田さんの「仕事×時間」すなわち努力の延長にある。「女と口を狙え!」「金持ちから流行らせろ!」「必ずメモを取れ」などのアジテーションは、「地味な努力」を背景とした「言葉」である。田さんの偽悪的で、露悪的な言葉の端々には、こうした「努力」が見え隠れする。

 そして、田さんはこうも語る。「金儲けなんか誰でもできる」と。

 そう、誰もが「やれば出来る」けど「やれない」97個の成功法則が、常に開かれて「ある」ことが、本書の要諦なのだ。それを、やり通した人が、孫さんや柳井さんのような大経営者になれることを担保されている「約束の書」。そんなイメージがこの本にはある。

 今の政治家がしたり顔で語る「働き方改革」を、田さんならどう思うだろうか。そんな「今」を比較しながら、仕事の意味を考えるとおもしろい。

1972年7月、マクドナルド銀座1号店をオープン。写真中央はマクドナルド創業者のレイ・クロック。その右が田さん。拡大1972年7月、マクドナルド銀座1号店をオープン。写真中央はマクドナルド創業者のレイ・クロック。その右が田さん。

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筆者

山崎実

山崎実(やまざき・みのる) 書籍編集者(ベストセラーズ書籍編集部)

1969年生まれ。早稲田大学商学部卒業。財界展望新社(現・『ZAITEN』編集部)、ナイタイ(『ナイタイマガジン』編集長)を経て、早大雄弁会時代の同級生の選挙を手伝い当選させたのち、2002年、KKベストセラーズ勤務。総合雑誌『CIRCUS』編集部、男性誌『ON.』編集長を経て、書籍編集部へ。「壇蜜写真集」から硬派な書籍など多数制作。今回、『ユダヤの商法』を含む藤田田6冊同時復刊プロジェクトチームの書籍編集統括を務める。