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読書人必読! PR誌の魅力とその特徴とは?

野上 暁 評論家・児童文学者

連載から生まれたベストセラーも

集英社の「青春と読書」拡大集英社「青春と読書」(左)と、岩波書店「図書」

 集英社の「青春と読書」は1966年9月創刊。同社は同年3月、「ジュニア小説」(春号)を季刊で創刊するなど、ジュニア小説ブームの真っただ中だったので、それが「青春と読書」という誌名にも反映したのだろう。当初不定期刊で本文32頁。無料配布だったが、現在は定価90円(本体83円)で、年間購読料900円(税、送料込)。最終ページに〈定期購読ご案内〉と振込用紙が挟み込まれている。中綴じ本文96頁の中央に別綴じで4頁分カラーが挟み込まれ、直近の4月号では北方謙三の『チンギス紀 四 遠雷』刊行記念の「ウズベキスタン取材記」が掲載されている。特集や巻頭インタビュー、対談やエッセイも、新刊書の紹介がらみの記事が多く、きわめてPR誌らしい構成だ。とはいえ、かつて椎名誠の『岳物語』に始まる人気小説シリーズの発表舞台であり、現在も「椎名誠のエンディングノートをめぐる旅」を連載中だ。他にも連載の単行本化は意外に多い。昨年(2018年)亡くなった、さくらももこの大ベストセラー『もものかんづめ』シリーズも同誌連載だった。

 新潮社の「波」は1967年の創刊で当初は季刊だった。69年に隔月刊になり、72年より月刊化。現在は中綴じで平月の総頁は128だが、企画に応じて中央に16頁をカラーなどで挟み込むこともあり、他誌に比べてボリュームがある。定価100円で、1年分送料込み1000円(ともに税込)。最終ページに〈読書人のための文藝情報誌「波」が毎月、確実にお手元に届きます!〉と、1ページを使って詳細な申し込み案内がある。表紙には本文で紹介する著者の写真と手書きのメッセージを配し、座談会やインタビューやコラムも含めて自社の新刊書に関連する記事が多い点は「青春と読書」に共通している。ページ数が多い分だけ連載も7~9本と多く、最近号では、ブレイディみかこ「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」、伊藤比呂美「URASHIMA」、保阪正康「昭和史の陰影」、川本三郎「荷風の昭和」など、なかなか充実している。同誌から生まれたベストセラーは、古いところでは井上ひさし『私家版 日本語文法』、山口瞳『居酒屋兆治』などたくさんある。

 筑摩書房の「ちくま」は1969年の創刊で、現在は本文64頁の後に新刊案内など16頁。定価は本体100円+税となっているが、年間購読料は1000円(税、送料込)。新刊関連書評が数本入るほか、連載が2019年4月号では12本と他誌に比べて多いのは、かつて同社から刊行されていた『展望』休刊後の、書籍コンテンツ源としての役割を担っているからなのだろう。それだけに多彩で読みごたえもある。

 斎藤美奈子「世の中ラボ」は既に108回の長期連載。時々の話題にあわせて関連する本を3冊紹介して読み比べるものだが、時として一般には知りにくい本の紹介もあって、ここで読んで購入した書籍がこれまで何冊もある。梨木香歩「風と双眼鏡、膝掛け毛布」、ほしおさなえ「東京のぼる坂くだる坂」、井上理津子「絶滅危惧個人商店」、猪木武徳「地霊を訪ねる」、ブレイディみかこ「ワイルドサイドをほっつき歩け――ハマータウンのおっさんたち」など、ちょっとひねったサブカルっぽさや路上観察学的要素もあって、いかにも筑摩書房らしい。岸本佐知子「ネにもつタイプ」の206回、穂村弘「絶叫委員会」の138回と長期連載のエッセイや、藤田貴大の小説「T/S」もある。鹿島茂の評論「吉本隆明2019」も3月号から始まっているが、鹿島は同誌に長期連載した『神田神保町書肆街考――世界遺産的“本の街”の誕生から現在まで』を一昨年(2017年)刊行し話題を呼んだ。昨春刊行された西加奈子『おまじない』、かつてベストセラーになった赤瀬川原平『老人力』も同誌から生まれた。web版(webちくま)も充実していて、連載のバックナンバーも見やすい。

筑摩書房の「ちくま」拡大筑摩書房「ちくま」(左)と新潮社「波」


筆者

野上 暁

野上 暁(のがみ・あきら) 評論家・児童文学者

1943年生まれ。本名、上野明雄。小学館で子ども雑誌、児童図書、文芸書、学術書などの編集部門を担当。著書に『おもちゃと遊び』(現代書館)、『「子ども」というリアル』『日本児童文学の現代へ』(ぱろる舎)、『子ども学 その源流へ』(大月書店)、『越境する児童文学』(長崎書店)など。編著に『わたしが子どものころ戦争があった――児童文学者が語る現代史』(理論社)、『子どもの本ハンドブック』(三省堂)、『いま子どもに読ませたい本』(七つ森書館)など。日本児童文学学会会員。日本ペンクラブ常務理事。