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松下優也&平間壮一インタビュー(上)

『黒白珠』、ちょっとした違和感を掴み取って

真名子陽子 ライター、エディター


拡大松下優也(右)と平間壮一=岩田えり撮影

 舞台『黒白珠』が6月7日からBunkamura シアターコクーンにて開幕します(23日まで。その後、全国ツアー公演あり)。青木豪さんの書き下ろしで河原雅彦さんが演出を担い、1990年代の長崎を舞台に双子の兄弟とその家族の逃れられない運命の物語を綴ります。

 双子役を演じる松下優也さん(兄・勇(いさむ)役)と平間壮一さん(弟・光(ひかり)役)にお話を伺いました。お稽古がはじまった頃のインタビューで、歌やダンスを封印したお二人の役作りの一端が垣間見られます。インタビュー前後のちょっとした時間にも、それぞれの役について話し込んでいたお二人。お稽古を重ねられる中でどんな勇と光を創り上げられるのか……本番が楽しみになるインタビューとなりました。

【ストーリー】
1990年代、長崎。信谷大地(風間杜夫)は、真珠の加工・販売会社を経営していた。長男の勇(松下優也)は高校卒業後、職を転々とし父を心配させていた。花苗(清水くるみ)という恋人がいる。大地は、大学へ進学のため東京へ出た双子の弟・光(平間壮一)に大きな期待を寄せていた。勇は、周囲から、叔父に似ていると度々言われることから、いつの頃からか自分の出自についてある疑念を抱き始める。勇と光は、母・純子(高橋惠子)のことをほとんど知らない。まだ二人が幼い頃に、母は信谷家を出て行き、その後の消息は聞かされていなかった――。
封印された家族の物語が、不協和音を立てながら動き出し、衝撃の真実を解き明かすパンドラの箱が、今開かれる。

黒と白を混ぜたグレーのような作品

拡大松下優也=岩田えり撮影

――既にお稽古に入っているとのことですが、どんな作品でしょうか?

平間:舞台を観るときって何かを掴もうとしがちだけど、掴めなくても良い舞台だと思って、今は稽古をしています。

――そう思われる理由は?

平間:なんだろう……裏にある人間らしい何かを、分かりやすく伝えようとしているわけではないんですよね。ちょっとした違和感を掴み取ってもらって、こういう生き方をしているとこんな風に人から見えるんだなということを感じてもらえたらいいかなと。僕の演じる光という人物がすごく普通なんです、一見。その普通をどう表現するかという部分と今、戦っています。

――松下さんはこの作品についていかがでしょう?

松下:『黒白珠』と言うタイトルのイメージと違って、ハッキリと見えないことが多いお話だなと思います。それぞれの心の底で思っていることはハッキリしているんですけど、観る方はそこまでわからないのでちょっとした違和感を覚えるんじゃないかなと思います。黒白ハッキリしていなくて、黒と白を混ぜたグレーのような作品だと思います。

――黒と白、相反する色の名前が付いているけれど……。

松下:そうなんです。良い人と悪い人が登場するといったわかりやすい設定ではないんです。黒と白の絵の具があって混ざるとグレーになるけれど、二度と黒と白には分かれないじゃないですか。そういう物語のような気がします。

平間:うん、グレーがわかりやすいかもしれない。

松下:チラシの背景もグレーだし(笑)。

勇には共感できるところがたくさんある

拡大平間壮一=岩田えり撮影

――グレーな物語の中で演じる難しさはないですか?

松下:死ぬほど難しいです(笑)。黒白ハッキリしていたら振り切ってできるけれど、グレーはそれができないので難しいですね。そして僕らがグレーで良いと思ってやるとお客さまは余計わからなくなってしまうので、その黒白ハッキリしないところをどう表現するかが難しいところです。

――なるほど。

松下:人間って自分のことをすべて理解している人って少ないと思うんですよね。潜在的な部分で動くことってあると思うんです。これが好き、あれは嫌いとハッキリしているものが潜在的にあって、それが自然と表面に出るじゃないかなと思うんです。僕が演じる勇も口には出さないけれど思っていることがあって、でもそう思っていること自体が明確じゃない。自分でも気づいていないことってみんなにもあると思うんです。その気づいていない感情を表現しないといけないのですごく難しいです。

――その勇役はどうですか?

松下:そうですね……勇には共感できるところがたくさんあります。青木さんがあて書きしてくださっている部分もあると思うんですけれども、自分が音楽や人前に立って何かを表現することを見つけていなかったら、勇みたいになっていてもおかしくないなと思います。そこに共感する部分がありますね。稽古しながらきっとこうなんじゃないかなって、少しずつ勇のことを理解してきています。

一番真っ白で普通でいなきゃいけない

拡大平間壮一=岩田えり撮影

――光役はいかがでしょう?

平間:自分の立ち位置、作品全体の中での立ち位置として、どういなきゃいけないんだろうと考えたときに、一番真っ白で普通でいなきゃいけないなと思いました。親の世代を演じる方々と子どもの世代を演じる僕たちとに大きく分かれているんですが、僕たち子ども世代の人たちは普通に生きているんです。でも親世代の人たち、お父さんや伯父さんは、過去に起こった出来事のためにどこか思いが通じ合わない。その違和感で光は成り立っていて、自分でも気づかないところで心が冷めてしまっている。でもその違和感はハッキリしたものではないんですよね。だから、自然体でいることが大事なんだなと思うと、自分自身もグレーでぼやっとしたものを理解しなきゃいけないと思いますし、それが光なんだなと思ってやっています。僕たちは結構難しいポジションにいると思いますね。

――確かに親世代に起こった出来事が子ども世代に密かに大きく影響しています。

平間:その親の下に生まれてしまったから、歯車がうまくかみ合わない関係性が築かれています。それを舞台として成立させるには、かみ合っていない歯車を、かみ合っていないことを表現しながらかみ合わせていかなきゃいけない……それが大変ですね。僕たち兄弟2人の物語だけではなく、家族の物語なんです。

◆公演詳細◆
舞台『黒白珠』
東京:2019年6月7日(金)~6月23日(日) Bunkamura シアターコクーン
兵庫:2019年6月28日(金)~6月30日(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
愛知:2019年7月6日(土)~7月7日(日) 刈谷市総合文化センター アイリス 大ホール
長崎:2019年7月10日(水) 長崎ブリックホール 大ホール
久留米:2019年7月13日(土)~7月14日(日) 久留米シティプラザ ザ・グランドホール
公式ホームページ
[スタッフ]
脚本:青木豪
演出:河原雅彦
出演:松下優也 平間壮一 清水くるみ 平田敦子 植本純米 青谷優衣 村井國夫 高橋惠子 風間杜夫
〈松下優也プロフィル〉
2008年にシングル「foolish foolish」でデビュー。2015年にX4結成。音楽活動のほか俳優としてもドラマ・映画・舞台と多方面で活躍中。最近の主な舞台出演は、新感線☆RS『メタルマクベス』disc1、『Romale』、『暁のヨナ』『花より男子』『黒執事』シリーズなど。3月27日アルバム『BLACK NEVERLAND』をリリース。2020年3月にミュージカル『サンセット大通り』への出演が決まっている。
松下優也オフィシャルサイト
〈平間壮一プロフィル〉
2007年に『FROGS』で初舞台を踏み、以降多くの舞台で活躍。主な舞台出演作に、『ロミオ&ジュリエット』、『ゴースト』『Indigo Tomato』劇団☆新感線『髑髏城の七人~season月~』地球ゴージャスプロデュース公演『The Love Bugs』『RENT』など。11月に舞台「Coloring Musical『Indigo Tomato』」再演、2020年6月にミュージカル『ヘアスプレー』への出演が決まっている。
平間壮一オフィシャルサイト

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筆者

真名子陽子

真名子陽子(まなご・ようこ) ライター、エディター

大阪生まれ。ファッションデザインの専門学校を卒業後、デザイナーやファッションショーの制作などを経て、好奇心の赴くままに職歴を重ね、現在の仕事に落ち着く。レシピ本や観光情報誌、学校案内パンフレットなどの編集に携わる一方、再びめぐりあった舞台のおもしろさを広く伝えるべく、文化・エンタメジャンルのスターファイルで、役者インタビューなどを執筆している。

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