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【公演評】雪組『壬生義士伝』

浅田次郎の人気小説を舞台化、望海風斗が新選組“影のヒーロー”吉村貫一郎に挑む

さかせがわ猫丸 フリーライター


拡大『壬生義士伝』公演から、吉村貫一郎役の望海風斗=岸隆子撮影

 雪組公演幕末ロマン『壬生義士伝』が、5月31日、宝塚大劇場で初日を迎えました。これまでドラマや映画にもなった浅田次郎さんの人気小説を、宝塚で初の舞台化となりましたが、トップスター望海風斗さん率いる雪組は伝統的に日本物を得意としていますので、まさに本領発揮といえるでしょう。

 望海さんは2018年、全国ツアー公演『誠の群像』で土方歳三を演じました。今回も新選組が舞台ですが、主人公となるのは吉村貫一郎。その名はあまり知られていませんが、英雄ではなく、新選組の“良心”と言える存在に描かれています。

 謙虚で朴訥、しかし剣の腕は一級品。愛する家族のため義に生きた貫一郎は、望海さんらしい優しさと力強さが溶け合うように活かされ、客席を涙で包み込みました。(以下、ネタバレがありますのでご注意下さい)

2役を演じ分ける真彩

拡大『壬生義士伝』公演から、吉村貫一郎役の望海風斗(左)としづ役の真彩希帆=岸隆子撮影

 時代は明治、鹿鳴館の華やかな舞台から幕が上がります。新たな時代を象徴するこの場で、新選組の元主治医だった軍医の松本良順(凪七瑠海)が、新選組の残党・斎藤一(朝美絢)と池波六三郎(縣千)、吉村の娘みつ(朝月希和)、吉村の親友、大野次郎右衛門の息子・千秋(綾凰華)らとともに、貫一郎の生涯を振り返ります。彼らは本編の要所で登場し、会話形式で解説を加えながらストーリーテラーの役割を果たしていました。

――幕末の動乱期。盛岡南部藩の足軽同心・吉村貫一郎(望海)は、剣の腕が立ち、学問も優秀な文武両道のもののふだった。妻しづ(真彩希帆)との間にみつ(少女・彩みちる)、嘉一郎(彩海せら)をもうけ、貧しいながらも幸せに暮らしていたが、ある日、貧困を苦にしづが無理心中を図ってしまう。貫一郎は家族を養うため脱藩し、腕に応じて俸給のある新選組への“出稼ぎ”を決意する。幼なじみの上級武士・大野次郎右衛門(彩風咲奈)は強く反対するが、揺るがぬ貫一郎に最後はこっそりと道中手形を渡すのだった。

 松本良順は激動の時代を、新選組とともに歩んできた人物です。今回、特別出演となる凪七さんは、歴史をその身に刻んできた深みを重厚に演じていました。2016年に専科へ移動し、星組、花組に続く特別出演となりましたが、常に高い演技力で舞台を引き締め、年長者の役をこなせる貫禄も備わってきました。

 凪七さんは89期生で、望海さんと同期競演となるのもみどころでしょう。明治時代にのみ登場するので、お芝居で望海さんとのからみはありませんが、ショーでは2人の空気感を味わえるシーンがたくさん用意されていますのでお楽しみに。

 トップ娘役の真彩さんが演じるのは、辛抱強くて心優しい妻しづです。子どもたちを必死で守りながら貫一郎を深く愛し続ける、当時の日本の女性像そのままのイメージでしょうか。脱藩者の家族として迫害され、京で稼いだ貫一郎からのお金ももぎとられ、ひたすら可哀想でやりきれません。透き通る美しい歌声がより切なく染みわたり、身を切られるよう。

 盛岡の描写は少ないため、真彩さんは両替商の娘みよも2役で務めています。こちらは裕福なお嬢様ですが、みよなりの貫一郎への愛をまっすぐに演じていました。

◆公演情報◆
かんぽ生命 ドリームシアター
幕末ロマン『壬生義士伝』~原作 浅田次郎「壬生義士伝」(文春文庫刊)~
ダイナミック・ショー『Music Revolution!』
2019年5月31日(金)~7月8日(月) 宝塚大劇場
2019年7月26日(金)~9月1日(日) 東京宝塚劇場
公式ホームページ
[スタッフ]
『壬生義士伝』
脚本・演出:石田昌也
『Music Revolution!』
作・演出:中村一徳

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筆者

さかせがわ猫丸

さかせがわ猫丸(さかせがわ・ねこまる) フリーライター

大阪府出身、兵庫県在住。全国紙の広告局に勤めた後、出産を機に退社。フリーランスとなり、ラジオ番組台本や、芸能・教育関係の新聞広告記事を担当。2009年4月からアサヒ・コム(朝日新聞デジタル)に「猫丸」名で宝塚歌劇の記事を執筆。ペンネームは、猫をこよなく愛することから。

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