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図書館の本やブラックホールの撮影は役に立つの?

堀 由紀子 編集者・KADOKAWA

ブラックホール撮影成功の記者会見で

 ここで話が飛ぶ。

 4月10日、共同プロジェクト「イベント・ホライズン・テレスコープ」が、5500万光年かなたにあるM87銀河にあるブラックホールの撮影に成功した。黒い楕円の周りを光り輝くリングが囲んでいる。

M87銀河のブラックホールの画像
(C)EHT collaboration 拡大M87銀河のブラックホールの画像 (C)EHT collaboration

 このニュースを聞き、以前読んだ『巨大ブラックホールの謎――宇宙最大の「時空の穴」に迫る』(講談社ブルーバックス)を思い出した。この本は、ブラックホールの中でも特に銀河中心にある巨大ブラックホールに着目し、その不思議さを紹介していくという内容。巨大といってもあまりにも巨大すぎて想像を絶するのだが、太陽の10億倍もあるという。巨大ブラックホールは宇宙の誕生とも深くかかわっていると聞けば、がぜん興味をひかれる。

 本書では、1916年のアインシュタインによる一般相対性理論の発表以降、さまざまな人がブラックホールをとらえるべく、昼夜を分かたず努力してきたお話も紹介されている。自分でパラボラアンテナを作ってしまった研究者、電波の異常を調べていたら星のシグナルをとらえた技術者など、偶然や努力の積み重ねで科学は進歩してきたことがわかる。

 その本の著者、もしかしてこの発表している人では……!

 「これが、人類が初めて目にしたブラックホールの姿です」

 記者会見でこう述べたのは、やはり著者の本間希樹さんだった。約100年前、アインシュタインの一般相対性理論の中で存在が予言されていながらも、これまでだれもその姿を見たことがなかったブラックホールがついにその姿を現したというのだ。

 そういえば本の最後の章に、これから撮影がスタートするというようなことが書いてあった。改めて読み直してみれば、きちんとイベント・ホラインズン・テレスコープのことも書いてあった(すっかり忘れていた)。

 さて撮影成功のときの会見で、こんなやり取りがあった。

 ――この発見は、我々の普段の暮らしにどのような影響がありますか。

 「直接には……ありません。でも改めて我々の天の川銀河の中心にもブラックホールがあるという確信にもつながりました。ブラックホールと銀河の成りたちは非常に関係が深いので、天の川銀河がどのようにできてどうなるのか、ということもわかってくるのだと思います」

 質問した記者は、この回答では納得しなかったかもしれない。うがった見方なのかもしれないが、この質問は、ブラックホールがあるとわかって生活になにか変化があるのか、この撮影成功は社会にどのように役立っていくのか、とたずねているようにも聞こえた。


筆者

堀 由紀子

堀 由紀子(ほり・ゆきこ) 編集者・KADOKAWA

1975年、山梨県生まれ。1999年より角川書店で、主婦向けのテレビ誌「しってる?」、スポーツ誌「SPORT Yeah!」、都市情報誌「横浜ウォーカー」の編集に携わる。2012年より書籍編集に。担当した書籍は、柳田国男復刊シリーズ(角川ソフィア文庫)、黒田勝弘『隣国への足跡』、望月衣塑子『武器輸出と日本企業』、室井尚『文系学部解体』、柴田一成『とんでもなくおもしろい宇宙』など。ハードボイルド小説と自然科学系の本が好き。