
日本語などの研修を受けるベトナム人の技能実習生たち=2018年8月、大阪市中央区
本年4月、改正出入国管理法が施行され、技能実習生の場合と質の異なる在留資格「特定技能」が導入された。今後5年間で34.5万人を受け入れる予定だというが、従来の技能実習生および留学生(あるいは出稼ぎ留学生)の受け入れも、さらに進むであろう。
少子高齢化と本格的な「移民」受け入れ
背景にあるのは少子高齢化である。このために生じる人手不足を補うために、いま日本はさらに国境を開いて、外国人の受け入れを深刻に考えるべき時期にきたようである。要するに、外国人を一時的な「労働力」としてではなく、本格的な「移民」として受け入れざるをえなくなっている。現時点では在留期間は最大5年(ただし技能実習から特定技能労働に移った場合は最大10年)だが、それが実際にあるいは実質的に撤廃されるのは、時間の問題であろう。
これまで日本では、欧州等の移民問題を対岸の炎のごとくに眺めてきたが、もはやそれは過去の話である。これら地域の経験に学びつつ、日本語教育・生活支援・企業監督等の制度が整えられなければならないが、私はここで日本語について論じたい。
なお以下、本稿の趣旨からすれば、本稿自体をなるべく漢字を使わず、和語・カナを多く使い、できれば「分かち書き」(後述)で記すべきだが、字数等の制約もありそれができなかったことを、最初におことわりする。
外国人のための日本語
日本で働く外国人にとって、日本語能力は決定的に重要である。職場ではもちろん、家族をふくめ(特定技能2号の場合は家族を帯同できる)、日本人にまじって日本人とともに日常生活を送るさいにも、そうである。
彼らが日常生活において、日本語の不自由さゆえに生活に困難をきたし、あるいは地域・社会から孤立し、ひいては各種問題・犯罪にまきこまれる(時にそれらをひき起こす)事態におちいることは、当人のためにも周囲の日本人のためにも、ぜひとも避けなければならない。
移民を多く受け入れてきた欧州等の経験にてらせば、日本語学習の機会を無償ないしそれに近い条件で提供する施設が必要となるが、ここで問題は日本語のあり方そのものである。
外国人にとって日本語は、他に例がないほどむずかしいという。日常生活にあって日常的な話題について聞いて理解することに主眼をおけば、これを強調する必要はない。だが今日、たんに聞くだけでは生活はなりたたない。
外国人に課される「日本語能力試験」の水準は5段階あるが(N1~N5)、技能実習生の場合でもN4以上が、つまり――読むことに関して言えば――最低でも日常生活の身近な話題に関する文の理解が求められる。特定技能で在留資格をえるためには、N3、つまり新聞の見出しなどから情報の概要をつかむ日本語力が、求められている。
だが、新聞の見出しが分かる水準を求めるのは、かなり苛酷である。例えば2019年5月25日付朝日新聞第1面の見出しには、こうある。
「英メイ首相 辞意表明」「EU離脱巡る混乱引責」
N4レベルさえ簡単とは言えないが、新聞等から日常生活と離れた抽象度のたかい情報をえることは、非常にむずかしい。日本語を外国人にいかに分かりやすくするかという発想のない状況下では、「特定技能」をもとうが、来日できる外国人はおのずと制限されてしまうだろう。