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「漢字」という移民社会・日本にたちはだかる宿弊

杉田聡 帯広畜産大学名誉教授(哲学・思想史)

日本語には、ひらがな・カタカナに加えて、2000を超える漢字がある Emir Simsek/shutterstock.com拡大日本語には、ひらがな・カタカナに加えて、2000を超える漢字がある Photo: Emir Simsek/Shutterstock.com

日本語の改良を

 読解をむずかしくしているのは、漢字である。

 いま日本では、おそらく2500ちかい漢字を日常生活で目にする。常用漢字だけで2136字もあり、他に常用漢字外の少なくない字が使われ、さらに人名漢字(これには旧字体も多い)が加わる。最近はパソコンの普及にともなって、これまでならカナ書き――以下「カナ」はひらがな・カタカナ両者をふくむ――されていた漢字が、平然と使われるようになっている。

 さらに音読み漢字が単語・熟語に多用されて同音異義語が増えすぎて、耳で聞いただけでは、日本人にさえ意味が通じない。また送りガナの正書法が確立していない(「振り込み」「振込み」「振込」等)。しかも、漢字とカナの「まぜ書き」も見られる(例えば「混とん」;ただしこれは後述するように漢字問題の改善にも資する)。

 おまけに――漢字の問題をはなれるが――日本語には強固な敬語の体系があり、これは日本人でもまともに使えない(使えなければ上下関係を無視したと見なされ、しばしば感情的な反発をまねく)。一方、人称代名詞、特に2人称代名詞は一般には使われず、相手をさす「対称詞」(鈴木孝夫『ことばと文化』岩波新書、146頁)の用法は、敬語ともからんで複雑である。また男女のことばに違いが大きい。

 以上を考えると(詳しくは後述する)、「移民社会」を目前にした今、外国人がいくらかでも楽に使えるように日本語の改良が不可欠である。こう言えば、外国人のために、あるいは外国人によって「改良」された日本語は正統日本語ではなく、くずれた日本語、おぞましい日本語だといった反応が聞こえてきそうだが、決してそうではない。

外国人が日本語をより豊かにする

 日本でも、「移民」受け入れまで含む国際化が進み、日本語が「国際語」として使われる時代にあっては

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筆者

杉田聡

杉田聡(すぎた・さとし) 帯広畜産大学名誉教授(哲学・思想史)

1953年生まれ。帯広畜産大学名誉教授(哲学・思想史)。著書に、『福沢諭吉と帝国主義イデオロギー』(花伝社)、『逃げられない性犯罪被害者——無謀な最高裁判決』(編著、青弓社)、『レイプの政治学——レイプ神話と「性=人格原則」』(明石書店)、『AV神話——アダルトビデオをまねてはいけない』(大月書店)、『男権主義的セクシュアリティ——ポルノ・買売春擁護論批判』(青木書店)、『天は人の下に人を造る——「福沢諭吉神話」を超えて』(インパクト出版会)、『カント哲学と現代——疎外・啓蒙・正義・環境・ジェンダー』(行路社)、『「3・11」後の技術と人間——技術的理性への問い』(世界思想社)、『「買い物難民」をなくせ!——消える商店街、孤立する高齢者』(中公新書ラクレ)、など。

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