
こどもの日、選手名がひらがなで表示された球場のスコアボード。東京オリンピックではどうする?=2018年5月5日、ヤフオクドーム
抽象語もカナで書ける
カナ書きはもっと一般化できる。
そもそも和語では、抽象語をなかなかつくれない。だが、漢語による抽象語もそのままカナ書きできるものも少なくない。
例えば「意味」。厚労省『介護日本語評価試験』では、設問を「……おなじ いみのものは どれですか。」と表記しているが(朝日新聞2019年3月30日付)、同音異義語がない、もしくは少ない単語は、カナ書きで十分である。しかも「意」「味」のそれぞれの意味を知っても、「意味」の理解にはほとんど寄与しない。
また井上ひさしは抽象語として「会社」「制度」をあげたが(井上他『日本語よ、どこへ行く』岩波書店、22頁)、いずれも「かいしゃ」「せいど」とカナ書きできる(「かいしゃ」は下位者・膾炙ともとれるが抑揚はすべて異なる)。ここでも、「会」と「社」、「制」と「度」それぞれの意味を明らかにしたからといって、「会社」「制度」の理解に、ほとんどえるものはない。前記の「憂うつ」「混とん」「範ちゅう」もまた、そうである。
ただし同音異義語がたくさんある場合はおのずとカナ書きに限度があるが、文脈によって明らかとなる場合も少なくない。「漢字」「感じ」「幹事」は同音だが(ただし「幹事」は前2者と抑揚が異なる)、間違えるおそれはおそらくほとんどない。
分かち書き
「いっぽうわごをかなだけでかいたばあい、」――「 」に入れた左の文に見るように――現状ではひどく分かりにくいものになる。それを避けるために、「分かち書き」を採用したい。
私の知るかぎり、数ある世界の言語のなかで分かち書きをしないのは、中国語・タイ語をのぞけば日本語だけである。だが、上の文をひらがなで書いたとしても、次のように
・・・
ログインして読む
(残り:約2238文字/本文:約4396文字)