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ルノー・カピュソンと弟ゴーティエの愉快な関係

秘話で綴るクラシック演奏家の素顔(2)性格の違いが音楽の違いを生み出す

伊熊よし子 音楽ジャーナリスト・音楽評論家

いつも音楽が流れていた家で

 ルノーとゴーティエは5歳違い。ルノーの5歳上に姉のオードがいて、彼女は長年ピアノを勉強していたが、現在は音楽家ではなく他の仕事に就いている。ただし、「インヴェンションズ ヴァイオリンとチェロのデュオ・アルバム」(ワーナー)と題した録音では、最後の1曲、クライスラーの「ウィーン風小行進曲」でピアノを担当している。ゴーティエがいう。

 「両親は音楽家ではないけど大の音楽好きで、家にはいつも音楽が流れていて、僕は4歳半でチェロを始めた。ルノーが弾いていたからヴァイオリンは大嫌いだったし(笑)、ピアノはお姉ちゃんにとられた。それで小さなチェロに出合ったんだけど、これに一目ぼれ。まさしく自分の楽器だと思ったわけ。9歳から10歳くらいのころかな、漠然とだけどチェリストになりたいと感じていたよ」

 彼とは異なり、ルノーは7歳のときに、自分はヴァイオリニストになると自覚した。

 「5歳のころにヴァイオリンのCDを買ってもらって、それがオーギュスタン・デュメイの録音だった。その数日後に、両親がデュメイのリサイタルを聴きに連れて行ってくれ、僕はデュメイの音に恋をしたんだ。それから実際に彼からいろいろアドヴァイスをもらうようになったんだけど、僕はすごくちっちゃくて、デュメイは190センチくらいあるから、いつも上を向いて話を聞いていて首が痛かったなあ(笑)」

スターンが弾いていたヴァイオリンと出会い

拡大ルノー・カピュソン© Simon Fowler
 ルノーはデュメイが以前使っていた1721年製ストラディヴァリウスを弾いていたが、現在はスイス銀行から貸与された1737年製グァルネリ・デル・ジェス「パネット」を使っている。これは50年間、アイザック・スターンが弾いていた楽器だ。

 実は、この楽器を貸与されるときに、ユーディ・メニューインが弾いていた楽器もあった。だが、それは選ばなかった。

 「楽器との出合いはタイミングもあると思う。このグァルネリは男性的で野性的で、奥深い音色が持ち味。その5年前に出合っていたら、選ばなかったかもしれない。自分の成長がちょうどこの楽器に合っていた時期に出合うことができ、それをすぐに選ぶことになった。まさにタイミングだね」

 レナード・バーンスタインはスターンのために「セレナード」を作曲して献呈し、スターンはこの楽器で初演を行っている。ルノーはこの楽器を手にした瞬間から、「セレナード」をいつか弾きたいと願うようになった。

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筆者

伊熊よし子

伊熊よし子(いくま・よしこ) 音楽ジャーナリスト・音楽評論家

東京音楽大学卒業。レコード会社勤務、ピアノ専門誌「ショパン」編集長を経て、1989年フリーに。クラシック音楽をより幅広い人々に聴いてほしいとの考えから、音楽専門誌だけでなく、新聞、一般誌、情報誌、WEBなどにも記事を執筆。アーティストのインタビューの仕事も多い。近著に『35人の演奏家が語るクラシックの極意』(学研プラス)。その他、『クラシック貴人変人』(エー・ジー出版)、『北欧の音の詩人 グリーグを愛す』(ショパン)、『図説 ショパン〈ふくろうの本〉』(河出書房新社)、『伊熊よし子のおいしい音楽案内―パリに魅せられ、グラナダに酔う』(PHP新書)、『クラシックはおいしい アーティスト・レシピ』(芸術新聞社)、『たどりつく力 フジコ・ヘミング』(幻冬舎)など著書多数。http://yoshikoikuma.jp/

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