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吉開菜央監督に聞く、作品を「黒塗り」した理由

日本で規制された『Grand Bouquet』の完全版がカンヌで上映

林瑞絵 フリーライター、映画ジャーナリスト

「劇場で流せることの貴重さを感じました」

撮影筆者
くらいで大丈夫です。

写真キャプション案は、

カンヌでプレミア上映を迎えた吉開菜央監督
拡大吉開菜央監督=カンヌで 撮影・筆者
――監督週間へのご出品おめでとうございます。先ほど上映がありましたが、ご感想をお聞かせください。

吉開 ありがとうございます。見ている時は緊張が大きく、皆の反応がすごく気になりましたが、最後の方になったらようやく映像に集中できました。やっぱりすごく大きなスクリーン、サウンドだったのでいいなと。劇場で流せることの貴重さを、身に染みて感じていました。

――黒塗りなしでは世界初上映ですね。ただ、こちらの作品は当初は触覚映画(体に振動を与える触覚デバイスを装着し鑑賞する作品)として作られたと聞きます。今回はデバイスなしなので、その意味ではまだ監督が完全に望まれる形の上映ではないのでしょうか?

吉開 いえ、映画館で上映されたのは映画館バージョンとしての完全版でした。今回、映画館用に音を5.1ch(ドルビーデジタル/DTS)で作り直したのもあって、触覚デバイスの振動なしでもすごく楽しめたし、想像力で補う触感に満ち溢れているように思いました。

――一番前で見ていたのですが、すごく振動を感じました。冒頭シーンは震えが伝わるほどの迫力で。

吉開 サブウーファー(低音域専用スピーカー)で低音を利かせているので、床が振動していたと思います。

――世界にはいろんな映画祭がありますが、監督週間はご存知でしたか? どういう感じのところとか。

吉開 そもそも(カンヌ映画祭の中でセクションが)分かれているのを知らなかったし、監督週間があるとは知っていましたが、(カンヌ公式ではなく外部の)別の組織が開催しているというのも知らなかったです。

――歴史的にも作家性を重視して、攻めてる作品を好んで上映してきたセクションです。そこをわざわざ狙ったのかなと思ったのですが。

吉開 配給会社の方からは、「去年までのディレクターだとたぶん難しかったけど、今年からは新しいディレクターに変わって、よりアーティスティックな作品を好んで選ぶと思うから狙っていきましょう」と言われました。

――それは良いアドバイスをいただけましたね。新ディレクターのパウロ・モレッティとはお会いしましたか? 選んだ理由などは聞かれましたか?

吉開 お会いしました。挨拶をして、「ブリリアント(素晴らしい)」みたいな感じでは言われました。でも短い時間だったので、「あとで話そう」と言われただけです。お話は聞いてみたいですね。(追記 この後モレッティから直接以下のコメントをもらえたとのこと)

監督週間ディレクター、パウロ・モレッティのコメント
 短編を撮るのは若い監督で、みな成長すると長編を撮るというイメージがありますが、私はそれは違うと思っています。短編の20分程度の長さに創造性を凝縮させて、密度を高めることで、それは一つの長編と全く同じ価値を持つ作品になります。菜央の作品も、たくさんのアイデアが盛り込まれていて、高い密度で創造性が凝縮されていました。それはまさにこの短編のプログラムで私が見せたかったことと同じでした。

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筆者

林瑞絵

林瑞絵(はやし・みずえ) フリーライター、映画ジャーナリスト

フリーライター、映画ジャーナリスト。1972年、札幌市生まれ。大学卒業後、映画宣伝業を経て渡仏。現在はパリに在住し、映画、子育て、旅行、フランスの文化・社会一般について執筆する。著書に『フランス映画どこへ行く――ヌーヴェル・ヴァーグから遠く離れて』(花伝社/「キネマ旬報映画本大賞2011」で第7位)、『パリの子育て・親育て』(花伝社)がある。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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