林瑞絵(はやし・みずえ) フリーライター、映画ジャーナリスト
フリーライター、映画ジャーナリスト。1972年、札幌市生まれ。大学卒業後、映画宣伝業を経て渡仏。現在はパリに在住し、映画、子育て、旅行、フランスの文化・社会一般について執筆する。著書に『フランス映画どこへ行く――ヌーヴェル・ヴァーグから遠く離れて』(花伝社/「キネマ旬報映画本大賞2011」で第7位)、『パリの子育て・親育て』(花伝社)がある。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
「戦わない方が得」というマインドの人が「賢い大人」とされてきた
――今回の規制は美術界ではどういう反応ですか?
吉開 それもすごい不思議で。企業のイメージアップになりやすいコマーシャル性の強いアートに携わるような人からは、「ま、よくあることだから」と言われて。「そういうのも大丈夫になるくらいビッグになるべき」みたいな(笑)。もちろんどんな展示にもお金の問題はつきものですが、それでもコマーシャルではないアートの志や必要性を理解し、作品に向き合うキューレーターや作家さんたちはすごく一緒に怒ってもらえて。「声を上げるべきだよ」と言ってくれたり。
――そのような方は少数派でしたか?
吉開 半々くらいでした。本当にこんなに「アリ」な人も、「ナシ」な人もいるんだと。なんにも言わない人ももちろんいましたけど。
――私は朝日の記事でこの件を知ったのですが、それこそ美術業界の人が「自分の問題」だと思って追ってくれないのかと思ったのですが。
吉開 一回、美術手帖さんが取材してくれて、「記事にしていいですか」と連絡をくださったんですがどうなったんだろう(追記 カンヌ映画祭後に掲載)。今回の件をホームページに書いたのですが、身内のスタッフからも「それ(を書くの)は良くない」という感じで言われたり。日本は企業が入ってスポンサーをしたり、展示費用を出したりしたら「そういうのはしょうがないのだ」と。「お金を出す人の言うことを尊重するのが一番だ」と。
(追記 5月26日に美術評論家連盟は、「ICC出品作の改変に関する公開質問状」を提出。「われわれは、吉開菜央さんの当該作品は、当然ながらすべての著作物と同じく、同一性保持権を有する自律した芸術作品であり、その内容に対する外部からの検閲、変更や干渉は、著作権及び表現の自律性への侵害ないし損傷にあたると考えます」と疑問を呈した。その後、6月13日にNTT東日本広報室とICCの連名で公開質問状に対し回答があった。「不本意な調整をお詫び」するとともに、「関係者が連携して意思の疎通を図りながら作品制作にあたれるように環境整備と再発防止に努める」とした)
――去年の『万引き家族』の論争にも繋がります。「政府が助成金を出してるんだから、(格差社会、貧困など)日本の悪口は一切言うな」と。でも
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