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三原じゅん子や「会食」で思う安倍一強の楽チンさ

矢部万紀子 コラムニスト

オフィシャルブログ拡大「恥を知りなさい」などと野党を批判した三原じゅん子参院議員=オフィシャルブログより

 自己肯定感という言葉をよく聞くようになった。そういうものを持ちにくい世の中、という文脈でよく聞く。このことについて考えることは今の日本を考えることだと思うから、政治家のみなさまにもぜひ取り組んでいただきたい。と思うけれど、それは無理な相談だなあ、と思う。

 以上、三原じゅん子さんについて書くための導入である。

 今、日本で一番自己肯定感にあふれているのは、彼女だと思う。6月24日の参院本会議以来、肯定感は上がりまくりなはずだ。

 その日のニュースでバンバン取り上げられた、安倍首相問責決議案反対討論。その全文を知りたいとネットの世界を漂ったら、ご本人のオフィシャルブログの上にあった。24日17時11分39秒とあるから、たぶん演説終了後、ほどなくアップしたのだと思う。

 ツイッターは【拡散希望】で動画を貼り付け、「#三原じゅん子」と「#恥を知りなさい」とつけていた。キメ台詞を承知の上で、知らせたい気満々な三原さん。

 ツイッター上には「#三原じゅん子、恥を知りなさい」なんていうコメントもあったけれど、「ハンパないど迫力」的なコメントもたくさんあったから、どっちにしろご本人はご機嫌に違いない。連日、ツイッター&ブログで、ぐいぐい活動を報告している。

 ちなみに三原さんのブログは、「三原じゅん子の【夢前案内人】」という名前だ。「ゆめさき案内人」と読ませるのだろう。山口百恵さんの「夢先案内人」からとったと思う。三原さんは百恵さんが引退した1980年に「セクシー・ナイト」でデビューした歌手でもあり、時代を代表する大先輩の名曲からもらったのだと思う。心情はわからなくもないが、釈然としない。百恵ファンの私。

三原じゅん子さんのマックスな自己肯定感

 三原さんの反対討論に話を戻し、【夢前案内人】から引用させてもらう。

 「恥を知りなさい」のほかにも、数々の表現で野党を叱りつけている。「猛省を促します」は最初の方に、「自分の胸に、よく手をあてていただきたい」が最後の方に出てくる。自分はどちらも、たぶん一生使わないだろうと思う。根っから小心者なので、誰かを攻撃すればそれがブーメランのように返ってくると思ってしまうのだ。

 と「ブーメラン」という単語が浮かんだのは、「ラップのような」と評された三原さんの反対討論の一節が頭に残っていたからだ。

 「所属政党コロコロ変える。対案なしで何でも反対。やることすべてがブーメラン。もう悪夢は絶対見たくない」

 この「ブーメラン」は一体どういう意味だろう? 「悪夢」は安倍さんの十八番、「悪夢のような民主党政権時代」だとわかるのだけど。

 三原さん、自画自賛部分になると、ラップ以上に滑らかだ。

 「私たち自民党・公明党、そして安倍政権は」、具体的な政策で対応すると言った。そしていろいろな数字を上げてみせ、「安倍総理に、感謝こそすれ、問責決議案を提出するなど、まったくの常識はずれ、愚か者の所業とのそしりは免れません!」となって、「恥を知りなさい」に至る(「!」も【夢前案内人】通り)。

 全文を読んでしみじみ思う。これは完全に「うっとりするヤツ」だよなあー。

 「安倍内閣(or政権)は」「アベノミクスの」と連呼する。「安倍総理は」に至っては、「昨年一年間で、国会に270時間以上出席されました」と敬語を使っている。身内に敬語は使わないという日本語のイロハも吹っ飛ばす、ダダ漏れの安倍礼賛。

 自分が、その人の率いる党の一員であること。その人から選ばれて反対討論をしていること。彼から重用されているという事実。それらの喜びにうち震え、そんな自分にうっとりする。こうして、三原さんのマックスな自己肯定感の出来上がり。

 と、この構図、デジャブである。自民党の参議院議員・丸川珠代さんに同じことを感じたのは、2018年3月27日だった。その日、丸川さんは参院予算委員会の証人喚問で質問に立った。相手は佐川宣寿・前国税庁長官(当時、前財務省理財局長)。森友学園の国有地取引で、決済文書を財務省が改ざんした。当時の責任者に喚問をする。その重大な場面で、丸川さん、こう聞いた。

 「佐川さん、あるいは理財局に対し、安倍総理からの指示はありませんでしたね」

 次はこうだった。

 「安倍総理夫人からの指示もありませんでしたね」

 ずっとこの調子。質問でなく確認。答えは全て「ございませんでした」。当然だ。

 こんな茶番なのに、丸川さん自信満々だった。元アナウンサーらしい抑えめのトーンで、ゆっくりと聞く。折々にはさむ「ため」。なんというか、全能感に満ちていた。

 彼女の全能感って、どこから来るのだろうと考えた。彼女がヘビロテで使った表現「私たち与党」が源泉だと思った。「与党」の一員である自分、証人喚問の質問者に選ばれた自分。力ある党に選ばれし私。私の実力。自己肯定感から来る全能感。

 三原さんは全能感より攻撃力が目立ったが、それは単に芸風の違いに過ぎないと思う。同じ心理でなければ誰かに対し、「恥を知れ」などと言えるものじゃない。私は小心者だから、とはここでは書かないでおく。

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筆者

矢部万紀子

矢部万紀子(やべ・まきこ) コラムニスト

1961年生まれ。83年、朝日新聞社に入社。宇都宮支局、学芸部を経て、週刊誌「アエラ」の創刊メンバーに。その後、経済部、「週刊朝日」などで記者をし、「週刊朝日」副編集長、「アエラ」編集長代理、書籍編集部長などをつとめる。「週刊朝日」時代に担当したコラムが松本人志著『遺書』『松本』となり、ミリオンセラーになる。2011年4月、いきいき株式会社(現「株式会社ハルメク」)に入社、同年6月から2017年7月まで、50代からの女性のための月刊生活情報誌「いきいき」(現「ハルメク」)編集長をつとめた後、退社、フリーランスに。著書に『美智子さまという奇跡』(幻冬舎新書)、『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』(ちくま新書)。

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