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仲原裕之&若林健吾&宮崎卓真インタビュー/上

『TAMAGOYAKI』、自分に置き換えて共感できるのでは?

真名子陽子 ライター、エディター


拡大左から、若林健吾、仲原裕之、宮崎卓真=岩田えり 撮影

 7月13日から中野ウエストエンドスタジオで、スタジオライフ公演『TAMAGOYAKI』が上演されます(7月28日まで)。スタジオライフの演出家・倉田淳さんのオリジナル作品で、1990年に初演されその後再演を重ね、今回11年ぶりに上演します。

【ストーリー】
何の夢も希望もない生活を送るキャバレーの従業員、時男(トキオ)、翔(カケル)、蟻巣(アリス)。パワハラ店長に怒鳴られ蹴られながら、しがない日々を過ごしている。そんなある日、客引きのノルマを果たすべく引き入れたのはタイムマシンを開発した物理学者の博士だった。人生初のキャバレー体験で酒に酔った博士はテーブルをひっくり返し、グラスや皿は砕け飛び、店内はメチャクチャに。客引きの責任として弁償金を押し付けられた三人は、博士の提案に乗り、現状から逃げ出すためにタイムスリップを決意する。そして小学生時代へと辿り着き、その頃の自分と出逢う。懐かしく幸せな時を過ごす三人は、やがて思い出したくない記憶の奥に閉じ込めていたはずの出来事に再び出会い、彼等は時空間の歪みへと迷い込む……。

 時男役を演じる仲原裕之さん、翔役を演じる若林健吾さん、蟻巣役を演じる宮崎卓真(客演)にお話を伺いました。作品への思いや物語にちなんでタイムマシンに乗れたら?という質問も。観る作品を選ぶポイントや仲原さんが掲げる裏目標、何度も客演している宮崎さんから見たスタジオライフとは?など、幅広いお話を伺うことができました。

『TAMAGOYAKI』に出演して自分の意識が変わった

拡大仲原裕之=岩田えり 撮影

――仲原さんは11年前にも今回と同じ時男役で出演されていたんですよね。11年ぶりに同じ役を演じるというのはいかがでしょう?

仲原:やばいですよね(笑)。やはり最初は不安でした。単純に若さってすごく大事な要素だと思うんです。やはりキャリアを重ねることでいろんなものが付いてきてしまうので、そういう意味で自分にできるのかなとすごく不安でした。でも稽古に入って感じたのは、今の年齢の感覚をどう合わせていくかだなと。ただそれは一朝一夕にいかないので、1日1歳ずつ若返っていったらいいかなと思っています(笑)。年を重ねることによっていろんなことがわかってくるじゃないですか。そこに役とのズレが出てしまうので、そういうところを埋めて感覚を戻していきたいです。反対に今だからできることもあると思うんですよね。あの時やれなかったことが今だったらできるかもしれないし、そのバランスの良いところを11年ぶりにやる時男役に反映できたらいいなと思って稽古しています。

――確かに年を重ねたからわかることってありますね。

仲原:無我夢中にやっていたことが時男に合っていたんだろうなと思います。だからといってあの頃と同じようにやってしまうと、決して同じにはならないんですけども、この11年何だったのっていう話になります。良いバランスを探りながら役として板の上に立って、プラス 11年の人生が少し垣間見ることができたらいいなと思いますね。

――若林さんと宮崎さんは初めて出演されます。まず、この作品はどんな作品なんでしょうか?

若林:これまで3、4本ぐらい倉田さんのオリジナル作品に出させてもらっているんですが、若手公演でしたので確実に成長しなきゃ、何かものにしなきゃという思いで取り組んでいました。今もまだ若手ですが8年目になりますし、今回は若手公演ではなく本公演としてやらせてもらいます。これまでの目線で見た『TAMAGOYAKI』は、倉田さんにがむしゃらにぶつかっていく作品というイメージでしたが、今回、大先輩の仲原さんと同期と言ってもいい卓真くんと一緒にやらせてもらうことで、作品の向き合い方を今までと変えないといけないなと感じます。仲原さんも言ったように、これまでと同じことをやってしまうと何やってたのとなるので。今まではむしゃらにやるしかなかったのですが、もちろんがむしゃらにやるんですけれども、倉田さんの作品をやらせてもらった経験を反映させないとダメだなと思いますし、今の僕にとって新しい挑戦をさせていただける作品です。

宮崎:物語を読んだときにいろいろ胸に刺さったんです。過去の自分と対峙するという大きなテーマがあるんですけれども、対峙したくない自分と対峙せざるを得ない。誰もが根っこに振り返りたくない過去はあると思うんですね。それをちゃんと受け入れて自分の中で咀嚼して、それも自分なんだと認めて前へ進んでいく……そういう話だと思っています。回り道のように見えることが実は近道だったなんてことを聞きますが、今を一生懸命に生き過ぎるあまり、それまでたどってきた道を振り返らずに目の前だけを見ていると、前へ進めなくなってしまうのかなあ、なんて思いました。すごく自分にもリンクしましたし、観る方も自分に置き換えて共感できるようなお話なんじゃないかなと思います。

拡大宮崎卓真=岩田えり 撮影

――仲原さんはどんな作品だと思いますか?

仲原:そうですね……スイッチかな。日常で過去の自分と向き合うことってなかなかないんですよね。忘れていることもあるし、なかったことにしたいこともある。でもずっと持っているものなので、それを動かして自分の中に落とさないと前へ進めない人もいると思うんです。物語の僕たちはタイムマシンに乗って、過去の自分たちが抱えていたキツイものと向き合うんですけれども、その止まった時を動かすスイッチですね。次へ向かっていくスイッチというか……。11年前、『TAMAGOYAKI』に出演して自分の意識が変わったという記憶があるんです。いろんなことを吸収できましたし考え方も変わりました。ちょっとカベにぶつかった時にこの作品を思い出したり、自信というか拠り所というか、僕にとってこの作品はそういう作品なんです。俺の思いとしては、劇団にとって、みんなにとってそれぞれのスイッチになったらいいなって思います。

――『TAMAGOYAKI』というフレーズがとても可愛い印象を受けたので、どういう物語なんだろうと思っていました。

宮崎:3人で話をしたときにいろんな解釈の仕方が生まれて、そういう風に思っていたんだっていう発見がたくさんあったんです。だから観る方によっていろんな解釈の仕方があるんじゃないかなと思いますし、それが面白いなと感じます。

若林:自分は当たり前のように思っていたけど、そういう風に考えるんだとか、2人は同じように思っていたけど僕だけ違っていたとか、みんながそう思うんじゃないんだとか。いろいろ話して、へえーなるほどってなりましたね。

――また11年前とは世の中が変わってるから、受け取り方も違うかもしれないですね。

仲原:そうですね。僕たちがやることは変わらないんですけれども、社会がすごいスピードで変化しています。あの頃はスマホもなかったですし、SNSのような発信する場はなかったです。この芝居は30年くらい前の今よりももっと閉鎖的な時代に書かれた作品で、今より逃げ場がなかったと思います。今はネットで自分のポジションを見つけてがんばっている人もいるけれど、そういうことはできなかったし、世間はバブルでにぎわっていたけれど、取り残された者はどうしたらいいかわからないという時代。イケイケドンドンの時代ではみ出してしまった人間の閉鎖感というか孤独感みたいなものがあるなと思います。

◆公演情報◆
Studio Life『TAMAGOYAKI』
東京:2019年7月13日(土)~7月28日(日) 中野ウエストエンドスタジオ
公式ホームページ
[スタッフ]
作・演出:倉田 淳
[出演]
大村浩司、仲原裕之、宇佐見輝、若林健吾、千葉健玖、吉成奨人、前木健太郎、甲津拓平(客演)、宮崎卓真(客演)、高橋里央(客演)/藤原啓児

〈仲原裕之プロフィル〉スタジオライフ第八期生(2005年入団)。スタジオライフでの最近の出演作品は、『なのはな』『はみだしっ子~in their journey through life~』『カリフォルニア物語』『アンナ・カレーニナ』など。外部公演への出演も多数。
仲原裕之オフィシャルTwitter

〈若林健吾プロフィル〉
スタジオライフ第十一期生(2012年入団)。スタジオライフでの最近の出演作品は、音楽劇 『11人いる』『なのはな』『Happy Families』『はみだしっ子~in their journey through life~』『カリフォルニア物語』など。
若林健吾オフィシャルTwitter

〈宮崎卓真プロフィル〉
日本大学芸術学部演劇学科を卒業後、『天元突破グレンラガン~炎撃篇 其の壱・弐・参~』『六畳一間で愛してる』などに出演。スタジオライフ公演への出演は、音楽劇 『11人いる』『カリフォルニア物語』『DRACULA~The Point of No Return~』『DAISY PULLS IT OFF 』。
宮崎卓真オフィシャルTwitter

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筆者

真名子陽子

真名子陽子(まなご・ようこ) ライター、エディター

大阪生まれ。ファッションデザインの専門学校を卒業後、デザイナーやファッションショーの制作などを経て、好奇心の赴くままに職歴を重ね、現在の仕事に落ち着く。レシピ本や観光情報誌、学校案内パンフレットなどの編集に携わる一方、再びめぐりあった舞台のおもしろさを広く伝えるべく、文化・エンタメジャンルのスターファイルで、役者インタビューなどを執筆している。

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