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「いだてん」の視聴率は多分、今後も上がらない

「なつぞら」「白い巨塔」との決定的な違い

中川右介 編集者、作家

拡大7月からスタートした『いだてん』第2部の出演者たち

記録的低視聴率すらすでに話題にならない

 大河ドラマ「いだてん〜東京オリムピック噺〜」の話題と言えば、記録的低視聴率だったが、もはや、それすらも話題にならなくなっている。

 そんななか、第2部が始まり、その初回(6月30日)の視聴率は8.6パーセントと、相変わらず、10パーセントに達しない。翌週は7.9パーセントに下がってしまった。

 低視聴率の理由は、すでに語り尽くされている。最も多い指摘が、大河ドラマとしては珍しい「近現代もの」である、主人公の一般的知名度が低すぎる、金栗四三、田畑政治、古今亭志ん生の物語が入り組んで、話がわかりにくい、の三点だろう。

 しかし、近現代ものであり、主人公の知名度が低いことは、最初はそんなにマイナスではなかったのではないだろうか。過去5年の大河ドラマの視聴率と比較してみよう(「いだてん」は第1部の最終回である第24回(6月23日)までとする)。

 この数字は通常の放送(日曜夜8時)のもので、それよりも先に放映されるBSや土曜の再放送、あるいは録画して見ている分は含まれないから云々と擁護派は言う。だが、それは、これまでの大河ドラマも同じ条件だ。何度も放映されるという点で、民放の他の番組と比較する場合は考慮してもいいが、ここ数年の大河との比較ではこの数字だけで判断すべきだ。と、いうわけで数字を挙げると、

  •                                    第1回/最終回/最高/最低                                  
  • 2014年「軍師官兵衛」    18.9/17.6/18.9(第1回)/12.3(第18回)
  • 2015年「花燃ゆ」      16.7/12.4/16.7(第1回)/  9.3(第36回)
  • 2016年「真田丸」      19.9/14.7/20.1(第2回)/13.0(第42回)
  • 2017年「おんな城主 直虎」 16.9/12.5/16.9(第1回)/10.6(第31回)
  • 2018年「西郷どん」     15.4/13.8/15.5(第5回)/  9.9(第37回)
  • 2019年「いだてん」     15.5/  7.8/15.5(第1回)/  6.7(第22回)

 金栗四三という無名の人物は、誰もが知っている西郷隆盛よりも初回の視聴率は上だったのだ。大河ドラマのファンが保守的だったとしても、「金栗四三? そんな人、知らない」「やっぱ、大河は戦国ものじゃなきゃ」と門前払いすることはなく、第1回は、見たのだ。

 さらに数字を見ていきたい。

 どの作品も、最初がよくて、だんだん下がり、秋頃にいったん、どん底に落ちるが、最終回に向かって盛り返していく、というパターンだ。「いだてん」は現時点では、第22回の6.7パーセントで底を打ったようだ。

 「いだてん」以外で、第1回と最終回の差が最も少ないのが「軍師官兵衛」で1.3パーセント。最も大きいのが「真田丸」で5.2パーセント。最高と最低の差が最も少ないのも「軍師官兵衛」で4.6パーセント、最も大きいのは「花燃ゆ」の7.4パーセント。「軍師官兵衛」が最も安定していたと言っていい。「真田丸」は話題になっていたが、人気は安定していない。「いだてん」はどうか。第1回と第24回の差は7.7パーセント、最高と最低の差は8.8パーセントと、いずれも、いまの時点でワースト記録だ。

 「いだてん」は第2回が12.0パーセントと、前回から3.5パーセントも下げた。「第1回は見たけど、つまらなかった」と思い、離れた人が2割ほどいたのだ。以後も上昇することなく下がり続け、第6回で9.9パーセントとなり、第10回で8.7パーセント。第14回で少し盛り返し、9.6パーセントに戻すが、再び下降し、第22回(6月9日)で最低の6.7パーセントとなり、それでも第1部の終わりへ向かってラストスパートをかけて、どうにか7.8パーセントで終わったのだ。

 そして、第2部の第1回は、8.6パーセントに回復したので、いったん離れた人も、また見てみようかという気になったのかもしれない。あるいは、「視聴率は悪いけど、見ている人は、すごい、傑作だ、と騒いでいるので、物語が新しくなるらしい第2部から見てみよう」と思った人もいたのかもしれない。しかし前述のように、翌週でまた下がった。

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筆者

中川右介

中川右介(なかがわ・ゆうすけ) 編集者、作家

1960年、東京都生まれ。早稲田大学第二文学部卒業。2014年まで出版社「アルファベータ」代表取締役として、専門誌「クラシックジャーナル」、音楽書、人文書を編集・発行。そのかたわら、クラシック音楽、歌舞伎、映画、歌謡曲などについて、膨大な資料から埋もれていた史実を掘り起こし、歴史に新しい光を当てる独自のスタイルで執筆。著書は『カラヤンとフルトヴェングラー』『十一代目團十郎と六代目歌右衛門――悲劇の「神」と孤高の「女帝」』『月9――101のラブストーリー』(いずれも幻冬舎新書)、『山口百恵――赤と青とイミテイション・ゴールドと』『松田聖子と中森明菜――一九八〇年代の革命』(ともに朝日文庫)、『戦争交響楽――音楽家たちの第二次世界大戦』『SMAPと平成』(ともに朝日新書)、『歌舞伎 家と血と藝』(講談社現代新書)、『角川映画 1976-1986(増補版) 』(角川文庫)、『怖いクラシック』(NHK出版新書)など50点を超える。

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