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リベラルな若者が政権を支持するネジレの謎を追う

イデオロギーを凌駕する「権威ファースト」の出現

勝部元気 コラムニスト・社会起業家

拡大参院選の立候補予定者を招いた討論会に参加する若者たち。彼らの選択は?=2019年6月、愛知県大府市

 若者の安倍政権支持率はあらゆる世代の中で最も高い――。

 もはや常識と化したこの傾向に対して、「なぜ、若者は政権を支持するのか」という視点の分析記事がたくさん出ています。

 私は、そのような記事を見つけ次第、なるべく目を通してきました。確かにどの記事も一部の若者の声を代弁していますが、その一方で、何かまだ一つ、決定的なピースが欠けているように感じるのです。

生活満足度と支持率は必ずしも比例しない

 たとえば、インターネット上でもトレンド入りするほど話題になった朝日新聞の記事「「安倍政権支持」の空気――この貧困、自己責任だもの 格差認め自民支える若者たち」では、生活が苦しいと感じる若者が自己責任論に染まっているせいで、経済格差を肯定・容認し、自分が受ける不利益を「社会のせい」「政治のせい」とは捉えられなくなっていると指摘しました。

 よく分析できている素晴らしい内容で、非正規雇用を拡大した自民党を、苦しい思いをしてもなお支持する姿は、「まるでDV加害者の夫をフォローする被害者の妻や、虐待親をフォローする虐待被害児童のような心理状態なのかもしれない」とさえ思ったのですが、これは貧困層における傾向であり、生活にある程度満足している中間層の話ではありません。

 中間層を焦点に当てた記事では、「若者の生活満足度が高まっており、政権を変える意味を見いだせないからだ」という指摘も少なくありません(※参考記事)。

 確かに一理あると思います。ですが、「満足度・生活の質に関する調査」(内閣府)を見ると、若者よりも政権支持率の低い高齢者のほうが満足度は高くなっています。さらに、同年代でも政権支持率の低い女性のほうが満足度は高くなっており、若い男性の政権支持率が他の層に比べて高い理由にはならないでしょう。

30代の政権支持は雇用増では説明できない

 「若者はイデオロギーフリーになっているため、イデオロギーよりも成果で政権を選ぶ。安倍政権になって以降、若者にとって最重要課題である雇用問題で、数値が改善傾向にあるから政権支持は当然だ」という説もよく耳にします(※参考記事)。雇用の悪化が進むと若者の支持率が下がるのは世界各国で見られる現象で、確かにその影響はかなり大きいと思うのですが、一つ大きな疑問が残ります。

 2012年12月発足の第二次安倍政権下で就職活動をした大卒(浪人・留年なしと仮定)は、2014年3月卒業の1991年生まれ以降の世代で、2019年現在で28歳以下のはずです。29歳以上は民主党政権時に就職活動をしています。

 恩恵を受けた28歳以下の若者が安倍政権支持に雪崩を打つのは、確かに若者の雇用増で説明がつくかもしれません。ですが、転職組を除いて、雇用が差し迫った課題ではなくなったはずの29歳~39歳の世代までもが、自分よりも若い世代の雇用増加を理由に安倍政権の支持に傾くのはどういうことでしょうか。どうも雇用増だけではないと思うのです。

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筆者

勝部元気

勝部元気(かつべ・げんき) コラムニスト・社会起業家

1983年、東京都生まれ。民間企業の経営企画部門や経理財務部門等で部門トップを歴任した後に現職。現代の新しい社会問題を「言語化」することを得意とし、ジェンダー、働き方、少子非婚化、教育、ネット心理等の分野を主に扱う。著書に『恋愛氷河期』(扶桑社)。株式会社リプロエージェント代表取締役、市民団体パリテコミュニティーズ代表理事。所有する資格数は71個。公式サイトはこちら

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