勝部元気(かつべ・げんき) コラムニスト・社会起業家
1983年、東京都生まれ。民間企業の経営企画部門や経理財務部門等で部門トップを歴任した後に現職。現代の新しい社会問題を「言語化」することを得意とし、ジェンダー、働き方、少子非婚化、教育、ネット心理等の分野を主に扱う。著書に『恋愛氷河期』(扶桑社)。株式会社リプロエージェント代表取締役、市民団体パリテコミュニティーズ代表理事。所有する資格数は71個。公式サイトはこちら
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
イデオロギーを凌駕する「権威ファースト」の出現
「政権に関する負のニュースを取り上げるテレビや新聞を見ないため、若い人々には政権のネガティブ情報が入って来ないから」という分析もあります。確かに影響はおおいにあると思いますが、もしその説が正しければ、世界各国でネット中心の生活を送る若い男性ほど政権支持率が高い傾向が見て取れても良いはずです。
ところが、どうもそうではありません。デモが続く香港では、むしろ若い男性の行政長官支持率が最も低いようです。ですので、テレビや新聞を見ないことよりも、ネットで政権に関する負のニュースが広まらない日本の特徴のほうに問題の原因があるように感じます(※なぜ広まらないかは論点が異なるので今回は触れません)。
「若者の価値観が保守化・右傾化している」という話もよく聞きます。確かに、ネットを介して「ネトウヨ化」が進み、極右候補が一定の票を得るようになったのは事実です。「チャレンジをしない」「安全運転でよい」「現状変更を望まない」「留学に行かない」という意味で、保守的な若者が増えているのも間違いありません。
ですが、その一方で、外国人労働者の積極的受け入れ、選択的夫婦別姓、同性婚、働き方改革等に賛成する人の割合は若者のほうが多く、価値観のリベラル化が進んでいる側面や、変化を望む面も見られます。つまり、保守化が進むと同時に、リベラル化が進む面もあるわけです。
さらに、保守化とリベラル化の二極化もあるでしょうし、同一人物内において保守化とリベラル化が同時に進んでいるケースも考えられます。若者全体をひとまとめにして「右傾化・左傾化」という単純な尺度で見分けること自体がもはや不可能なのでしょう。
若者に特徴的で、とりわけ男性に多く、世界各国でも同様の傾向が見られる現象と言えば、やはり権威主義化ではないでしょうか。「論座」でも、吉田徹氏が「若者と民主主義との「ディスコネクト」」という記事で、若者の権威主義化の問題を指摘しています。儒教的な上下関係の概念が根強く残り、人権、個人の尊厳等に対して理解の乏しい日本でその特徴がより強く出るのも頷けます。
この土壌に政権の長期化が加わります。前回の記事「安倍政権のネット戦略は国民の弱みを突いてうまい」では、日本でも権威主義パーソナリティが拡大する傾向にあり、長期政権によって政治的権威を高めた安倍政権に好感を持ちやすくなっている社会背景について触れました。国民の側にも政権の側にも、権威的結び付きが太くなった原因があると思います。
そしてこの権威主義化は、自分の政治的価値観というレイヤーよりも上位に位置しているのではないでしょうか? というのも、リベラルな価値観を有する人が、権威ある人の自分と異なる意見を平然と受け入れるケースが少なくないと感じているからです。安倍首相の政治的価値観とは相反するのに、批判的態度を一切とらず、中には「安倍首相はすごい」と言ってしまう人がいるのも、まさにこれでしょう。
つまり、「自分の政治的価値観ファースト」ではなく、「権威ファースト」です。これが、リベラルな価値観の強いはずの人までもが安倍政権を支持するという「ネジレ現象」が生まれるクリティカルな要因のように思うのです。
その一方で、野党が若者に支持されない理由も、何かクリティカルなものがあるはずです。なぜリベラルと位置付けられる野党は、リベラルな若者から支持を獲得できないのでしょうか?
その一つとして、
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