2019年08月01日
このところの吉本興業騒動ではっきり言えるのは、吉本ってジャニーズ事務所よりゆるいんだな、ということだ。だってそうだろう。所属タレントがさまざま自由に会社のことをコメントしてるし、社外の人もタレント、学者、弁護士ほか大勢があーだこーだと発言している。
それに比べて、ジャニーズ事務所の“情報統制”はすごい。
公正取引委員会からの「注意」の話だ。SMAPの元メンバー、つまり「新しい地図」の3人(稲垣吾郎、草彅剛、香取慎吾)をテレビ番組に出演させないよう圧力をかけたという情報が公取に入り、事務所に聞き取り調査したが独占禁止法違反と認定はできなかった。だから「注意」したと、新聞各紙が7月18日に報じた。
今回はよしとするけど、圧力をかけたら法に触れるから覚えておいてね。そう釘を刺されたということだろう。だけど所属タレントがこれについて何かを発言したという話は一切聞かない。ワイドショーも「注意された」ことを伝えただけでもマシですからって感じで、テレビの静かなことと言ったら。そのこと自体が、「圧力団体」としてのジャニーズのすごさを証明しているのでは?
と思っていたら、あの男がいた。「加藤の乱」の加藤浩次。
MCをつとめる「スッキリ」(日本テレビ系)で、「注意」について「ジャニーズ事務所に限らず大手事務所を独立したタレントは、何年かテレビに出られなくなるのは暗黙にあり、テレビの視聴者も気がついている」とコメントし、「業界全体が新しく変わっていくきっかけになればいい」と締めくくったそうだ。
正義感の持ち主で、その姿勢が一貫していることの証左のような言葉。彼が所属してくれていること、吉本興業は感謝した方がいいと思う。
と、話がまた吉本になってしまったのでジャニーズに戻る。
「新しい地図」3人のレギュラー番組は独立以来次々終了、2019年3月に稲垣の「ゴロウデラックス」(TBS系)が終わり、ゼロとなった。ジャニーズ事務所は「弊社がテレビ局に圧力をかけた事実はない」「今後は誤解を受けないように留意したい」と公式サイトでコメントし、終了させたテレビ各局は、「独自の判断」だと言っている。
テレビの世界のことは詳しくないが、出版の世界は少し知っている。
「新しい地図」スタート直後に大手出版社の上層部が「『新しい地図』禁止令」を出したという話を聞いたし、「解散まで嵐にたくさん登場いただくため、SMAP解散関連はタブー」という出版社の人もいた。これらもきっとジャニーズ的には「弊社が出版社に圧力をかけた事実はない」で、出版各社の「独自の判断」なのだと思う。
だから公取の「注意」くらいで事態は変化しないと思う。ジャニーズには嵐がいてキンプリがいて、他にも上はアラフィフから下はアラテンまで老若男男がいる。一方、「新しい地図」はそれぞれが魅力的とはいえ、あくまでも3人だけ。予測される視聴率や雑誌売り上げの総量が違い過ぎる。
同じ論理の中に押し込まれてしまっているのが、旧・能年玲奈、現・のんだ。
ジャニーズへの「注意」が報じられた18日、16年から彼女のマネジメントに携わっている会社の代表がそのことを表明した。株式会社スピーディの福田淳代表で、「エンタメ産業の未来」と題した文章をホームページとフェイスブックで発信した。
テレビ局の若い編成マンからたくさんすばらしい企画がくるが、話が進むと突然、上司や担当役員に潰される。そういう状態が3年も続いている――具体的でリアルな文章だった。「のんが3年間テレビ局で1つのドラマにも出演が叶わないことは、あまりにも異常ではないでしょうか?」と訴えていた。
そうだ、そうだと思う。だが、このこともテレビ局が報じる様子は一向にない。のんは「新しい地図」より少ない、たった1人なのだ。
と、ここで再び吉本関連に戻るのだが、「宮迫&亮」の記者会見をなぜ地上波は報じなかったのか、と
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