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「ジャニーズ注意」で思う地上波が見捨てられる時

矢部万紀子 コラムニスト

「新しい地図」の3人(稲垣吾郎、草彅剛、香取慎吾)拡大地上波からレギュラー番組が消えた「新しい地図」の3人(左から香取慎吾さん、草彅剛さん、稲垣吾郎さん)

 このところの吉本興業騒動ではっきり言えるのは、吉本ってジャニーズ事務所よりゆるいんだな、ということだ。だってそうだろう。所属タレントがさまざま自由に会社のことをコメントしてるし、社外の人もタレント、学者、弁護士ほか大勢があーだこーだと発言している。

 それに比べて、ジャニーズ事務所の“情報統制”はすごい。

 公正取引委員会からの「注意」の話だ。SMAPの元メンバー、つまり「新しい地図」の3人(稲垣吾郎、草彅剛、香取慎吾)をテレビ番組に出演させないよう圧力をかけたという情報が公取に入り、事務所に聞き取り調査したが独占禁止法違反と認定はできなかった。だから「注意」したと、新聞各紙が7月18日に報じた。

 今回はよしとするけど、圧力をかけたら法に触れるから覚えておいてね。そう釘を刺されたということだろう。だけど所属タレントがこれについて何かを発言したという話は一切聞かない。ワイドショーも「注意された」ことを伝えただけでもマシですからって感じで、テレビの静かなことと言ったら。そのこと自体が、「圧力団体」としてのジャニーズのすごさを証明しているのでは?

 と思っていたら、あの男がいた。「加藤の乱」の加藤浩次。

 MCをつとめる「スッキリ」(日本テレビ系)で、「注意」について「ジャニーズ事務所に限らず大手事務所を独立したタレントは、何年かテレビに出られなくなるのは暗黙にあり、テレビの視聴者も気がついている」とコメントし、「業界全体が新しく変わっていくきっかけになればいい」と締めくくったそうだ。

 正義感の持ち主で、その姿勢が一貫していることの証左のような言葉。彼が所属してくれていること、吉本興業は感謝した方がいいと思う。

 と、話がまた吉本になってしまったのでジャニーズに戻る。

 「新しい地図」3人のレギュラー番組は独立以来次々終了、2019年3月に稲垣の「ゴロウデラックス」(TBS系)が終わり、ゼロとなった。ジャニーズ事務所は「弊社がテレビ局に圧力をかけた事実はない」「今後は誤解を受けないように留意したい」と公式サイトでコメントし、終了させたテレビ各局は、「独自の判断」だと言っている。


筆者

矢部万紀子

矢部万紀子(やべ・まきこ) コラムニスト

1961年生まれ。83年、朝日新聞社に入社。宇都宮支局、学芸部を経て、週刊誌「アエラ」の創刊メンバーに。その後、経済部、「週刊朝日」などで記者をし、「週刊朝日」副編集長、「アエラ」編集長代理、書籍編集部長などをつとめる。「週刊朝日」時代に担当したコラムが松本人志著『遺書』『松本』となり、ミリオンセラーになる。2011年4月、いきいき株式会社(現「株式会社ハルメク」)に入社、同年6月から2017年7月まで、50代からの女性のための月刊生活情報誌「いきいき」(現「ハルメク」)編集長をつとめた後、退社、フリーランスに。著書に『美智子さまという奇跡』(幻冬舎新書)、『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』(ちくま新書)。最新刊に『雅子さまの笑顔――生きづらさを超えて』(幻冬舎新書)

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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