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ブロードウェーの巨匠、ハロルド・プリンスを悼む

ミュージカルの地平広げた生涯

山口宏子 朝日新聞記者

「シリアスな演劇が好き」

 「蜘蛛女のキス」の日本版(96年)を演出するために来日したプリンスさんにインタビューしたことがある。トレードマークでもある、おでこにメガネをのせたスタイルで現れたプリンスさんは、気さくに、そして率直に語ってくれた。

 社会的な主題のあるミュージカルを多く作ってきたことについては――

「昔からシリアスな演劇が好きでした。幸運なことに、私がミュージカルに興味を持ったのがテレビが普及し始めたころで、安価な映画と無料のテレビに挟まれ演劇は娯楽性を競う必要がなくなった。そのためテーマのあるミュージカルが作りやすくなった。真摯なテーマは国を超えて理解されます」

 ブロードウェーの製作費が高騰し、舞台作りが難しくなっていることには――

 「私はラッキーなんです。ちょうどいい時に生まれ、伝統の良さを理解して、必要なだけの成功を収め、今、やりたいことは何でもできる。今の若い人は、才能があっても、お金や人からの支援がなく、私と同じような自己表現ができなくなってしまった。悲しいことに人が使い捨てにされてしまっているのです」

 「米国の娯楽産業はこのごろ、興行収入ばかり考えているところがあって、私は危険だと思う。私の『大成功作』でも、実は赤字に終わったものが何本かあるんです。私がもし、興行で成功しただけなら、今のような評価は得られなかったでしょう」

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筆者

山口宏子

山口宏子(やまぐち・ひろこ) 朝日新聞記者

1983年朝日新聞社入社。東京、西部(福岡)、大阪の各本社で、演劇を中心に文化ニュース、批評などを担当。演劇担当の編集委員、文化・メディア担当の論説委員も。武蔵野美術大学非常勤講師。共著に『蜷川幸雄の仕事』(新潮社)。

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