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駒田一、24年目の『ラ・マンチャの男』/上

役者にとっては、たまらん!って思う作品

真名子陽子 ライター、エディター



拡大駒田一=久保秀臣 撮影

 日本初演から半世紀――ミュージカル『ラ・マンチャの男』が大阪を皮切りに9月~10月に上演されます(宮城、愛知、東京と続く)。『ラ・マンチャの男』はスペインの国民的小説「ドン・キホーテ」を原作としたミュージカルで、1965年にブロードウェイにて初演。日本で初めて上演されたのは1969年、松本白鸚(当時、市川染五郎)さんが26歳の時でした。それから50年、主演と、現在は演出も担う白鸚さんはライフワークとして作品と共に歩み、本公演中の10月には通算上演回数1300回を突破します。

 1995年の公演から役を替えながら出演し続け、2009年の公演から白鸚さん演じるセルバンテスの従僕役と劇中劇でのサンチョ役を演じている駒田一さんにお話を伺いました。2020年に『ミス・サイゴン』(エンジニア役)上演の発表があり、先日まで出演していた『レ・ミゼラブル』(テナルディエ役)のご自身の千穐楽を迎えた翌日のインタビュー。すでにラ・マンチャモードに切り替えてドキドキしているという駒田さんも『ラ・マンチャの男』に携わって24年。旦那様と呼ぶ白鸚さんや背筋が伸びるという本作品について、また、たまらない気持ちになるという、最後に二人で階段を上がっていくシーンの秘話や、劇団にいた20代の頃に経験したことが今の役作りの土台になっていることなど、時に感極まりながら、そして時に大笑いしながら語っていただきました。

50年、ひとつの作品を続けていることに驚嘆

拡大駒田一=久保秀臣 撮影

――日本初演から50年、そして今回で1300回を超える作品です。

 すごい作品ですよね。劇団にいた頃に800回や900回と同じ作品をやったことがあるのですが、100回だろうが1000回だろうが、そのうちの何回自分で納得できたのか、どれだけ良い芝居ができたかを探すのが役者の仕事だと思っています。やはりすべてうまくいくことは難しいですから。50年というのもなかなかピンとこないです。旦那様(松本白鸚さん)が26歳から50年、ひとつの作品を続けていらっしゃることに驚嘆します。考えられないですね。

――その50年のうち、駒田さんは24年に渡って出演しています。

 僕は役替わりしてますから。そして50年、芝居をしている方はたくさんいます、いろんな作品に出ながらね。僕だって39年芝居をしてきてますから。でも、ひとつの役を50年、しかも他に誰もやったことがないというのはすごいことですよ、本当に。

――そうですね。その白鸚さんをずっと傍で見てこられました。

 僕は見る目線が3か所ありました。荒くれ者から見るドン・キホーテ、床屋から見るドン・キホーテ、サンチョから見るドン・キホーテ。全く違う視点から見てきた幸せな人間ですよね。でも、ここまで続けさせていただいているのは何か縁があるんだろうなと感じます。1995年に初めてこの作品に入ったんですが、その稽古中に父を亡くしたんですね。だからなのか、最後のラ・マンチャの臨終のシーンは、どこかダブってしまうんですよね。24年、思い出はたくさんあります。いろんなことを勉強させてもらいましたし、しがみつきたいとも思いましたし、号泣したこともありました。もちろん、うれしいこともたくさんありました。

拡大駒田一=久保秀臣 撮影

――号泣されたことがあるんですね。

 もう、しょっちゅうです。思い通りにいっていない自分が悔しくて……。お酒を飲むと涙腺が弱くなっちゃうんです、それもしょっちゅう(笑)。そうやって悔しさを発散してきました。

――切り替えながら。

 そうですね。基本的に稽古や本番終わりはまっすぐ家に帰らずに、反省会という名のアイシング、冷たいお酒を飲むことをアイシングと言ってるんですけれど(笑)、ちょっと緩めてから帰って寝るということが多いんです。そして朝にも振り返りを。早起きなんで。でも、ラ・マンチャの時はそんなに飲まないんですよ。たしなむ程度にして、いつも緊張感を持っているんです。

――それは何故でしょう?

 なんでだろう……自分でそういう風に決めてるんですよね。ひとつの哲学かな。ラ・マンチャに入るとシャキッとします。ちょこっと飲んでお先にと言ってすぐに帰るんです。

◆公演情報◆
ミュージカル『ラ・マンチャの男』
大阪:2019年9月7日(土)~9月12日(木) フェスティバルホール
宮城:2019年9月21日(土)~9月23日(月) 東京エレクトロンホール宮城
愛知:2019年9月27日(金)~9月29日(日) 愛知県芸術劇場大ホール
東京:2019年10月4日(金)~10月27日(日) 帝国劇場
公式ホームページ
★駒田一さんをゲストに迎えて行われた『ラ・マンチャの男』トークイベントのダイジェストが、MBS「ENT」(関西ローカル)内で8月26日(月)に放送(予定)されます。
★大阪・中之島フェスティバルタワーにて『ラ・マンチャの男』パネル展実施中!(9月12日まで)。詳しくはこちら
[スタッフ]
演出:松本白鸚
脚本:デール・ワッサーマン
作詞:ジョオ・ダリオン
音楽:ミッチ・リー
訳:森 岩雄、高田蓉子
訳詞:福井 崚
振付・演出:エディ・ロール(日本初演)
[出演]
松本白鸚、瀬奈じゅん、駒田 一、松原凜子、石鍋多加史、荒井洸子、祖父江進、大塚雅夫、白木美貴子、宮川 浩、上條恒彦 ほか

〈駒田一プロフィル〉
 ミュージカル劇団フォーリーズ出身。声優としても活躍。第41回菊田一夫演劇賞受賞。最近の主な出演作品は、『レ・ミゼラブル』『マリー・アントワネット』『あなたの初恋探します』『メリー・ポピンズ』など。11月に『ダンス オブ ヴァンパイア』、2020年5月に『ミス・サイゴン』への出演が決まっている。
駒田一オフィシャルサイト
駒田一オフィシャルブログ

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筆者

真名子陽子

真名子陽子(まなご・ようこ) ライター、エディター

大阪生まれ。ファッションデザインの専門学校を卒業後、デザイナーやファッションショーの制作などを経て、好奇心の赴くままに職歴を重ね、現在の仕事に落ち着く。レシピ本や観光情報誌、学校案内パンフレットなどの編集に携わる一方、再びめぐりあった舞台のおもしろさを広く伝えるべく、文化・エンタメジャンルのスターファイルで、役者インタビューなどを執筆している。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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