真名子陽子(まなご・ようこ) ライター、エディター
大阪生まれ。ファッションデザインの専門学校を卒業後、デザイナーやファッションショーの制作などを経て、好奇心の赴くままに職歴を重ね、現在の仕事に落ち着く。レシピ本や観光情報誌、学校案内パンフレットなどの編集に携わる一方、再びめぐりあった舞台のおもしろさを広く伝えるべく、文化・エンタメジャンルのスターファイルで、役者インタビューなどを執筆している。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
白鸚さんがいるラ・マンチャの世界で一緒に生きてきた
――圧倒的にエンターテインメントで、圧倒的に芝居だなと感じます。
圧倒的に芝居だと僕は思っています。そして哲学ですね。でも、哲学ってなんのこっちゃ分からないですよね。
――はい、分からないです。
なんのこっちゃ分からないのが哲学だと思っているんです。それを分かろうとするかどうか。分からないからサヨナラではなくて、「なんでこう言うんだろう、なんだろう……」、その〝なんだろう〟が意外と大事だなと思うんです。それを考える時間があってもいい気がするんです。
――なんだろうこの作品は?と、自分に問いかける?
そうです。それを思わせてくれる作品かなと思います。
――それを今も追い続けている?
追い続けています。100%わかってるなんて未だにこれっぽっちも思ってないです、深すぎて。考えすぎているかもしれないけれど、考えることが必要かなとも思うんですよね。だから、他の作品に出る時もこのぐらい考えたほうがいいかなと思います。もちろんちゃんと考えるんですけどね、深さですね。そして、役者としてキャラクターの捉え方が変わってきました。書かれているものをただなぞるだけでなく、何故このセリフを言うのか? それを考えるのは当たり前のことだけど、もっと深いところに意味があるんじゃないかなって探っていくんです。なんで相手が私にこのセリフを言うんだろうってずっと考えていると、芝居って面白いなあって思うんです。20代の頃って何も考えずにやってたなぁ(笑)。
――(笑)。そうやって役者として深まっていくんですね。
その人の考え方次第ですけどね。十人十色です。考えてる人はずっと考えてるし、考えなくても素敵な人はいます。それが不思議なところで、そういう意味で舞台はエンターテインメントだし、何も考えずに感覚的にできちゃう人っているんですよね。すごい世界だなと思います。考えて考えて考えすぎてダメなこともありますし。ただ、純粋に、単純に、ラ・マンチャに入ると考えなきゃって思えるんです。そして、背伸びができない作品でもあります。これぐらいできるだろうという考えを持ってはダメ。旦那様は全部見抜いていますから。
――そうなんですね。松本白鸚さんの演出はいかがですか?
僕は好きです。それぞれの役を時々演じて見せてくださるんですけど、やはり素晴らしいんです、どの役もどのセリフも。そのキャラクターが見えるんです。そりゃそうですよね、誰よりも『ラ・マンチャの男』を分かっていらっしゃいますから。違う人が演出されたら違う作品になってるだろうし、違うラ・マンチャが生まれたかもしれないけれど、もう考えられないです。僕は白鸚さんがいらっしゃるラ・マンチャの世界で一緒に生きてきたわけですから、これからも一緒に生きていきたいです。
――ずっとサンチョ役をやりたいですか?
やりたいですね! もう荒くれ者はできないですね、体力的にね(笑)。
そうですね、伝授しないといけないことが増えます。ただ僕もいただけるものはいただきたいので、皆さんからパワーをいただいて、一緒に作っていきたいです。
――何度出演されていても毎回0から作っていく感覚ですか?
0ではなく1があるんです、『ラ・マンチャの男』という題材が。とてつもなく大きな1なんですけど、またそこで戦っていこうと思っています。もうすでに戦いは始まってるんですけどね。『レ・ミゼラブル』の大阪公演の時も飲みに行かずにホテルで『ラ・マンチャの男』の本読みをしていました……つまり、ドキドキしているということですね(笑)。ああ、稽古が始まるんだと思ってね。
――そのドキドキは白鸚さんだからというのも要因でしょうか?
どうだろう……ラ・マンチャだからですかね。そう思ってしまうし、そう思わせてくれちゃったんですよね、『ラ・マンチャの男』という作品が。ここまでのドキドキ感はあまりないです。若い頃は高いところやジェットコースターが好きだったけど、年々ダメになってきたりするじゃないですか。それと同じように年々怖くなってきてるんです、『ラ・マンチャの男』が。前回からドキドキ感が激しいんです。
――それもまた何故なんでしょう?
分からない。その〝なぜだろう〟をゆっくり考えていきたいです。また現場の空気を吸うと良い感じのドキドキ感が出てくるんです。やるなら楽しもうと思っていますし、長くやっている分ちょっとだけ偉そうにできるワクワク感も出てくるんですよね、冗談ですが(笑)。新しく参加する方がいるのは楽しいですし、一致団結していて本当に良いカンパニーなんです。僕は30歳の時にこのカンパニーに入り、ほとんどの方が先輩だったのですが、可愛がってくださいました。
◆公演情報◆
ミュージカル『ラ・マンチャの男』
大阪:2019年9月7日(土)~9月12日(木) フェスティバルホール
宮城:2019年9月21日(土)~9月23日(月) 東京エレクトロンホール宮城
愛知:2019年9月27日(金)~9月29日(日) 愛知県芸術劇場大ホール
東京:2019年10月4日(金)~10月27日(日) 帝国劇場
公式ホームページ:
★駒田一さんをゲストに迎えて行われた『ラ・マンチャの男』トークイベントのダイジェストが、MBS「ENT」(関西ローカル)内で8月26日(月)に放送(予定)されます。
★大阪・中之島フェスティバルタワーにて『ラ・マンチャの男』パネル展実施中!(9月12日まで)。詳しくはこちら
[スタッフ]
演出:松本白鸚
脚本:デール・ワッサーマン
作詞:ジョオ・ダリオン
音楽:ミッチ・リー
訳:森 岩雄、高田蓉子
訳詞:福井 崚
振付・演出:エディ・ロール(日本初演)
[出演]
松本白鸚、瀬奈じゅん、駒田 一、松原凜子、石鍋多加史、荒井洸子、祖父江進、大塚雅夫、白木美貴子、宮川 浩、上條恒彦 ほか
〈駒田一プロフィル〉
愛知県出身。ミュージカル劇団フォーリーズ出身。第41回菊田一夫演劇賞受賞。最近の主な出演作品に『レ・ミゼラブル』『マリー・アントワネット』『あなたの初恋探します』『メリー・ポピンズ』などがある。11月に『ダンス オブ ヴァンパイア』、2020年5月に『ミス・サイゴン』への出演が控えている。
★駒田一オフィシャルサイト
★駒田一オフィシャルブログ