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『絢爛とか爛漫とか』4週間のロングラン公演/上

再演を繰り返される傑作四人芝居に鈴木勝大と川原一馬が出演

大原薫 演劇ライター


拡大鈴木勝大(右)と川原一馬=伊藤華織 撮影

 再演を繰り返されてきた傑作『絢爛とか爛漫とか』が新キャストによりDDD青山クロスシアターにて、4週間のロングランで上演される。

 舞台は昭和のはじめ。2作目が書けずに悩む新人小説家、古賀(安西慎太郎)と彼の部屋に集う3人の文士たち(鈴木勝大、川原一馬、加治将樹)が移り変わる季節の中で理想と現実、友情や恋に葛藤しながらそれぞれの道を探していく物語だ。1993年の初演を手掛けた鈴木裕美が21年ぶりに(1998年の再演も演出)本作を演出することでも話題を集める。

 批評家志望のモダンボーイ、泉を演じる鈴木勝大。自称・耽美小説家の加藤を演じる川原一馬。春夏秋冬を描く作品で、春の場面が終わっていよいよ稽古が佳境に向かおうとする頃、演技の熱が残る稽古場で話をうかがった。

今の時代に生きる僕らの「あるある」が詰まっている作品

拡大鈴木勝大=伊藤華織 撮影
 

――最初に台本を読んだとき、どんな印象でしたか?

鈴木:読み始める前は「昭和初期」「小説家」というワードに身構えたんですが、実際読んでみると、今の時代を生きているみんながやっている「あるある」が詰まっている話で、友達の馬鹿話を聞いているような感覚になったんです。親密に感じられる台本だなという印象がありますね。

川原:4人がわちゃわちゃしてふざけたり、悲しんだり、怒ったりしている様子が現代の大学生に通じるというか。「みんな、こういうことあるよね」と思える台本でした。所作などで時代を感じさせる部分は細かく作らないといけないと思いますが、わりと裕福で恵まれた家庭の子たちという設定でもあり、「昭和初期」「文士」だからとハードルを高くしなくても大丈夫なんじゃないかなという気がします。

――鈴木裕美さんの演出を受けてみて、いかがでしょうか。

鈴木:裕美さんは、とにかく読解の細かさが恐ろしいじゃないですか。

川原:(笑)

鈴木:稽古中に「ああ、読みが浅かったな」と思い知らされることが多い。本当に細かく丁寧に一緒に読み解いていただいている感じですね。

川原:文士の話だけあって、表現方法が遠回しだったり難しい単語が続いたりするので、本当の言葉の意味が理解しづらい部分があるんです。一つのワードを読み間違えると全然違ってしまうので、一つ一つ台詞を読み解いていくんですが、だからといって、決して型にはまった台本ではない。一つのワードにどうアプローチしていくか、僕たち4人でしかできない表現は何かということを意識して演出していただいていますね。「4人の関係性で見せていく芝居」だと裕美さんはおっしゃってましたが、関係性から生まれる演技が必要なんだなと感じています。

拡大川原一馬=伊藤華織 撮影

――鈴木裕美さんは、役者の語る台詞に嘘がないということを大切に演出されている方かなと思います。

川原:僕たちがちょっとでも不明確なアプローチをすると裕美さんには見抜かれてしまう。一つ一つの台詞に目的をしっかり持とうと、今取り組んでいるところです。裕美さんは「まず関係性を作れば、続く2場、3場もやりやすくなるよね」と、とても丁寧に演出されている。一人一人がいいと思えるものを選択してくださっているので愛を感じます。集中していないと演じられないので、稽古をしている今は自分の集中力との戦いです。

◆公演情報◆
舞台『絢爛とか爛漫とか』
東京:2019年8月20日(火)~9月13日(金)  DDD青山クロスシアター
公式ホームページ: 
[スタッフ]
作:飯島早苗
演出:鈴木裕美
[出演]
安西慎太郎、鈴木勝大、川原一馬、加治将樹

〈鈴木勝大プロフィル〉
 2009年ジュノン・スーパーボーイ・コンテストで準グランプリを受賞し、2010年に俳優デビュー。2012年放送の『特命戦隊ゴーバスターズ』でテレビドラマ初主演を果たす。最近の舞台出演作品は、SOLID STARプロデュースvol.17 『ハッピーマーケット!!』、劇団た組。第17回目公演 『貴方なら生き残れるわ』、『DARKNESS GATE』、『岸 リトラル』など。
鈴木勝大オフィシャルサイト
鈴木勝大twitter

〈川原一馬プロフィル〉
 小学生の頃から、ダンス・歌・演技のレッスンを受け、子役としてドラマなどに出演し活動をスタート。最近の舞台出演作品は、ミュージカル『オリヴァー・ツイスト』、BEST OF OFF BROADWAY MUSICAL『ALTAR BOYZ 2019』、ミュージカル『イヴ・サンローラン』など。11月にA NEW MUSICAL『In This House~最後の夜、最初の朝〜』に出演予定。
川原一馬オフィシャルサイト
川原一馬twitter

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筆者

大原薫

大原薫(おおはら・かおる) 演劇ライター

演劇ライターとして雑誌やWEB、公演パンフレットなどで執筆する。心を震わせる作品との出会いを多くの方と共有できることが、何よりの喜び。ブロードウェー・ミュージカルに惹かれて毎年ニューヨークを訪れ、現地の熱気を日本に伝えている。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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