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津波のがれきに混じっていた被ばく関連の本

長岡義幸 フリーランス記者

 東日本大震災によって、東北地方は太平洋沿岸部を中心に甚大な被害を受けた。以前から出版産業の動向を取材テーマにしていたことに加え、福島県の浜通り出身でもあった私は、震災後、岩手、宮城、福島の新刊書店の状況を意識的に取材してきた。2018年に上梓した拙著『「本を売る」という仕事――書店を歩く』(潮出版社)でも「震災を超えて」という章を設け、被災書店の状況を報告している。

 震災から8年を経て、まだまだ復興途上ではあるものの、津波の直撃を受け、仮設店舗で営業を継続した岩手、宮城の書店の多くは本設に移行した。だが、地震と津波に東京電力福島第一原子力発電所の爆発事故が加わった、福島の現旧の強制避難指示区域で営業していた書店の場合は、様相が異なる。再開を果たした書店はいまだに1店もない。

 それでもほのかな希望はある。芥川賞作家の柳美里さんが「原発事故によって20キロ圏内は汚染地というレッテルが貼られ、人も差別されている。そこに美しい場所をつくりたい」と18年4月、移住した旧避難区域の南相馬市小高区で新刊書店「フルハウス」を立ち上げた。それから1年余。柳さんは居住者が激減した街に地域の高校生や住民、市外からの訪問者らの交流スペースをつくろうと、ブックカフェの増設にも乗り出した。6月28日を期限に、改装費用の支援を求めたクラウドファンディングでは、目標額を上回る1800万円余の篤志が集まる広がりとなった。

南相馬市小高区で新刊書店「フルハウス」拡大書店「フルハウス」を立ち上げた柳美里さん=南相馬市小高区

――状況は一様ではないけれども、原発事故がもたらした被害のひとつとして、旧避難区域の書店が置かれた困難と流転、そして展望を伝えたい。

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筆者

長岡義幸

長岡義幸(ながおか・よしゆき) フリーランス記者

1962年生まれ、福島県小高町(現・南相馬市)出身。国立福島工業高等専門学校工業化学科卒業、早稲田大学第二文学部3年編入学後、中退(抹籍)。出版業界紙『新文化』記者を経てフリーランスに。出版流通・出版の自由・子どもの権利・労働などが主な関心分野。著書に『「本を売る」という仕事――書店を歩く』(潮出版社)、『マンガはなぜ規制されるのか――「有害」をめぐる半世紀の攻防』(平凡社新書)、『出版と自由――周縁から見た出版産業』(出版メディアパル)ほか。震災・原発事故関連の共著書に『除染労働』(三一書房)、『復興なんて、してません――3・11から5度目の春。15人の“いま”』(第三書館)なども。