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原発事故 「被害」と「加害」に引き裂かれた私

50年の歴史を演劇「福島三部作」で問う

谷 賢一 劇作家・演出家・翻訳家

フィクションのような事実をつづる

 まず第一部『1961年:夜に昇る太陽』では、なぜ東京に電気を送るための原子力発電所が福島県の浜通り地方なんていう片田舎に作られることになったのかという、原発誘致の裏話を描いた。

 「私は広島の出身」だからこそ「原発は安全」だと言い張り誘致を進める佐伯という東電社員、登山客風の格好に変装して県内を測量して回る酒井という県職員など、いかにもフィクションらしい怪しい人物たちが出てくるが、すべて実在の人物であり記録にも残っている。そして当時の相場の20倍近い金額、現在の価値に換算すると約3億円にもなる大金をちらつかされて土地の買収工作が行われる……と、このように実に奇妙な道筋を辿って福島県に原発は誘致されたのだ。

福島三部作拡大福島三部作の第一部『1961年:夜に昇る太陽』=田子和司氏撮影

 第二部『1986年:メビウスの輪』では、原発反対運動の元リーダーだった主人公・忠が、原発推進派の町長として担ぎ上げられ、チェルノブイリ原発事故を体験した後、かえって「日本の原発は安全です」と安全神話に手を貸すに至る心理の変化を描いた。

 これも実在の岩本忠夫という双葉町長の変化・転身をモデルにしている。貧しい地方都市にとって原発のもたらす経済的恩恵はあまりにも大きく、雇用・財政・町のすべてが原発依存に陥っていき、どうあっても後戻りできなくなっていく様を描いたが、これも事実だからこそ恐ろしい話である。

福島三部作拡大福島三部作の第二部『1986年:メビウスの輪』=白土亮次氏撮影

 第三部『2011年:語られたがる言葉たち』では、いよいよ舞台が2011年・震災の年となり、あの地震と津波と原発事故が福島県内にどんな傷跡を残したのかが描かれている。


筆者

谷 賢一

谷 賢一(たに・けんいち) 劇作家・演出家・翻訳家

1982年、福島県生まれ、千葉県柏市育ち。劇団DULL-COLORED POP主宰。明治大学と英国ケント大学で演劇学を学ぶ。2013年、翻訳・演出した『最後の精神分析』で第6回小田島雄志翻訳戯曲賞、文化庁芸術祭優秀賞を受賞。近作に、神奈川芸術劇場『三文オペラ』(上演台本・演出)、新国立劇場『白蟻の巣』(演出)、ホリプロ『わたしは真悟』(脚本)、東宝『死と乙女』(演出)、Bunkamura『PLUTO』(上演台本)など。脚本や演出補としてシルヴィウ・プルカレーテ、フィリップ・デュクフレら海外演出家とのコラボレーションも多い。

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