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「YEBISU GARDEN CINEMA」拡大「YEBISU GARDEN CINEMA」の公式サイトより

 世界最古の映画会社、「Gaumont(ゴーモン)」(仏、1895~)が製作した26本の傑作、名作、怪作が、東京・恵比寿の「YEBISU GARDEN CINEMA」で一挙上映中だが(8月23日まで)、大げさでなく、全身に震えが走るような凄いラインナップである。

 なにしろ、サイレント期の名匠ルイ・フイヤード(1873―1925)、女性映画の名手ジャン・グレミヨン(1901―1959)、メロドラマ的艶笑譚(えんしょうたん)の天才マックス・オフュルス(1902―1957)、“<声/語り>の映画=ナラタージュ・フィルム”の第一人者、サッシャ・ギトリ(1885―1957)、フランス最高の怪奇幻想映画作家、ジョルジュ・フランジュ(1912―1987)、“最もフランス的な映画監督”ジャック・ベッケル(1906―1960)、などなどの偉大なシネアストの作品が目白押しなのだ。まさしく、映画ファンなら震撼必至の特集上映である。

 ゴーモン社を創業したのはフランスの映画製作者、レオン・ゴーモン(1864―1946)。文字どおり映画界のパイオニア(他に先駆けて物事を始める人)で、勤務していた総合商社「コントワール・ジェネラル・ド・フォトグラフィ」を買い取り、「レオン・ゴーモン社」を設立、光学機器と写真の事業を飛躍的に発展させたのち、映写機やカメラの製造で成功を収める。やがて、ゴーモン社は映画製作に乗り出し、シャルル・パテが1896年に創設した“映画帝国”、パテ社の強力なライバルとしてフランス映画を支えていく。

 ゴーモン社は当初、風景などの記録映画を作っていたが、顧客の注文により劇映画を製作するため、レオン・ゴーモンのアシスタントであったアリス・ギィ(1873―1968)を抜擢。世界初の女性映画監督の誕生であるが、ギィによる監督作品『キリストの生涯』(1906)は、映画史上初の古代史映画と言われている(ギィの監督した映画の総数は500本を数える)。

 ギィはまた、世界初の映画製作者であり、生涯20年以上映画製作に携わり、関わった作品はおよそ1000本以上にのぼると推定されているが、本特集で上映される前記ジャン・グレミヨン監督『混血児ダイナ』(1931)は、ギィの製作による貴重なフィルムだ(1907年、ギィが夫とともに渡米するのを機に、彼女に代わって前記ルイ・フイヤードが製作責任者兼芸術監督に就任する。フイヤードは『ファントマ』(1913―14、今回上映)、『吸血ギャング団』(1915―16)といった連続活劇や、怪奇的要素を含むシュールな犯罪サスペンス『ジュデックス』(1917)などで映画史にその名を刻んだが、生涯にわたり800本以上の作品を監督し、また脚本家としての才能をギィに高く評価された)。 ・・・ログインして読む
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筆者

藤崎康

藤崎康(ふじさき・こう) 映画評論家、文芸評論家、慶応義塾大学、学習院大学講師

東京都生まれ。映画評論家、文芸評論家。1983年、慶応義塾大学フランス文学科大学院博士課程修了。著書に『戦争の映画史――恐怖と快楽のフィルム学』(朝日選書)など。現在『クロード・シャブロル論』(仮題)を準備中。熱狂的なスロージョガ―、かつ草テニスプレーヤー。わが人生のべスト3(順不同)は邦画が、山中貞雄『丹下左膳余話 百万両の壺』、江崎実生『逢いたくて逢いたくて』、黒沢清『叫』、洋画がジョン・フォード『長い灰色の線』、クロード・シャブロル『野獣死すべし』、シルベスター・スタローン『ランボー 最後の戦場』(いずれも順不同)

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