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【公演評】月組『チェ・ゲバラ』公演レポート

キューバ革命を成し遂げたチェ・ゲバラ激動の半生を、轟悠が心技一体で重厚に描く

さかせがわ猫丸 フリーライター


拡大『チェ・ゲバラ』公演から、エルネスト・ゲバラ(チェ・ゲバラ)役の轟悠=岸隆子(Studio Elenish)撮影

 月組公演ミュージカル『チェ・ゲバラ』が8月11日、梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで上演されました。

 フィデル・カストロとともにキューバ革命を成功させた革命家エルネスト・ゲバラ(チェ・ゲバラ)の生きざまを、専科の轟悠さんが月組生25名とともに鮮烈に描き出します。脚本・演出は、ドラマシティで歴史上の偉人を描くことには定評のある原田諒先生。男役として熟練の域に達し、誇り高く理想に燃えたゲバラに心技一体で挑む轟さんとのタッグに死角はありません。泥の匂いがしてきそうなゲリラ戦や重厚な人間ドラマは、愛やロマンチックだけではない宝塚の底力をも見せつけました。

医師からゲリラ軍リーダーへ

拡大『チェ・ゲバラ』公演から=岸隆子(Studio Elenish)撮影

 今作の公演ポスターには「ついにここまで来たか!」と思ってしまうほどのワイルドさに度肝を抜かれました。ヒゲをたくわえたゲリラ戦士・ゲバラの有名な肖像を、ここまでリアルに再現するとは “轟悠おそるべし”。リンカーンやドクトル・ジバゴに次ぐ、轟さんの偉人コレクションにまた一つ、名作が刻まれたようです。

――1950年代、キューバ。大統領バティスタ(光月るう)の独裁政権に、貧困にあえぐ国民の怒りが渦巻いていた。アルゼンチンの医師エルネスト・ゲバラ(轟)は、飢えに苦しむ人々を救いたいと南米大陸を放浪していたが、ある日、メキシコの地でマラリアにかかった青年ミゲル(蓮つかさ)を助けた縁から、弁護士フィデル・カストロ(風間柚乃)と出会う。フィデルはキューバでの反政府軍を率いたクーデターに失敗し、亡命したのだという。フィデルの思いに自らの問いを見つけたエルネストは、自信を無くしている彼らを鼓舞し、再び立ち上がろうと訴えた。

 貧しい人々のためになすべきことを探っていたエルネストは、底抜けに明るく生命力にあふれ、曲がったことが許せない性格です。キューバの惨状を聞くと、迷うことなく革命軍に参加を表明し、みんなを盛り上げる行動力には、すでにカリスマ性があったのかもしれません。しかし上品でさわやかな青年医師が、野性のかたまりのようなゲリラ軍リーダーへと変身するのは、まだこの時点では想像もできないことでした。

学年差を感じさせない風間

 キューバといえば、まずカストロ議長の名を思い出す方が多いかもしれません。ゲバラと共にキューバ革命を成し遂げ、長らく国を治めてきた姿もすぐに思い浮かべることができるでしょう。ゲバラとは年も近く、対等で重い役柄です。当初、月城かなとさんの予定でしたが、けがによる休演のため、100期生の風間さんがつとめることとなりました。

 風間さんは大劇場公演『エリザベート』『無限無双』でも急きょ代役を演じ、その度胸と実力の高さで喝采を浴びましたが、轟さんと向かい合っても、29学年差ある違和感を全くと言っていいほど感じさせません。男役としてのルックスや声の出し方もほぼ仕上がっていて、まだ新人公演も卒業していない学年とは思えない成長に驚くばかり。のびやかな歌声はまだ伸びしろを感じさせ、こちらも“風間柚乃おそるべし”でした。

 当初は警戒していた仲間たちが、徐々にエルネストを信頼していく中、ミゲルだけは反発心を隠そうともしませんでした。演じる蓮さんは、荒くれ者の反政府軍の中でも少し毛色を変え、繊細で屈折した空気感を巧みに演じています。自らの過去に由来するゆがんだ感情が、エルネストの勇気と信念に触れるにつれ、変化していくところが見どころです。

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筆者

さかせがわ猫丸

さかせがわ猫丸(さかせがわ・ねこまる) フリーライター

大阪府出身、兵庫県在住。全国紙の広告局に勤めた後、出産を機に退社。フリーランスとなり、ラジオ番組台本や、芸能・教育関係の新聞広告記事を担当。2009年4月からアサヒ・コム(朝日新聞デジタル)に「猫丸」名で宝塚歌劇の記事を執筆。ペンネームは、猫をこよなく愛することから。

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