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前座から二ツ目へ。恍惚と不安に揺れる落語家たち

トーキョー落語かいわい【3】不自由から自由の身へ。ネタを仕込んで精進あるのみ

鶴田智 朝日新聞社財務本部グループ財務部主査

当事者しか分からない心情の吐露

 ここで、前座、二ツ目についてざっと説明しましょう。

 東京の落語家は、前座、二ツ目、そして真打ちという三階級に分かれます。前座は、いわば師匠の身の回りの世話係。寄席や演芸場の楽屋でお茶を出したり、師匠方の着替えを手伝ったり、様々な雑用があります。次々と登場する落語家や漫才師、手品師らに合わせて、高座の進行役も担います。

 二ツ目になると、こうした雑用から解放されます。羽織を着られるようになり、名前が変わる場合もあります。なんといっても大きいのは自由な時間が持てること。自分の時間がほとんどない前座時代とは雲泥の差です。

 ただ、自由には代償も伴います。生計を得る道を自分で探らなくてはなりません。前座のうちは、師匠の用をすませたり寄席で雑用をしたりすることで、収入がある。独り立ちすると、それがなくなるわけです。

 今はもう真打ちになっているある落語家は、二ツ目昇進の直後を振り返り、こうブログに書いています。

 自由となって、「嬉(うれ)しくてたまりませんでした」。でも、「そのあとすぐにどん底」が訪れた。「仕事もこれからは自分で探さなくてはなりません」「先のスケジュール、手帳が真っ白」「愕然(がくぜん)としました……どうしよう」

 当事者以外わからない、心情の吐露です。

ベテランとは異なる初々しい味も

 いまやツイッターやブログなどで、多くの落語家が毎日、出演情報や自らの落語会の日程などを発信しています。しかし前座のうちは、このようにSNSで自身の情報を発信するのは「禁止」だそうです。二ツ目の先輩落語家によると「まだ商品ではない段階」だからとか。こうした縛りも二ツ目になると解けます。

 というより、独り立ちして自活するために、情報発信や受け付けが重要になるといったところでしょうか。

 好好に改めて昇進の気持ちを聞くと、「これからちゃんとやっていかないといけないです」と、切迫感がひしひしと伝わってきました。「今までだったら許してもらえたことでも、これからはそうはいかない」。ネタをどんどん覚え、自分でも落語会をどんどんやっていかなくてはと、神妙に話していました。

 ただ、自分の足で歩み始めたばかりの初々しい噺家の一席には、ベテランとまた違った味があります。元気をもらえるというファンも少なくない。一度、足を運んでみてはいかがですか。

 「お江戸両国亭」での円楽一門会の興行は9月も1~15日にあります。開演は午後6時。前売り1200円、当日1500円。詳しくは「ここ」から。

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筆者

鶴田智

鶴田智(つるた・さとし) 朝日新聞社財務本部グループ財務部主査

1984年朝日新聞社入社。地域面編集センター次長、CSR推進部企画委員、「声」欄デスク、校閲センター記者を務める。古典芸能にひかれ、歌舞伎はよく観劇、落語は面白そうだと思えばできるだけ見に行く。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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