丸山あかね(まるやま・あかね) ライター
1963年、東京生まれ。玉川学園女子短期大学卒業。離婚を機にフリーライターとなる。男性誌、女性誌を問わず、人物インタビュー、ルポ、映画評、書評、エッセイ、本の構成など幅広い分野で執筆している。著書に『江原啓之への質問状』(徳間書店・共著)、『耳と文章力』(講談社)など
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
物語を通して何かを感じて心を動かしてもらう。それがエンターテインメントの役割
でも、いよいよ物語を作るという段階になって僕が天気に対して抱いていたのは、環境問題をめぐるシリアスなものでした。
たとえば日本には四季があって、人々は穏やかに移り変わる季節の中で、情緒を育みながら暮らしてきました。僕がこれまでの作品で描いてきた自然現象も、長閑(のどか)なことが前提だった気がします。
ところが気づけば、日本から四季は失われつつあり、ゲリラ豪雨などの気候変動に脅威を抱くようになっている。こうしたことを顕著に感じるようになった時期と、今作について具体的に考え始めた時期が重なっていたんです。
気候変動は地球温暖化の影響であると科学的に言われているし、人間が便利さを追求するあまりに自然体系を壊してしまったのだと多くの人が自覚しているのに、僕らは今の暮らしを手放すことができずにいます。このジレンマを、エンターテインメントの枠組みの中で扱いたいと考えたことが、「天気」をテーマに据えた一番大きな理由でした。
どんな作品もある一つの価値観を提示している以上、その価値観に賛同してくれる人もいれば、そうでない人もいるのは当然のことです。とはいえ、想像を超える大勢の人に観ていただいたことによって、自分では考えもしなかったような批判をたくさん受けたことは事実です。
わかりやすいところでは、「『君の名は。』という映画は災害をなかったことにしている」といったもの、「代償もなしに人を生き返らせた映画だ」といったものがありました。僕としては「未来は変えられる」という希望に満ちた作品、あるいは「大切な人に生きていて欲しかった」という願いそのものを描きたいと思って手掛けた作品だっただけに、そういった感想に驚きました。
でも、それは同時に、大きなボリュームの観客に出会うとこういうことが起きるのだという発見でもあり、経験できてよかったと思っています。この経験を経て、僕は前作で怒らせた人をもっと怒らせてしまうような、言い方を変えれば、誰かの価値観と価値観がぶつかるような「正解のない」作品にしようと方向性を定めました。
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