2019年08月27日
今回から始まるこの連載では、日本の男性アイドルの歴史を改めてたどり直してみたい。
それはひとつには、これまで女性アイドルの歴史に比べ、男性アイドルの歴史について書かれたものが少なかったように思えるからである。この連載を通じて、そうした偏りが少しでもなくなればということがまずある。
そしてもうひとつには、最近のジャニーズに対する注目度の高まりがある。
これまでもジャニーズという存在はなにかにつけて話題の的ではあった。しかし、ジャニーズ事務所創設者であるジャニー喜多川の死去によって、これまでとは違う注目のされかたをしている。考えてみれば、テレビなどで語られる「ジャニーさん」エピソードを通じて慣れ親しまれていたにしても、終始裏方として人生を全うしたひとりの人物の死がこれほど注目されたことは日本の芸能史上いままでなかったのではなかろうか。
また他方では、ジャニーズ事務所が事務所から独立したSMAPの元メンバー3人をテレビに出演させないよう圧力をかけていた疑いがあるとして公正取引委員会がジャニーズ事務所に注意していたことが報じられ、波紋を広げている。
こうしたなか、ジャニーズに対してより客観的な見方をするためにも、男性アイドルのトータルな歴史を知ることは有益だろう。実際、いまの状況だけを見ればあたかも「男性アイドル=ジャニーズ」のように思いがちだが、最初からそうだったわけではない。ではいつから、どうしてそのようになったのか?
初回となる今回は、まず1960年代の状況から話を始めたい。そのころ、現在にも通じる男性アイドルにおける「不良」と「王子様」という二大路線がかたちを取り始めたと考えられるからである。前者の代表がGS(グループサウンズ)で後者の代表がジャニーズ。この後次回以降も含めて見ていくように、実は両者には(特にジャニーズにとっては)浅からぬ因縁、好敵手同士としての関係があった。
日本に男性アイドルの存在が意識され始めたのはいつごろだろうか? ザ・ビートルズ(以下、ビートルズと表記する。他のグループ名についても同様)の来日は、ひとつの節目だろう。
その前年秋、彼らの2作目の主演映画が日本で封切られた。タイトルは、『ヘルプ! 4人はアイドル』。ただし原題は「HELP!」のみで、「4人はアイドル」は日本公開に当たって付け足されたものである。
つまり、「ビートルズの4人はアイドルである」という認識が、そのとき日本人、少なくとも映画関係者のなかに存在したことになる。とはいえ、ここで言われる「アイドル」という表現がいまと同じ意味合いで使われているのかどうかは、吟味する必要がある。
そこで思い出すのは、
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