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【公演評】花組『A Fairy Tale』

耽美と幻想の世界に彩られたサヨナラ公演で、明日海りおが人々の記憶に深く刻まれる

さかせがわ猫丸 フリーライター


拡大『A Fairy Tale―青い薔薇の精―』公演から、エリュ役の明日海りお=岸隆子 撮影

 花組公演Musical『A Fairy Tale―青い薔薇の精―』、レヴューロマン『シャルム!』が、8月23日、宝塚大劇場で初日を迎えました。空前の人気で宝塚の一時代を築いた花組トップスター明日海りおさんが、この公演で退団となります。

 2012年に月組で準トップスターという異例の肩書を得て、2013年に花組へ組替え。当時の花組トップ蘭寿とむさんを約1年間支えた後、2014年5月にトップスターに就任。『エリザベート』で大劇場トップお披露目を飾りました。

 得意の歌唱力を活かして、ワイルドな男からプレイボーイまで幅広く演じ、エキサイティングなショーで花組生を引っ張りながら、爆発的人気を誇るカリスマトップへと成長した明日海さん。ラストステージはその美貌が最高に映える“青い薔薇の精”となって、宝塚歌劇ならではの耽美と幻想の世界で、人々の記憶に“明日海りお”を深く刻みこみました。(以下、ネタバレがあります)

ロマンチックを体現する明日海

拡大『A Fairy Tale―青い薔薇の精―』公演から、エリュ役の明日海りお=岸隆子 撮影

 ひと口に宝塚男役と言っても、リアル男性タイプから中性的な妖艶タイプまで、その個性は様々。中でも明日海さんはそのキュートなルックスから、フェアリー系と言われるタイプの象徴的存在でした。そんなイメージを打ち砕くかのように、これまで光源氏(『新源氏物語』)やヴァルモン(『仮面のロマネスク』)、大海人皇子(『あかねさす紫の花』)など数々の男らしい役柄に挑んできましたが、最後の最後に妖精役がきたのもまた、ステキな運命かもしれませんね。

――19世紀半ばのイギリス。植物学者のハーヴィー(柚香光)は、ある日、荒れ果てた庭を薔薇園に再生してほしいとの依頼を受ける。くしくもそこは庭師だった叔父ニック(水美舞斗)が生前、丹精を込めて世話していたウィングフィールドの屋敷だった。さっそくハーヴィーはその地へ向かうが、途中で深い霧に包まれ仲間とはぐれてしまう。やがて青い薔薇が咲く庭へとたどり着くと、そこには美しい薔薇の精エリュ(明日海)がいた。

 登場人物は、精霊たちと人間たちの2つのグループに分かれます。精霊たちは、威厳たっぷりな高翔みず希さん演じる樫の木の精ディニタスを筆頭に、この公演で退団となる白姫あかりさんや、飛龍つかささん、音くり寿さんらが白い衣装で軽やかに踊り、幻想的な世界をかもし出します。

 その中でもひときわ美しい薔薇の精は、もちろん明日海さんです。全身ブルーに彩られたゆめゆめしいルックスはフェアリー系そのもので、ロマンチックという言葉を体現した姿は、これぞ宝塚歌劇。日々追われる家事や仕事のストレスも、忘れさせてくれる夢の時間をありがとうと、思わず感謝してしまう瞬間です。美しいものを見るだけでこんなにも幸せな気分になれることを、明日海さんはいつも教えてくれました。

 現代の技術では咲かないはずの青い薔薇と、存在するはずがない妖精に囲まれ困惑するハーヴィーに、エリュは、霧の中で再び会おうと告げます。

◆公演情報◆
三井住友VISAカード シアター
Musical『A Fairy Tale -青い薔薇の精-』
レヴューロマン『シャルム!』
2019年8月23日(金)~9月30日(月) 宝塚大劇場
2019年10月18日(金)~11月24日(日) 東京宝塚劇場
公式ホームページ

[スタッフ]
『A Fairy Tale -青い薔薇の精-』
作・演出/植田 景子
『シャルム!』
作・演出/稲葉 太地

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筆者

さかせがわ猫丸

さかせがわ猫丸(さかせがわ・ねこまる) フリーライター

大阪府出身、兵庫県在住。全国紙の広告局に勤めた後、出産を機に退社。フリーランスとなり、ラジオ番組台本や、芸能・教育関係の新聞広告記事を担当。2009年4月からアサヒ・コム(朝日新聞デジタル)に「猫丸」名で宝塚歌劇の記事を執筆。ペンネームは、猫をこよなく愛することから。

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